6 / 26
第6話 案内人ベルモントと代理人ラーズ
しおりを挟む
顔に生温い風を感じ目を開くと、そこは雲一つない星空と広大な海が広がっていた。
僕の生まれた国に海はない。しかし独特のにおいでこれが話に聞いていた海だと直ぐ気が付くことができた。初めて見た海はとても雄大で暗く、近づくと吸い込まれてしまいそうに暗く、そして暗かった。ほぼ何も見えなかったので感じることこれ以上ない。
僕は目の前にある縁から下を見下ろした。
どうやらここは360度海に囲まれた直径2㎞はある小島のようだ。僕は島の中心にそびえ立つ100m以上はありそうなレンガ造りの塔の頂上にいる。
塔の周囲には市場を思わせる色とりどりの布屋根が広がり、真夜中ではないのか人の活気もわずかに感じられた。
僕は誰かいないか辺りを見渡した。
そして念の為もう一度見渡したが当然のごとく誰もいない。
「現地に案内人がいるって言ったのに、いないのはどういう事なんでしょうかレグルスさん…。」
誰かくるのを待っていた方が良いのかしばらく悩んだが、存在しないと思っていた時よりも下がった神への信頼度のせいで、僕は自然と移動することした。
ふと、レグルスさんが神様だったと思い出す。あの神にはいないとは思うけど、これからはレグルスさんの狂信者に出会う可能性も考え、賢い僕はレグルス様と呼ぶことを決めた。
|||||
螺旋状になっている内階段をしばらく降りていくと、古びた鉄扉が僕の前に現れた。扉の左側には小さな犬のような生き物を大事そうに抱える子供が描かれ、右側には果物を差し出す子供が描かれていた。恐らくどちらも同じ子供だろう。
つい癖で扉に耳を当て入る前に部屋の中を探る。扉が厚いのか何も音は聞こえず、ひんやりとしていた。
仕方なく扉の取手を握ろうとすると、鍵穴のようなマークが扉全体に青白く浮かび上がり、僕を迎え入れるように独りでにそれは開いた。この取手は何のためにあるのだろうか?
扉に部屋へ招かれ一番最初に感じたのは、薬草をいぶしたような独特の匂いだ。
傭兵団の拠点にたまに出張儀式にやって来るシャーマンの怪しい薬の匂いを思い出す。
部屋の中は黄土色の明かりに照らされ、一本足の巨大な丸椅子が中央に陣取り、その上ではこの部屋の主人と思わしきローブ姿の巨大な人物がもぞもぞと動くのが見て取れた。
「この部屋に私の許可なく人の身で入れたということは、お前さんは神の代理人かい?」
その人はこちらを見ようともせず、そう僕に声を掛けてきた。その巨体から勝手に男だと思っていた僕は、女性のような声に戸惑いながらも、レグルスという神の代理人だと伝えた。すると上手に椅子の上で体を回転させ、僕に振り向いてその顔を見せた。
長い鼻には小さい老眼鏡をのせ、花と果物の装飾が施された黒いローブを身にまとい、初めて見るが年老いているのはわかる真っ白い人型のドラゴンだった。
レグルス様…、ファンタジー生物がいる世界かどうかは教えて欲しかったです。
「【絶海の交差市場 ラズベル】へようこそ、代理人殿。この島の所有者で選定の儀の案内人の一人、ベルモントという者さ、どうぞよろしく。」
顔の動きとローブから出てきたゆったりと揺れるしっぽを見る限りどう見ても着ぐるみの類ではない。首からぶら下がる巨大な宝石が埋め込まれた金のアクセサリー一つとってもその知性の高さが感じられる。
どうやら僕は肌の色など誤差の範囲でしかない世界に送り込まれたようだ。
銃口を向けなかった自分を褒めてあげたい。まぁ驚きすぎて身体が動かなかっただけなんだけど。
「開催から既に3か月以上経っての参加とは随分お寝坊さんだね。まぁ気負う必要なんてない。ここは所詮スタート地点一つ。次の場所へ向かう方法も単純明快、【この島から出ていく】ただそれだけさ。出て行くことさえ出来れば、どこへ行こうとも必ず次の案内人が現れる。まぁ気張らず頑張りな」
そう言い終わると、ベルモントと名乗ったドラゴンさんは出口の扉を指し示す。
そして話は終わった言わんばかりに僕に背を向け、またもぞもぞ机の上で作業を再開した。
………、えっそれだけ…?
当然の如くその後の言葉を待った僕は、イメージしてた展開と全然違う事に肩透かしをくらった。てっきり案内人の人に導かれながら、神の代理人として何かするかと思っていた。そもそも神様が代理人を立ててまでさせたいことが島を出て行くことなんて、何の意味があるんだろうか一体…。
未だ立ち尽くす僕に気が付いたのか、ドラゴンさんは再びこちらに目を向ける。
「…まだ何か用かい?」
「あの…、僕、レグルス様という神の代理人です。」
「それはさっき聞いたよ。」
「…、この後どうすればいいんですか?」
「それはさっき言ったろ、この島から出て行けばいいんだ」
「おすすめの方法は?」
「それを話したら、お前さんを代理人に選んだ神の資質を問えんじゃろうて…。」
「資質を問う?神様の??」
部屋に微妙な空気が漂い始める。
お互いの事前の認識が違うのだろう。話がかみ合っていない。
昔リーダーが見張りの仕事を受けに現地に行ったら、野菜の送り先と逃げたら地の果てまで追うと無駄に脅された時に状況が似ている。その時の解決策はシンプルだった。疑問に思った事は聞く、ただそれだけだ。
「あの…、そもそも【選定の儀】ってなんですか?」
「お前さん本当に神の代理人であってるか??」
僕の質問に怪訝そうな顔をしたドラゴンさん。
意外に爬虫類の表情って読めることがわかる。
でもその表情はちょっとやめてほしいな。
僕が悪いわけじゃないないのになんかいたたまれない気持ちになるんだけど。
とりあえず場の空気を変えるため、ドラゴンさんに僕はそれはそれは可愛いエンジェルスマイルをプレゼントしてあげた。首をかしげられたけどね!
僕の生まれた国に海はない。しかし独特のにおいでこれが話に聞いていた海だと直ぐ気が付くことができた。初めて見た海はとても雄大で暗く、近づくと吸い込まれてしまいそうに暗く、そして暗かった。ほぼ何も見えなかったので感じることこれ以上ない。
僕は目の前にある縁から下を見下ろした。
どうやらここは360度海に囲まれた直径2㎞はある小島のようだ。僕は島の中心にそびえ立つ100m以上はありそうなレンガ造りの塔の頂上にいる。
塔の周囲には市場を思わせる色とりどりの布屋根が広がり、真夜中ではないのか人の活気もわずかに感じられた。
僕は誰かいないか辺りを見渡した。
そして念の為もう一度見渡したが当然のごとく誰もいない。
「現地に案内人がいるって言ったのに、いないのはどういう事なんでしょうかレグルスさん…。」
誰かくるのを待っていた方が良いのかしばらく悩んだが、存在しないと思っていた時よりも下がった神への信頼度のせいで、僕は自然と移動することした。
ふと、レグルスさんが神様だったと思い出す。あの神にはいないとは思うけど、これからはレグルスさんの狂信者に出会う可能性も考え、賢い僕はレグルス様と呼ぶことを決めた。
|||||
螺旋状になっている内階段をしばらく降りていくと、古びた鉄扉が僕の前に現れた。扉の左側には小さな犬のような生き物を大事そうに抱える子供が描かれ、右側には果物を差し出す子供が描かれていた。恐らくどちらも同じ子供だろう。
つい癖で扉に耳を当て入る前に部屋の中を探る。扉が厚いのか何も音は聞こえず、ひんやりとしていた。
仕方なく扉の取手を握ろうとすると、鍵穴のようなマークが扉全体に青白く浮かび上がり、僕を迎え入れるように独りでにそれは開いた。この取手は何のためにあるのだろうか?
扉に部屋へ招かれ一番最初に感じたのは、薬草をいぶしたような独特の匂いだ。
傭兵団の拠点にたまに出張儀式にやって来るシャーマンの怪しい薬の匂いを思い出す。
部屋の中は黄土色の明かりに照らされ、一本足の巨大な丸椅子が中央に陣取り、その上ではこの部屋の主人と思わしきローブ姿の巨大な人物がもぞもぞと動くのが見て取れた。
「この部屋に私の許可なく人の身で入れたということは、お前さんは神の代理人かい?」
その人はこちらを見ようともせず、そう僕に声を掛けてきた。その巨体から勝手に男だと思っていた僕は、女性のような声に戸惑いながらも、レグルスという神の代理人だと伝えた。すると上手に椅子の上で体を回転させ、僕に振り向いてその顔を見せた。
長い鼻には小さい老眼鏡をのせ、花と果物の装飾が施された黒いローブを身にまとい、初めて見るが年老いているのはわかる真っ白い人型のドラゴンだった。
レグルス様…、ファンタジー生物がいる世界かどうかは教えて欲しかったです。
「【絶海の交差市場 ラズベル】へようこそ、代理人殿。この島の所有者で選定の儀の案内人の一人、ベルモントという者さ、どうぞよろしく。」
顔の動きとローブから出てきたゆったりと揺れるしっぽを見る限りどう見ても着ぐるみの類ではない。首からぶら下がる巨大な宝石が埋め込まれた金のアクセサリー一つとってもその知性の高さが感じられる。
どうやら僕は肌の色など誤差の範囲でしかない世界に送り込まれたようだ。
銃口を向けなかった自分を褒めてあげたい。まぁ驚きすぎて身体が動かなかっただけなんだけど。
「開催から既に3か月以上経っての参加とは随分お寝坊さんだね。まぁ気負う必要なんてない。ここは所詮スタート地点一つ。次の場所へ向かう方法も単純明快、【この島から出ていく】ただそれだけさ。出て行くことさえ出来れば、どこへ行こうとも必ず次の案内人が現れる。まぁ気張らず頑張りな」
そう言い終わると、ベルモントと名乗ったドラゴンさんは出口の扉を指し示す。
そして話は終わった言わんばかりに僕に背を向け、またもぞもぞ机の上で作業を再開した。
………、えっそれだけ…?
当然の如くその後の言葉を待った僕は、イメージしてた展開と全然違う事に肩透かしをくらった。てっきり案内人の人に導かれながら、神の代理人として何かするかと思っていた。そもそも神様が代理人を立ててまでさせたいことが島を出て行くことなんて、何の意味があるんだろうか一体…。
未だ立ち尽くす僕に気が付いたのか、ドラゴンさんは再びこちらに目を向ける。
「…まだ何か用かい?」
「あの…、僕、レグルス様という神の代理人です。」
「それはさっき聞いたよ。」
「…、この後どうすればいいんですか?」
「それはさっき言ったろ、この島から出て行けばいいんだ」
「おすすめの方法は?」
「それを話したら、お前さんを代理人に選んだ神の資質を問えんじゃろうて…。」
「資質を問う?神様の??」
部屋に微妙な空気が漂い始める。
お互いの事前の認識が違うのだろう。話がかみ合っていない。
昔リーダーが見張りの仕事を受けに現地に行ったら、野菜の送り先と逃げたら地の果てまで追うと無駄に脅された時に状況が似ている。その時の解決策はシンプルだった。疑問に思った事は聞く、ただそれだけだ。
「あの…、そもそも【選定の儀】ってなんですか?」
「お前さん本当に神の代理人であってるか??」
僕の質問に怪訝そうな顔をしたドラゴンさん。
意外に爬虫類の表情って読めることがわかる。
でもその表情はちょっとやめてほしいな。
僕が悪いわけじゃないないのになんかいたたまれない気持ちになるんだけど。
とりあえず場の空気を変えるため、ドラゴンさんに僕はそれはそれは可愛いエンジェルスマイルをプレゼントしてあげた。首をかしげられたけどね!
0
あなたにおすすめの小説
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~
甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって?
そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる