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第3話 別れ
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「動くな、その場にふせろ!!」
寝室の扉を蹴破ぶり、怒声と共に銃を構え部屋へ突入する部下の後に私は続いた。
部屋には血だまりに浸かる男と隅に子供抱えた女がうずくまっているのを確認する。
当たりだな…、一瞬痴話喧嘩の末かと錯覚したが男の上半身は武装している。
死体を見分している部下に視線を送るも、残念だが既に死んでるらしい。話を聞く為うずくまっている女を部下に起こさせると、女の右頬は殴られて直ぐなのか赤く腫れていた。
「こいつはあなたが?」
「と、突然襲ってきて、隙を見てこいつから銃を奪って撃ってやったの…」
床には女が使用したと主張した銃が転がっている。今の所はおかしな点はない。複数人いるはずの獲物が一人しか顔をみせないという以外は。
「他に仲間を見ましたか?叫び声がしてから突入まで、10分もたっていないはずですが。」
「いえ、銃を突き付け家に入ってきたのはこいつだけだったわ」
「そうですか…。」
見失うまでの反撃からして単独ではなかったはず。
潜伏を始めてから分かれるとは考えられないが、仮に複数いたしてその一人を殺した女が生き残る理由もないか。
「お願い、早く私を安全な場所に連れっていって!」
「…わかりました、私は陸軍少尉のロビーというものです。今からあなたを保護します。立つことはできますか?」
女は視線を合わせずうなずき、娘はこちらで運ぶか聞いたら首を振って否定した。部下達には家の捜索を続けろと命令し、立ち上がった女を部屋の外へ促そうとしたとき、ふと何か視界の中に違和感を感じ立ち止まる。
「どうかしました?」
「………いや。」
部屋の入口から二階の制圧も終わったとの報告に上がってくるも、違和感の正体をつかむことに集中していた私は結果それを無視したことになった。それに部下がいぶかしむ目でこちらを見てきた。
女の説明と状況におかしなところはないはず。
口数も少なく視線を合わせようとしないが、襲われそうになった後なら特段おかしいと思える挙動でもない。
だが…何だこの違和感は…。
視線をもう一度女に合わせ、その違和感を探る為女に質問をぶつけようとした瞬間、違和感の正体に気が付くことが出来た。
……そうか…抱えている、子供か…。
私は女に顔を近づけ小声で話しかける。
「この家に他にご家族は?」
「いません、旦那が農園に今働きに出ているので。」
「ご両親とかも?」
「えぇ、もう数年前に他界してます。」
「そうですか…。ではもう一点だけ確認させて頂いても?」
「なんでしょうか…?」
私は朗らかな笑みから一転、能面のような顔で女に言葉を投げかけた。
「あのクローゼットの背板は外れますか?」
「!?」
女の目が一瞬揺れ、私は口角が少し上がった。
違和感の正体は、抱きかかえていた子供の視線だった。
胸に抱いた子供の視線は、私が見た時から一度もクローゼットから外れていない。 見知らぬ大人が大勢部屋に入ってきて、自分の母親を囲んでいるにも関わらず、今こうして話しかけている最中一度もだ。
既に開かれている扉の奥の背板が外れ、人が隠れられる程度の隠し空間でもあるんだろう。私の実家にも軍が家捜しをする時に備えて、財産を隠す為のそういうスペースがいくつかあった。
私は部下にハンドサインで一斉に銃口をそれに向けさせた。
損傷なしで生きたまま引きずり出せるかどうかは微妙な所か…。
「待ってください!」
突如女が割って入ってきたことに驚くも、私はすぐさま手で女の次の言葉を制止させた。獲物に感づかれるものそうだが、私にもこの年齢ぐらいの娘がいたからかもしれない。
「それ以上口を開けば連座で一家丸ごと銃殺になる、わかってやっているのか?」
女ののどが大きく揺れる。それでも震える唇でひねり出すように女は言葉を吐いた。
「あ、あの子はまだ子供なの…それにこいつに襲われそうになった私を助けてくれたんです。」
|||||
薄すぎる板から漏れ聞こえる限り、僕の存在はバレたのだろう。
正直に隠れてやり過ごすのは連中のしつこさを考えると無理だと思っていた。
でも何でかな…、必死の形相で僕を匿まおうとする姿に体がなぜか従っちゃったんだよね、まぁ諦め半分だったてのもあるけど…。
思い返せば物心付いたときからよくわからない連中に、こき使われ続けた人生だった。
まぁ最後に僕なんかでも、ほんの一瞬でも生きて欲しいと思ってくれた人に出会えたのは、良かったのかも知れないね。
神様、くそみたいな人生ありがとね。
僕は自分の上半身より大きい自動小銃の銃口をのど元に突きつけ、別れを告げる相手がいない為、いるかどうかもわからない神に対して最後の別れを告げたのだった。
|||||
「子供…?助けただと…?」
私は女の振り絞った声による説明と予想外の内容に頭がすぐには理解が出来なかった。
しかしそれが致命的な判断の遅れへとつながったのは間違い。
パンッ!!
クローゼットから突如一発の乾いた音が部屋に響いた。
その場にいる誰もが聞きなれた音。
その音に呼応するように、豪雨のように弾丸が、発生源だったクローゼットへと降りかかる。
「待て!やめろ!全員撃つのをやめろ!!」
命令とは言えない怒声と宙を舞う木片。
女の悲鳴と子供の泣き声すら打ち消す轟音。
宙を舞った埃が床につく頃には、せき込む程の煙とにおいが辺りを充満し、クローゼットは中間から綺麗にへし折れ原型をとどめていなかった。家を建てた後に作られたと思われる隠されていた穴もその姿を露呈し、その中から未だ煙が立ち込めている。
部屋の時間は止まったままだ。誰もが他人に次を求めたからだ。
するとその止まってしまった時計の針を動かすかのように、体育座りの恰好をした人だったものが、煙を裂くようにゆっくりと穴から倒れ落ち出てきた。
ようやく探し求めていた獲物が目の前に現れたのもかかわらず、部屋にいた者たちはその光景を前に、ただただ たたずむことしか出来ないでいた。
寝室の扉を蹴破ぶり、怒声と共に銃を構え部屋へ突入する部下の後に私は続いた。
部屋には血だまりに浸かる男と隅に子供抱えた女がうずくまっているのを確認する。
当たりだな…、一瞬痴話喧嘩の末かと錯覚したが男の上半身は武装している。
死体を見分している部下に視線を送るも、残念だが既に死んでるらしい。話を聞く為うずくまっている女を部下に起こさせると、女の右頬は殴られて直ぐなのか赤く腫れていた。
「こいつはあなたが?」
「と、突然襲ってきて、隙を見てこいつから銃を奪って撃ってやったの…」
床には女が使用したと主張した銃が転がっている。今の所はおかしな点はない。複数人いるはずの獲物が一人しか顔をみせないという以外は。
「他に仲間を見ましたか?叫び声がしてから突入まで、10分もたっていないはずですが。」
「いえ、銃を突き付け家に入ってきたのはこいつだけだったわ」
「そうですか…。」
見失うまでの反撃からして単独ではなかったはず。
潜伏を始めてから分かれるとは考えられないが、仮に複数いたしてその一人を殺した女が生き残る理由もないか。
「お願い、早く私を安全な場所に連れっていって!」
「…わかりました、私は陸軍少尉のロビーというものです。今からあなたを保護します。立つことはできますか?」
女は視線を合わせずうなずき、娘はこちらで運ぶか聞いたら首を振って否定した。部下達には家の捜索を続けろと命令し、立ち上がった女を部屋の外へ促そうとしたとき、ふと何か視界の中に違和感を感じ立ち止まる。
「どうかしました?」
「………いや。」
部屋の入口から二階の制圧も終わったとの報告に上がってくるも、違和感の正体をつかむことに集中していた私は結果それを無視したことになった。それに部下がいぶかしむ目でこちらを見てきた。
女の説明と状況におかしなところはないはず。
口数も少なく視線を合わせようとしないが、襲われそうになった後なら特段おかしいと思える挙動でもない。
だが…何だこの違和感は…。
視線をもう一度女に合わせ、その違和感を探る為女に質問をぶつけようとした瞬間、違和感の正体に気が付くことが出来た。
……そうか…抱えている、子供か…。
私は女に顔を近づけ小声で話しかける。
「この家に他にご家族は?」
「いません、旦那が農園に今働きに出ているので。」
「ご両親とかも?」
「えぇ、もう数年前に他界してます。」
「そうですか…。ではもう一点だけ確認させて頂いても?」
「なんでしょうか…?」
私は朗らかな笑みから一転、能面のような顔で女に言葉を投げかけた。
「あのクローゼットの背板は外れますか?」
「!?」
女の目が一瞬揺れ、私は口角が少し上がった。
違和感の正体は、抱きかかえていた子供の視線だった。
胸に抱いた子供の視線は、私が見た時から一度もクローゼットから外れていない。 見知らぬ大人が大勢部屋に入ってきて、自分の母親を囲んでいるにも関わらず、今こうして話しかけている最中一度もだ。
既に開かれている扉の奥の背板が外れ、人が隠れられる程度の隠し空間でもあるんだろう。私の実家にも軍が家捜しをする時に備えて、財産を隠す為のそういうスペースがいくつかあった。
私は部下にハンドサインで一斉に銃口をそれに向けさせた。
損傷なしで生きたまま引きずり出せるかどうかは微妙な所か…。
「待ってください!」
突如女が割って入ってきたことに驚くも、私はすぐさま手で女の次の言葉を制止させた。獲物に感づかれるものそうだが、私にもこの年齢ぐらいの娘がいたからかもしれない。
「それ以上口を開けば連座で一家丸ごと銃殺になる、わかってやっているのか?」
女ののどが大きく揺れる。それでも震える唇でひねり出すように女は言葉を吐いた。
「あ、あの子はまだ子供なの…それにこいつに襲われそうになった私を助けてくれたんです。」
|||||
薄すぎる板から漏れ聞こえる限り、僕の存在はバレたのだろう。
正直に隠れてやり過ごすのは連中のしつこさを考えると無理だと思っていた。
でも何でかな…、必死の形相で僕を匿まおうとする姿に体がなぜか従っちゃったんだよね、まぁ諦め半分だったてのもあるけど…。
思い返せば物心付いたときからよくわからない連中に、こき使われ続けた人生だった。
まぁ最後に僕なんかでも、ほんの一瞬でも生きて欲しいと思ってくれた人に出会えたのは、良かったのかも知れないね。
神様、くそみたいな人生ありがとね。
僕は自分の上半身より大きい自動小銃の銃口をのど元に突きつけ、別れを告げる相手がいない為、いるかどうかもわからない神に対して最後の別れを告げたのだった。
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「子供…?助けただと…?」
私は女の振り絞った声による説明と予想外の内容に頭がすぐには理解が出来なかった。
しかしそれが致命的な判断の遅れへとつながったのは間違い。
パンッ!!
クローゼットから突如一発の乾いた音が部屋に響いた。
その場にいる誰もが聞きなれた音。
その音に呼応するように、豪雨のように弾丸が、発生源だったクローゼットへと降りかかる。
「待て!やめろ!全員撃つのをやめろ!!」
命令とは言えない怒声と宙を舞う木片。
女の悲鳴と子供の泣き声すら打ち消す轟音。
宙を舞った埃が床につく頃には、せき込む程の煙とにおいが辺りを充満し、クローゼットは中間から綺麗にへし折れ原型をとどめていなかった。家を建てた後に作られたと思われる隠されていた穴もその姿を露呈し、その中から未だ煙が立ち込めている。
部屋の時間は止まったままだ。誰もが他人に次を求めたからだ。
するとその止まってしまった時計の針を動かすかのように、体育座りの恰好をした人だったものが、煙を裂くようにゆっくりと穴から倒れ落ち出てきた。
ようやく探し求めていた獲物が目の前に現れたのもかかわらず、部屋にいた者たちはその光景を前に、ただただ たたずむことしか出来ないでいた。
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