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第47話 古の王の墓所
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使徒エイテイア・ピスミネストを呆気なく倒してしまい。私は古の王の墓所から出てきた黒い影を警戒して待ち受けていた。どうやら、シルエットから察して女性のように見えるその影は、揺らめき私に向かってきている。
影は使徒エイテイアの前で立ち止まり、手を合わせて祈りのポーズのまま動かない。
エイテイアの亡骸は影に吸い寄せられ裸の少女の姿をとりはじめる。
そこには現れたのは私の記憶にある桃源坂呉羽院アキアカネの姿であった。
「あなたはアキアカネなの?」
「ええ、この姿では初めましてかな。でも、貴方のことはずっと見ていたからね」
女は煽情的な身体を隠そうともせず、男好きするであろう顔をこちらに向けて胸を張り挑発する。
裸って……魔女ジャーのことを破廉恥とはよく言えたものだ。
「それであなたは何がしたいの?」
「この世界で最強になって、女神どもの世界に行き復讐する。それだけ。この世界が滅ぶことになろうと目的のためには手段を選ばない」
「身勝手ね」
アキアカネは私を軽蔑するように指差した。
「貴方に何がわかるというのよ。騙されて転生させられ、貴方の封印と聖剣封印の鍵とされたのよ。本来であれば私が貴方の身体を乗っ取る筈だった」
「そう簡単に渡す訳ないでしょう」
「貴方の魂には記憶が多すぎて入る余地がなかっただけ、貴方の抵抗などたかが知れていたわ。何人分の記憶が入っているのよ。もう人ではない。女神と同等なのでは?」
知らないわよ、そんなこと。
「女神に対してそんなに恨みを持っていて、なぜ女神たちの邪魔をしようと思わないの?」
「最初はそう思ったよ。でも、貴方の身体は女神に匹敵する。だから、体を奪うの。加護は消えるけど、そこは問題ない。私には二重の加護があるから」
加護は肉体ではなく魂に紐づけられた物なのね。ではなぜ?
「どういうこと?」
「あなたも知っていると思うけど、私は転移させられ、転生に誘導されるという複雑怪奇なことをされた。女神の狙いは単純よ、二つの世界を越えることで加護が二重になり、この地の創造神から直接干渉できなくなる。女神どもは世界の理の隙をつくバグ技を使った。私の認識ではね」
「確かにその手順を踏むことは効果的。私の魂の楔としても好都合でしょうし」
「忌々しいけど間違いではない。だから、貴方も女神も許せないんだよ。私は!」
「私たちは協力できると思うけど無理なの?」
アキアカネはつまらなそうに笑う。どうして苛ついているのかわからない。
彼女は私を指差して言い放つ。
「私が何故、古の王の墓所に縛られ封印されていたか。おまえに力で教えてやるから!」
交渉は決裂したようだ。
情報を整理すると。
アキアカネは私が生まれた時にこの世の理に拒まれ魂の定着に失敗、古の王の墓所に繋ぎ止められ私の封印の楔になる。そして、私が覚醒した段階でこの世に零体として弾き出され、聖剣の封印として機能している。
転生者と転移者、女神の限界、強い加護を二重に持っている。まるで産地偽装みたいなものよね。
今の段階で判明していることはこれだけ。
憶測も含まれるけど。
相容れない私たちは戦闘を開始した。
アキアカネは黒い剣を創造して無意味に振り回している。私にはどうみても魔剣ではなく彼女の分身のように見えた。お互いに牽制するだけで距離は詰めないように動き、双方が相手の出方を窺う。
身体能力では私が優位に立てそうな気がする。
特にスピードでは勝っていた。
アキアカネの足の運びは素人然としていて咄嗟に反応できない足さばき。ただ、もし仮にアキアカネの攻撃が魔法主体であれば問題はないはず。
私は遠距離スキルを慎重に発動していく。
「貴方には私が殺せない。いや、殺すこと自体は簡単だろう。聖剣の一振りで死んでしまうから」
私はスキルで武器を集中的に狙っていく。何が言いたいかわからないけど武器は封じたほうがいい。
「なぜ、あなたを殺せないのか見当もつかないわ」
私のスキル攻撃でアキアカネの武器は変形していて、あと数発スキルを入れたら崩壊しそうだ。ここは新しい剣を創られても振出しに戻るだけだ。壊さないように現状維持に努める。確かに簡単に倒せそう。
だからこそ慎重になる。
「カーラ、古の王の墓が何だか知ってるの?」
「知らないわ」
エバートの記憶にも言伝えにも古の王のことは何も言及されていない。そもそも、古の王って何者なのよ。
「古の王自体には意味がない。この大陸が水没しやすいのは何故なのか知ってる?」
「水位上昇は魔王の攻撃方法じゃないの」
アキアカネは悠長に回避している。やる気が全くないのが、逆に警戒心の高まる原因だ。
「私が古の王のミイラに憑依して判明したことだけど、ミイラが水位を操作しているのさ」
「にわかに信じられないのだけれど。私をだまして、攻撃を躊躇させようとでも?」
「魔王に水位の操作なんてできないよ。エイテイアが言うには、古の王は貴方の血統とは異なると英雄じゃないかって」
鵜呑みにできない。確認しようがない話だし。
私はスキルを放ち続けて会話する。
「貴方を殺すことと、古の王のミイラにはいったい何の関係があるというの?」
「私が死ねばミイラも崩壊して、水位は上昇する」
「殺せないにしても、貴方も私を倒せないのでは? 論理的ではないけど」
なぜかアキアカネが笑いだす。
「訝っていたようだけど、時間稼ぎしていた理由を教えてあげる。私の一つ目の加護は精神操作、もう一つはラーニングさ。スキルを学ぶ加護だよ」
しまった、余裕だったのはラーニングしてたからね。
「さて、あなたのスキルの味を自身で味わってみなさい!」
一気に互角の戦いになってしまった。エストフローネはスキルではないから学べないけど、殺せないのがネックだ。仮に殺して本当に水位上昇してからでは遅い。
戦闘不能にするには私のスキルが強すぎる。
「さて、もう一つの奥の手と行こうかね。 雷神剣ランドゥーム・クルセー!」
「雷の刀剣、実体を感じないからレプリカか召喚剣ね」
「レプリカだけど貴方の通常剣よりは強いよ」
スキルや魔法強化しても手持ちの剣では不利なことは事実。
これで劣勢なのは確定だ。
どうしましょう……。
影は使徒エイテイアの前で立ち止まり、手を合わせて祈りのポーズのまま動かない。
エイテイアの亡骸は影に吸い寄せられ裸の少女の姿をとりはじめる。
そこには現れたのは私の記憶にある桃源坂呉羽院アキアカネの姿であった。
「あなたはアキアカネなの?」
「ええ、この姿では初めましてかな。でも、貴方のことはずっと見ていたからね」
女は煽情的な身体を隠そうともせず、男好きするであろう顔をこちらに向けて胸を張り挑発する。
裸って……魔女ジャーのことを破廉恥とはよく言えたものだ。
「それであなたは何がしたいの?」
「この世界で最強になって、女神どもの世界に行き復讐する。それだけ。この世界が滅ぶことになろうと目的のためには手段を選ばない」
「身勝手ね」
アキアカネは私を軽蔑するように指差した。
「貴方に何がわかるというのよ。騙されて転生させられ、貴方の封印と聖剣封印の鍵とされたのよ。本来であれば私が貴方の身体を乗っ取る筈だった」
「そう簡単に渡す訳ないでしょう」
「貴方の魂には記憶が多すぎて入る余地がなかっただけ、貴方の抵抗などたかが知れていたわ。何人分の記憶が入っているのよ。もう人ではない。女神と同等なのでは?」
知らないわよ、そんなこと。
「女神に対してそんなに恨みを持っていて、なぜ女神たちの邪魔をしようと思わないの?」
「最初はそう思ったよ。でも、貴方の身体は女神に匹敵する。だから、体を奪うの。加護は消えるけど、そこは問題ない。私には二重の加護があるから」
加護は肉体ではなく魂に紐づけられた物なのね。ではなぜ?
「どういうこと?」
「あなたも知っていると思うけど、私は転移させられ、転生に誘導されるという複雑怪奇なことをされた。女神の狙いは単純よ、二つの世界を越えることで加護が二重になり、この地の創造神から直接干渉できなくなる。女神どもは世界の理の隙をつくバグ技を使った。私の認識ではね」
「確かにその手順を踏むことは効果的。私の魂の楔としても好都合でしょうし」
「忌々しいけど間違いではない。だから、貴方も女神も許せないんだよ。私は!」
「私たちは協力できると思うけど無理なの?」
アキアカネはつまらなそうに笑う。どうして苛ついているのかわからない。
彼女は私を指差して言い放つ。
「私が何故、古の王の墓所に縛られ封印されていたか。おまえに力で教えてやるから!」
交渉は決裂したようだ。
情報を整理すると。
アキアカネは私が生まれた時にこの世の理に拒まれ魂の定着に失敗、古の王の墓所に繋ぎ止められ私の封印の楔になる。そして、私が覚醒した段階でこの世に零体として弾き出され、聖剣の封印として機能している。
転生者と転移者、女神の限界、強い加護を二重に持っている。まるで産地偽装みたいなものよね。
今の段階で判明していることはこれだけ。
憶測も含まれるけど。
相容れない私たちは戦闘を開始した。
アキアカネは黒い剣を創造して無意味に振り回している。私にはどうみても魔剣ではなく彼女の分身のように見えた。お互いに牽制するだけで距離は詰めないように動き、双方が相手の出方を窺う。
身体能力では私が優位に立てそうな気がする。
特にスピードでは勝っていた。
アキアカネの足の運びは素人然としていて咄嗟に反応できない足さばき。ただ、もし仮にアキアカネの攻撃が魔法主体であれば問題はないはず。
私は遠距離スキルを慎重に発動していく。
「貴方には私が殺せない。いや、殺すこと自体は簡単だろう。聖剣の一振りで死んでしまうから」
私はスキルで武器を集中的に狙っていく。何が言いたいかわからないけど武器は封じたほうがいい。
「なぜ、あなたを殺せないのか見当もつかないわ」
私のスキル攻撃でアキアカネの武器は変形していて、あと数発スキルを入れたら崩壊しそうだ。ここは新しい剣を創られても振出しに戻るだけだ。壊さないように現状維持に努める。確かに簡単に倒せそう。
だからこそ慎重になる。
「カーラ、古の王の墓が何だか知ってるの?」
「知らないわ」
エバートの記憶にも言伝えにも古の王のことは何も言及されていない。そもそも、古の王って何者なのよ。
「古の王自体には意味がない。この大陸が水没しやすいのは何故なのか知ってる?」
「水位上昇は魔王の攻撃方法じゃないの」
アキアカネは悠長に回避している。やる気が全くないのが、逆に警戒心の高まる原因だ。
「私が古の王のミイラに憑依して判明したことだけど、ミイラが水位を操作しているのさ」
「にわかに信じられないのだけれど。私をだまして、攻撃を躊躇させようとでも?」
「魔王に水位の操作なんてできないよ。エイテイアが言うには、古の王は貴方の血統とは異なると英雄じゃないかって」
鵜呑みにできない。確認しようがない話だし。
私はスキルを放ち続けて会話する。
「貴方を殺すことと、古の王のミイラにはいったい何の関係があるというの?」
「私が死ねばミイラも崩壊して、水位は上昇する」
「殺せないにしても、貴方も私を倒せないのでは? 論理的ではないけど」
なぜかアキアカネが笑いだす。
「訝っていたようだけど、時間稼ぎしていた理由を教えてあげる。私の一つ目の加護は精神操作、もう一つはラーニングさ。スキルを学ぶ加護だよ」
しまった、余裕だったのはラーニングしてたからね。
「さて、あなたのスキルの味を自身で味わってみなさい!」
一気に互角の戦いになってしまった。エストフローネはスキルではないから学べないけど、殺せないのがネックだ。仮に殺して本当に水位上昇してからでは遅い。
戦闘不能にするには私のスキルが強すぎる。
「さて、もう一つの奥の手と行こうかね。 雷神剣ランドゥーム・クルセー!」
「雷の刀剣、実体を感じないからレプリカか召喚剣ね」
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