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しおりを挟む「そういえば、蒴くんは元気にしてる?」
「え?蒴ちゃん?」
今悩みの中心となっている人物の名前を出されてロディーの腹を撫でていた手の動きが止まった。
柔らかいソファに寝転がってお腹は満たされて、ロディが膝の上にいて心落ち着く幸せな空間に入れたのに母の言葉によって一気に現実に引き戻される。
「蒴くんも最近お仕事忙しいみたいだし、迷惑ばっかりかけてないでしょうね?」
「……かけてないよ」
半分嘘で半分本当。
ちょっと前までは迷惑かけてたけど、最近は会ってもいないから迷惑かけるかけないのラインにも立てていない。
「蒴くんは27歳だし、そろそろ結婚とかも考えるような年頃だろうから、あんまり迷惑ばかりかけないようにね」
「結婚??」
「そうよ、蒴くんはあんなにカッコよくて、社会的な地位もある子なんだから放っておく女の人なんてそうそういないでしょ?」
「……蒴ちゃんは私と結婚するんだから心配する必要ないよ」
強がるようにいってソファの上で寝返りを打ち、背もたれへと顔を埋めた。
「何夢みたいなこと言って
あんたみたいなだらしない子引き取ってくれる人いるか心配だわ」
「だから、蒴ちゃんが引き取ってくれるからいいの!」
「はいはい、わかった
そのためにちゃんとご飯作れるようになってよね
はい、これ」
これ以上言っても無駄だと察した母親はキッチンから大きな紙袋2つ持ち出した。
「この中に作り置きが入ってるから適当に温めて食べて」
菫はソファから立ち上がり、紙袋の中を覗き込むと何個ものタッパー袋の中に積み上げてられていて、どのタッパーも蓋が開いてしまうのでないかという勢いで料理が詰められている。
「ママ、私こんなに食べれないよ?」
「どうせご飯とか作らないんだろうからそれでしばらく繋ぎな。食べれなかったら冷凍して、あとは蒴くんにでもお裾分けして
どうせいつもご飯とかご馳走になってるんでしょ?」
母なりの気遣いだろうが、菫の細い腕ではこれを両手に抱えて持ち帰るのはかなりの労力がいる。
どうしようかと思いその場で静止して考えていると母が横から声をかけた。
「それ持ち帰るの大変だろうから、ママが家の前まで車で送ってあげる」
「え?本当に??
ありがとう!助かる!」
「ほんと手のかかる娘だわ」
そう言いながらも眉を八の字に曲げて、口元に笑みを浮かべる母の姿をみて、菫も笑顔を浮かべる。
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