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しおりを挟む平岡さんの河田ファン歴も長く、告白しないのかと聞いたところ、平岡さんにとったら河田くんは芸能人のような存在で手が届かない人であることは自覚しているから告白をしないということだった。いわゆる推しという扱いだ。
僕もそれを見習い河田くんを好きな人から推し化への移行を測っている。
「千秋!千秋!きて!」
教室の扉のところで、平岡さんが嬉しそうな顔をしながら、僕を手招きして呼ぶ。
教室内では僕の名前を知らない人たちが、誰のことか探し出す。そんな視線に少し怯えながら、早足で平岡さんの元へと向かった。
「どうしたの?平岡さん」
「ねえ、その平岡さんっていい加減にキモいからやめて舞でいいから
前から言ってるじゃん」
「え、でも…」
「キモいから」
僕は生憎、念押しで女子にキモいと言われて、耐えられるようなメンタルの持ち主ではない。
「じゃ、じゃあ舞さん…」
「舞さんかあ…それも違和感あるけど、平岡さんよりはマシか」
「で、どうしたの?」
「こっちきて!」
平岡さんは僕の腕を引いて廊下に連れ出すと、1番端の教室の隅までいく。
「ねえ、これみて」
平岡さんは自分のスマホの画面を僕に向かって見せる。
「え!なにこれ!!」
その画面をみて、僕は思わず両手で口を塞いでしまう。叫びだしそうになる声を抑えるためだ。
画面には河田くんがバスケットゴールに向かってボールを投げている瞬間の横顔が映っていた。
河田くんの額から流れている汗まで神聖なものに感じる。正面から見る顔もかなりイケメンだけど、横顔のバランスも完璧だ。何もかもが綺麗だ。ゴールに向けられている真剣な表情がまた良い。
「惚れ直したでしょ?」
平岡さんが僕に向かって、自慢げに笑顔を浮かべる。
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