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第22話 ナメクジの巣窟
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古代霊廟と呼ばれる構造物は、石柱のならぶ石畳と高く聳える長方形の霊廟と呼ばれる建物がある。霊廟に入るには手前にある石畳を突っ切って進む必要があった。
「霊廟に入るには石柱を避けながら進むから注意して」
「荷車ここに止めていて大丈夫かしら」
「魔物除け持っていれば設置するといいよ。なくても問題ないと思う」
私たちは荷車を止めて石畳に向かう。
次に組合会館に行くときに魔物除けを買っておこう。
石柱を避けるのは外敵駆除機能を働かせないためだとフレイアが説明していた。
用心してソフィーをしっかり握っている。
うっかり発動させてでもしまったら大変なことになりそうだから。
ちょっと罠を見てみたい衝動に駆られるが、ひたすら我慢した。
「姫様、魔物が大きな建物の中にいるよ」
「いるのね」
「宝箱を守っているのか、なぜいるのかわからない魔物だね」
「宝箱って場所は固定なの」
「ちがうよ。ランダムで開けると一定時間で消滅して、別な場所にいきなり出現するね」
「宝物の中身を取らなければ箱と一緒に消滅するのかな?」
「うん、必要なものを取り出してゴミは放置が暗黙のルール」
ちょっとだけ前世のゲーム設定を思い出し、私は宝箱を開けてみたくなった。
霊廟の扉前に到着して、フレイアが扉を開けるギミックを解除している最中である。
石柱をトラブルなく回避できたのはソフィーが寝ていたからだ。
今回は運が良かっただけと理解している。
扉が開くと大きなナメクジに似たねばねば魔物が殺到してきて、私めがけて詰め寄ろうとする。いつのまにか、フレイアは後ろに下がって待機していた。
私たちが駆除しなければ。
「あなた達、やっておしまいなさい!」
私はフレイアの手前、ちょっと演劇チックに檄を飛ばした。
胸を張って魔物を指さし、凛とした佇まいは貴族令嬢の鏡だ。
自称だけど。
「はいっ! 行くね姫様」
エリシャとスキリアがお揃いの戦隊ポーズをとり魔法を唱えるようだ。焼くのだろうか?ナメクジステーキはいやだよ。
あ、縮むからいいか。
「開け! 落とし穴。ナメクジは土葬なの!」
シュート!という音が聞こえ、ナメクジは全部床下に消えた。いつものことながら仕事が早いよ。
そういえばだれよ、魔法発動にアメコミみたいな効果音つけたの。
着実に魔法の腕を上げる双子には感心する。
それに対してソフィーはまだ寝ている。寝る子は育つ、を体現しているのかしら。
魔物を倒した私たちは霊廟の中に立ち入った。私たちが侵入すると壁に設置された燭台に明かりがともる。明かりが揺れるから、何者かに見られているように感じてしまいとても落ち着かない。
「宝箱探すからついて来て。あと、戦闘はお願いするね」
「わかったわ。まかせなさい!」
私が戦うわけじゃないのに偉そうに返事する私。
ちょっと厚かましい気がする。
「あった! 開けると魔物が寄ってくるから対処して」
「はい」
フレイアが解錠すると、宝箱はサイズに見合わない重く響く音をたてながら蓋を開けた。
周囲を見るとナメクジが寄ってくる。
「何で毎回ナメクジなの、この場所ならアンデッドとかじゃないの?」
私の疑問に誰も答えてくれなかった。
「スキリア宝箱あるから焼くね」
スキリアが頷き、阿吽の呼吸で魔法を唱える。
辺りは一面、地獄から湧き上がった劫火のように炎が乱舞する。
「ちょっと熱いわよ! エリシャ」
「ごめんなさい。つい楽しくて」
なんだか危ない方向に行きそうで矯正が必要ね。
しかし、ほめて伸ばす方針がいいのよね?
まあ様子見ね。
ナメクジは縮んで黒い塊になって消え去った。
「そういえばナメクジは喋らないね」
「姫様! ナメクジに口ないよ」
「いわれてみれば……え、口なかった?」
マオウノテキ! とかうるさくないのでまあいいか。
「ところでカーラ、お宝はゴミ指輪とさびた剣。いらないよね?」
「指輪だけ見せて」
フレイアから指輪を受け取ってみたが、確かにゴミと呼んでいいものだった。
サイズは親指よりも大きいし、何より蝙蝠や髑髏の装飾が施されていた。
うげ!
私はそれを宝箱めがけて投げ入れた。
「消えてしまえ!」
フレイアが大笑いしていた。だって、あれ気持ち悪かったから。
しかたないでしょ。
それからも宝箱漁りとナメクジ退治を継続している。
お宝はまともなものが出なかった。もう宝箱というよりゴミ箱と命名したい。
もはや、キャッチ&リリースを繰り返す脳死作業となっていた。
一番奥まで進むと、なんだか豪華な扉が見えてきた。
いかにもボス部屋っていう雰囲気でわかりやすい。なんか出そうな感じが漂ってくる。
「これってボス部屋?」
「ちがうよ、正式名は知らないけど通称供物の間って呼ばれてる。たまに上級宝箱が出るって噂だけどね」
「ゴミ箱が上級でもね……期待薄かな」
「まあ、見るだけでもいいのでは?」
「そうね、入りましょう」
エリシャが私の袖を引っ張る。
「この中にいる魔物、強いよ?」
「え、倒せないくらいなの」
「うーん。ちょっと大変かな。姫様とそのお姉ちゃん守って戦うとね」
どうしましょう。私が足手まといって言われただけのようなものだし。
迷うわね。
フレイアもいるしね。
「私は自衛できるからカーラに任せるよ」
「そうね、私だけならいけるかも」
「うん。じゃあ鍵開けるね。罠があるから離れてて」
「おねがい」
フレイアは難なく鍵を開けた。
扉の奥には王冠のような突起がある特大ナメクジがいた。色は赤くてまだら模様が入っている。
これ、生理的に受け付けない。
「霊廟に入るには石柱を避けながら進むから注意して」
「荷車ここに止めていて大丈夫かしら」
「魔物除け持っていれば設置するといいよ。なくても問題ないと思う」
私たちは荷車を止めて石畳に向かう。
次に組合会館に行くときに魔物除けを買っておこう。
石柱を避けるのは外敵駆除機能を働かせないためだとフレイアが説明していた。
用心してソフィーをしっかり握っている。
うっかり発動させてでもしまったら大変なことになりそうだから。
ちょっと罠を見てみたい衝動に駆られるが、ひたすら我慢した。
「姫様、魔物が大きな建物の中にいるよ」
「いるのね」
「宝箱を守っているのか、なぜいるのかわからない魔物だね」
「宝箱って場所は固定なの」
「ちがうよ。ランダムで開けると一定時間で消滅して、別な場所にいきなり出現するね」
「宝物の中身を取らなければ箱と一緒に消滅するのかな?」
「うん、必要なものを取り出してゴミは放置が暗黙のルール」
ちょっとだけ前世のゲーム設定を思い出し、私は宝箱を開けてみたくなった。
霊廟の扉前に到着して、フレイアが扉を開けるギミックを解除している最中である。
石柱をトラブルなく回避できたのはソフィーが寝ていたからだ。
今回は運が良かっただけと理解している。
扉が開くと大きなナメクジに似たねばねば魔物が殺到してきて、私めがけて詰め寄ろうとする。いつのまにか、フレイアは後ろに下がって待機していた。
私たちが駆除しなければ。
「あなた達、やっておしまいなさい!」
私はフレイアの手前、ちょっと演劇チックに檄を飛ばした。
胸を張って魔物を指さし、凛とした佇まいは貴族令嬢の鏡だ。
自称だけど。
「はいっ! 行くね姫様」
エリシャとスキリアがお揃いの戦隊ポーズをとり魔法を唱えるようだ。焼くのだろうか?ナメクジステーキはいやだよ。
あ、縮むからいいか。
「開け! 落とし穴。ナメクジは土葬なの!」
シュート!という音が聞こえ、ナメクジは全部床下に消えた。いつものことながら仕事が早いよ。
そういえばだれよ、魔法発動にアメコミみたいな効果音つけたの。
着実に魔法の腕を上げる双子には感心する。
それに対してソフィーはまだ寝ている。寝る子は育つ、を体現しているのかしら。
魔物を倒した私たちは霊廟の中に立ち入った。私たちが侵入すると壁に設置された燭台に明かりがともる。明かりが揺れるから、何者かに見られているように感じてしまいとても落ち着かない。
「宝箱探すからついて来て。あと、戦闘はお願いするね」
「わかったわ。まかせなさい!」
私が戦うわけじゃないのに偉そうに返事する私。
ちょっと厚かましい気がする。
「あった! 開けると魔物が寄ってくるから対処して」
「はい」
フレイアが解錠すると、宝箱はサイズに見合わない重く響く音をたてながら蓋を開けた。
周囲を見るとナメクジが寄ってくる。
「何で毎回ナメクジなの、この場所ならアンデッドとかじゃないの?」
私の疑問に誰も答えてくれなかった。
「スキリア宝箱あるから焼くね」
スキリアが頷き、阿吽の呼吸で魔法を唱える。
辺りは一面、地獄から湧き上がった劫火のように炎が乱舞する。
「ちょっと熱いわよ! エリシャ」
「ごめんなさい。つい楽しくて」
なんだか危ない方向に行きそうで矯正が必要ね。
しかし、ほめて伸ばす方針がいいのよね?
まあ様子見ね。
ナメクジは縮んで黒い塊になって消え去った。
「そういえばナメクジは喋らないね」
「姫様! ナメクジに口ないよ」
「いわれてみれば……え、口なかった?」
マオウノテキ! とかうるさくないのでまあいいか。
「ところでカーラ、お宝はゴミ指輪とさびた剣。いらないよね?」
「指輪だけ見せて」
フレイアから指輪を受け取ってみたが、確かにゴミと呼んでいいものだった。
サイズは親指よりも大きいし、何より蝙蝠や髑髏の装飾が施されていた。
うげ!
私はそれを宝箱めがけて投げ入れた。
「消えてしまえ!」
フレイアが大笑いしていた。だって、あれ気持ち悪かったから。
しかたないでしょ。
それからも宝箱漁りとナメクジ退治を継続している。
お宝はまともなものが出なかった。もう宝箱というよりゴミ箱と命名したい。
もはや、キャッチ&リリースを繰り返す脳死作業となっていた。
一番奥まで進むと、なんだか豪華な扉が見えてきた。
いかにもボス部屋っていう雰囲気でわかりやすい。なんか出そうな感じが漂ってくる。
「これってボス部屋?」
「ちがうよ、正式名は知らないけど通称供物の間って呼ばれてる。たまに上級宝箱が出るって噂だけどね」
「ゴミ箱が上級でもね……期待薄かな」
「まあ、見るだけでもいいのでは?」
「そうね、入りましょう」
エリシャが私の袖を引っ張る。
「この中にいる魔物、強いよ?」
「え、倒せないくらいなの」
「うーん。ちょっと大変かな。姫様とそのお姉ちゃん守って戦うとね」
どうしましょう。私が足手まといって言われただけのようなものだし。
迷うわね。
フレイアもいるしね。
「私は自衛できるからカーラに任せるよ」
「そうね、私だけならいけるかも」
「うん。じゃあ鍵開けるね。罠があるから離れてて」
「おねがい」
フレイアは難なく鍵を開けた。
扉の奥には王冠のような突起がある特大ナメクジがいた。色は赤くてまだら模様が入っている。
これ、生理的に受け付けない。
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