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第5話 選択
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「それは見解の相違だね、僕はその選択を悪いとは思ってないんだ。望む人も少なくないからね。何にせよ、他に質問したいことはないかな?あるなら手短にはした方がいい。君は目覚めるのが一番早かったけど、他の人間もそろそろ起きてくるだろうからね。」
他の人間もという言葉に疑問抱く僕に答えを示すように、彼が指を鳴らすと、周囲の濃霧が一瞬にして晴れ、見渡す限り水面に浸かる大量の人間が現れた。
誰一人 人形のようにピクリとも動かない。歳も恰好も肌の色バラバラだ。
そしてそれらの傍らには、僕の目の前いる男とうり二つの男が同じ椅子に座って、それらが起きるのを肩肘ついて眺めていた。
目の前に広がるホラー映画に出てくるような光景に、僕は思い出し、現実をはきっりと理解出来た。
僕は死んだ、あの後自分の手で。
目の前にいるレグルスと名乗る人物は神か悪魔の類で、僕が今こうしているのも彼のおかげ。
そして何より重要なのは彼は真実のみを述べている。なぜならば彼にとって僕は嘘をつくほどでも、変わりがきかない程の存在でもないのだから。
僕は無意識に彼から銃口を下した。
その行動に彼が少し微笑んだように見えたのは気のせいか。
「なぜ手短にしないといけないんですか?」
だから端的に
「神一柱に付き代理人の枠は一つしかないんだ。時間も勿体ないし僕は一番初めに決断した人間から選ぼうと思っているからだよ」
目の前の人物の気分が変わらないように
「あなたの…神の代理人としてそれに参加させようというのに?」
「参加はしてほしいけど、特に何かしてほしいというわけじゃないんだ。選定の儀の結果にも興味がないしね。法紳のフルールが今回全員参加にした上、代理人を立てないやつは神界から追放するって無理矢理ルール化しちゃってね。やらなきゃいけないことが出来たのに、追放されると色々とやりづらくなることが多くて仕方なくさ。」
やれやれと身体で表現するレグルスさん。そして彼は神であることを否定しなかった。
神様って何人もいるもんなの?一人しかいないって聞いてたんだけど…。
彼と僕との温度差は広がる一方だ、まるで彼との間に分厚い見えない壁があるようだ。
いや、実際あるのだろうそれは。神と人間の子供とでは比較すること自体話にならないのだから。
視界の端で水に浸かっていた何人かの人間が起き上がろうと動き出す。
僕には考える時間も質問する時間もないことを伝えてくる。
何をさせられるかわからない、ただ断ればそこには死が待っている。ただ…、一度死を経験し、あの夢見心地のような気分で眠り続ける事が出来るのなら、そんなに悪くない選択肢のような気もしていた。
でも…。
僕は大きく一呼吸おいて、レグルスさんの青く透き通るような瞳に視線を合わす。
「その代理人、僕にやらしてくれませんか?」
「そう?じゃあ彼らは元に戻そうかな」
彼は僕の返答に一考もしなかった。
彫刻のような綺麗な顔で微笑むと再び彼は指を鳴らす。すると集められたであろう無数にいる人間が一瞬にして光の粒子へと変わると、中から体を形成する元となったであろう白骨が現れ崩れ落ち、そのまま水の中へと沈んでいった。
彼らの前にいたレグルスさんもまた光の粒子へと変わり空へと消えていく。
あらためて目の前の人物が超常の存在であることを思い知らされた。
「まぁ気楽にやってもらえばいいよラーズ君!これ以上僕が君に何かを求める事はないから」
その光景にあっけにとられている僕をしり目にレグルスさんがそう言い終えると、僕の身体も所々光の粒子へと変わり始め、空に昇って行こうとしだした。
「ってちょっと待ってください!」
話を切り上げようとしたレグルスさんを僕は大慌てで止めた。
初めて見せた大声にレグルスさんも驚いたのか、ビクッ身体が跳ねこちらを見つめてる。
「あの結局、その選定の儀で僕は何をやればいいんですか?」
「詳細は僕も知らない。」
「えっ!?」
「あ、でも大丈夫大丈夫。今回管理を担当するメル曰く現地に案内人ってのがいて、それに従っていればいいみたいだし、まぁ~長生きでも心がければいいんじゃないかな?」
「えっ、命の危険があるんですか?神の代理人なのに??」
「それは君の行動次第じゃない?」
駄目だ、びっくりするほど会話にならない。
選定の儀も僕のことも、本当にどうでもいいんだこの神は。
「そ、そんなことないって。あ~…、うん…、そうだ!じゃあ君ともっと仲良くなりたい僕はちょっとプライベートな質問でも君にしようかな?」
レグルスさんは変わらず微笑みを浮かべていたが、瞳が深く沈んだ色へと変わったように見えた。
「どうして参加することを選んだの?君にとって人生は酷く辛く酷く理不尽なイメージだったのに…。」
「えっ…」
「いやほらだって、生きてた時は朝には夜が来ないことを願い、夜には朝が来ないことを願っていただろ。参加するってことはもう一度生きることを選択したってことだ。心のどこかで常に人生なんて終わらせたいと願っていたそんな君が、なぜもう一度生きる事を選択したのはなんでかなぁって思って。」
僕はその唐突な投げ掛けに一拍言葉を詰まらせるが、頭の中に僕を決死の覚悟でクローゼットの奥の隠し空間に押し込む女の人の顔が思い浮かぶと、自然と口から感情が言葉としてこぼれでてきた。
「………、ほんの一瞬でも、僕に生きて欲しいと願ってくれた人に、最後出会えたからですかね…。」
返答は考えて出たものでも、相手の印象を良くしようとしたものでもない。
理由は?と聞かれたら、自然とそれしか思い浮かばなかった。
「そっか………。君と僕は似てるかもしれないね。」
レグルスさんからポツリと言葉がこぼれた。その言葉に反応するように顔を見上げると、彼は少し感慨深い表情を浮かべ過去を振り返っているようにも見えた。
「じゃあ、そういことで。」
勘違いだった…この神ただそれっぽいこと言っただけだった…
レグルスさんの反応に先行き不安になるが、有無を言わせず身体は光の粒子へと変わり僕はそのまま意識を奪われたのだった。
光となって天へ昇っていくラーズを眺めながらレグルスは横にたたずんでいた六本角のヤギの髑髏被った泉の管理人にねぎらいの言葉をかけた。
管理人は一礼すると、水中に先ほど出来たばかり無数の小さな砂山をクワを使いならし始めた。
レグルスが水面へと降り立つ。
水面は波紋を浮かべはするが、沈むことなくその体重を支えた。
「さてと……追放はとりあえず無くなったことだったし、まずは何本か枝でも切り落としにでもいこうかな?」
水面の反射によって青空に浮かんでいるように見えるレグルスは、大きくのびをしながら決意の言葉をつぶやいた。
他の人間もという言葉に疑問抱く僕に答えを示すように、彼が指を鳴らすと、周囲の濃霧が一瞬にして晴れ、見渡す限り水面に浸かる大量の人間が現れた。
誰一人 人形のようにピクリとも動かない。歳も恰好も肌の色バラバラだ。
そしてそれらの傍らには、僕の目の前いる男とうり二つの男が同じ椅子に座って、それらが起きるのを肩肘ついて眺めていた。
目の前に広がるホラー映画に出てくるような光景に、僕は思い出し、現実をはきっりと理解出来た。
僕は死んだ、あの後自分の手で。
目の前にいるレグルスと名乗る人物は神か悪魔の類で、僕が今こうしているのも彼のおかげ。
そして何より重要なのは彼は真実のみを述べている。なぜならば彼にとって僕は嘘をつくほどでも、変わりがきかない程の存在でもないのだから。
僕は無意識に彼から銃口を下した。
その行動に彼が少し微笑んだように見えたのは気のせいか。
「なぜ手短にしないといけないんですか?」
だから端的に
「神一柱に付き代理人の枠は一つしかないんだ。時間も勿体ないし僕は一番初めに決断した人間から選ぼうと思っているからだよ」
目の前の人物の気分が変わらないように
「あなたの…神の代理人としてそれに参加させようというのに?」
「参加はしてほしいけど、特に何かしてほしいというわけじゃないんだ。選定の儀の結果にも興味がないしね。法紳のフルールが今回全員参加にした上、代理人を立てないやつは神界から追放するって無理矢理ルール化しちゃってね。やらなきゃいけないことが出来たのに、追放されると色々とやりづらくなることが多くて仕方なくさ。」
やれやれと身体で表現するレグルスさん。そして彼は神であることを否定しなかった。
神様って何人もいるもんなの?一人しかいないって聞いてたんだけど…。
彼と僕との温度差は広がる一方だ、まるで彼との間に分厚い見えない壁があるようだ。
いや、実際あるのだろうそれは。神と人間の子供とでは比較すること自体話にならないのだから。
視界の端で水に浸かっていた何人かの人間が起き上がろうと動き出す。
僕には考える時間も質問する時間もないことを伝えてくる。
何をさせられるかわからない、ただ断ればそこには死が待っている。ただ…、一度死を経験し、あの夢見心地のような気分で眠り続ける事が出来るのなら、そんなに悪くない選択肢のような気もしていた。
でも…。
僕は大きく一呼吸おいて、レグルスさんの青く透き通るような瞳に視線を合わす。
「その代理人、僕にやらしてくれませんか?」
「そう?じゃあ彼らは元に戻そうかな」
彼は僕の返答に一考もしなかった。
彫刻のような綺麗な顔で微笑むと再び彼は指を鳴らす。すると集められたであろう無数にいる人間が一瞬にして光の粒子へと変わると、中から体を形成する元となったであろう白骨が現れ崩れ落ち、そのまま水の中へと沈んでいった。
彼らの前にいたレグルスさんもまた光の粒子へと変わり空へと消えていく。
あらためて目の前の人物が超常の存在であることを思い知らされた。
「まぁ気楽にやってもらえばいいよラーズ君!これ以上僕が君に何かを求める事はないから」
その光景にあっけにとられている僕をしり目にレグルスさんがそう言い終えると、僕の身体も所々光の粒子へと変わり始め、空に昇って行こうとしだした。
「ってちょっと待ってください!」
話を切り上げようとしたレグルスさんを僕は大慌てで止めた。
初めて見せた大声にレグルスさんも驚いたのか、ビクッ身体が跳ねこちらを見つめてる。
「あの結局、その選定の儀で僕は何をやればいいんですか?」
「詳細は僕も知らない。」
「えっ!?」
「あ、でも大丈夫大丈夫。今回管理を担当するメル曰く現地に案内人ってのがいて、それに従っていればいいみたいだし、まぁ~長生きでも心がければいいんじゃないかな?」
「えっ、命の危険があるんですか?神の代理人なのに??」
「それは君の行動次第じゃない?」
駄目だ、びっくりするほど会話にならない。
選定の儀も僕のことも、本当にどうでもいいんだこの神は。
「そ、そんなことないって。あ~…、うん…、そうだ!じゃあ君ともっと仲良くなりたい僕はちょっとプライベートな質問でも君にしようかな?」
レグルスさんは変わらず微笑みを浮かべていたが、瞳が深く沈んだ色へと変わったように見えた。
「どうして参加することを選んだの?君にとって人生は酷く辛く酷く理不尽なイメージだったのに…。」
「えっ…」
「いやほらだって、生きてた時は朝には夜が来ないことを願い、夜には朝が来ないことを願っていただろ。参加するってことはもう一度生きることを選択したってことだ。心のどこかで常に人生なんて終わらせたいと願っていたそんな君が、なぜもう一度生きる事を選択したのはなんでかなぁって思って。」
僕はその唐突な投げ掛けに一拍言葉を詰まらせるが、頭の中に僕を決死の覚悟でクローゼットの奥の隠し空間に押し込む女の人の顔が思い浮かぶと、自然と口から感情が言葉としてこぼれでてきた。
「………、ほんの一瞬でも、僕に生きて欲しいと願ってくれた人に、最後出会えたからですかね…。」
返答は考えて出たものでも、相手の印象を良くしようとしたものでもない。
理由は?と聞かれたら、自然とそれしか思い浮かばなかった。
「そっか………。君と僕は似てるかもしれないね。」
レグルスさんからポツリと言葉がこぼれた。その言葉に反応するように顔を見上げると、彼は少し感慨深い表情を浮かべ過去を振り返っているようにも見えた。
「じゃあ、そういことで。」
勘違いだった…この神ただそれっぽいこと言っただけだった…
レグルスさんの反応に先行き不安になるが、有無を言わせず身体は光の粒子へと変わり僕はそのまま意識を奪われたのだった。
光となって天へ昇っていくラーズを眺めながらレグルスは横にたたずんでいた六本角のヤギの髑髏被った泉の管理人にねぎらいの言葉をかけた。
管理人は一礼すると、水中に先ほど出来たばかり無数の小さな砂山をクワを使いならし始めた。
レグルスが水面へと降り立つ。
水面は波紋を浮かべはするが、沈むことなくその体重を支えた。
「さてと……追放はとりあえず無くなったことだったし、まずは何本か枝でも切り落としにでもいこうかな?」
水面の反射によって青空に浮かんでいるように見えるレグルスは、大きくのびをしながら決意の言葉をつぶやいた。
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