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しおりを挟むエレベーターの扉が開き乗り込もうとすると、蒴もその中に乗り込んだ。
貸してといって菫が両手に持っていた荷物を奪い取り、中をチラリと覗き込んだ。
「朋子さんから?」
「…うん」
無視でもしてやろうかと思ったけど、感情だけでなく口まで素直なようで返事をしてしまった。
けど、せめてもの抵抗で扉を向いたままで蒴を見ることはない。
隣に住んでいるのだから、当たり前だけど同じ階に降りることが妙に気まずく感じた。
「荷物ありがとう
おやすみ」
家の扉を開けて、蒴から荷物を受け取って扉を閉めようとすると蒴が扉の間に足を挟み込み、閉めることを許さなかった。
挟んだ足元をみると、几帳面な蒴らしい汚れひとつない綺麗な革靴。靴のことない興味がない菫でさえもそれなりに高そうだということがわかって扉を閉める力を弱めた。
それよりも、昔から良い子というレッテルを貼られてきた蒴がそんな大胆な行動をしたことに呆然としてしまう。
「まだ話終わってないんだけど」
「終わってるよ!
荷物持ってくれてありがとう!これだけで終わりでしょ」
「それは菫の立場での話でしょ?俺の話は終わってない」
チラリとだけ蒴の表情を見るとその顔は真剣なのに、どこか怒っているようにも見えてそのあと保護者としての立場から説教でもされるのだろうということが容易に想像できた。
「話すことなんてないじゃん」
「だから俺はある」
蒴の真剣で訴えかけるような眼差しに抵抗ができない。
蒴の部屋よりものが散らかっている自分の部屋には呼びたくなくて、母からもらった食材を冷蔵庫に詰めると蒴の部屋へと向かった。
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