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しおりを挟む誰もそんな菫に話しかける人物はいない。
菫を遠巻きから眺めては、話したこともない人と勝手に交際したことになり、勝手に菫が浮気をしたことになり、勝手にクソビッチになっている。
いくら違うと言っても信じてくれる者なんていないし、否定するのも疲れる。
孤独だとは感じるが、家に帰れば蒴に会えるという気持ちだけで心は弾んだ。
蒴という存在があるだけでどれほど自分が救われてきたかわからない。
蒴だけが自分をわかってくれて、優しく受け止めてくれる。蒴に誉めてもらえると思えば嫌いな勉強も頑張れるし。蒴が応援してくれるというなら苦手な運動だってできる。
菫のモチベーションは蒴が主体となっているのだ。
それだけ大好きな蒴には学校で嫌なことがあった時には存分に甘えるというのが週末のルーティンとなっていた。
金曜日の夜は朔の家で2人で揃って夕飯を食べるということが恒例となっている。
蒴が仕事で多忙なため家に帰る時間もまばらであり、交友関係が広い蒴は土日も予定が埋まっている。隣に住んでいるのに2人で過ごせないことがほとんどだ。
そこで次の日を気にせずゆっくり過ごせるのが金曜日の夜。
隣同士だからいつでも会えると蒴が言ったが、菫はどうしても自分と蒴だけの時間がほしいといつものわがままを言ってそれを何とか許してもらった。
家では菫のリクエストを聞いて蒴が手料理を振舞ってくれる。菫が作っても良いのだが、朔はそれを拒んだ。
蒴は料理好きであり手料理は飲食店に劣らないほどの腕前のため、むしろありがたいことだと感じ手料理を拒否された理由を特に考えることもなかった。
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