8 / 26
第8話 レグルス様と加護の力
しおりを挟む
なるほど…、僕は一番偉い神様を選ぶ為の戦争に派遣されたんですね。
なるほどなるほど…、意味がわからん。
レグルス様…生き返られせて頂いた身ではありますが、世界のことを考え人選はもっとまじめにした方が良かったのではないでしょうか??
様々な事が頭の中を駆け巡り脳みそが現実逃避したくなったのか、ふとよぎった素朴な疑問を口にする。
「なぜ代理人を使うなんてわざわざ回りくどい方法を?」
「大昔誰がというか、どの派閥から主神を出すかでもめにもめたらしい。それこそ選定の儀の最中神々の3割が消えさっちまうぐらいド派手にね。それの対策として代理人制度を導入したとメル様は言っておった。代理人同士に争わせておけば、儀にかこつけた神同士のきったはったは出来ないし、恨みもそこまで膨らまない。主神の任期を定めたのもその時という話だ」
クリアでわかりやすい人柱だな、巻き込まれ側にたったら大分迷惑な話だ。
「今回の選定方法は【到達】だ。お前さんら代理人は案内人の指示に従い最終目的地である【真なる椅子】へ誰よりも早く辿り着くのが目的となる。」
「真なる椅子…。」
ベルモントさんは僕の頭をひと撫でし、僕はレグルスさんが残した不穏な言葉を思い出す。
「死ぬこともやっぱりあるんですか?」
「無いとは言えんな、人の身体は酷く脆い。ただ死ぬことを前提とした試練はないはずだし、仮に死んでも蘇れるようにはなっている。そうじゃなければ神ですらない案内人が主神を選ぶことも可能になるからね」
ベルモントさんが腕を振るうと、中空に制止した文章たちは静かに消えていった。僕が読む気が無い事が伝わったのだろう。ごめんね、わざわざ出してくれたのに。
「話を聞く限りおまえさんを送り出した神は、不参加による神格剥奪を逃れる目的でお前さんを選んだようだ。まぁ色んな神がいる。人にとって良い神も悪い神も。お前さんを生き返らせた親紳がどういう方かわからんが、おまえさんは辛くても立ち止まらず、可能な限り先へ進んだ方がいい。」
「…逆ではないのですか?僕は結果を求められてないので、安全そうな所を見つけたら終わるまでそこでやり過ごす方がいいじゃないですか?」
「神は残酷だからね、意味をなさないものに慈悲は与えない。」
ルールか期限でもあるのかな?
悪意をもって言ってないことがなんとなくわかるのが救いだな。
「さて横道にそれてしまったね、そろそろお行き。選定に役立つ親神からの加護がわからないのは痛い所だが、親神関連は私の腕じゃ覗けない」
ベルモントさんは大きな両手で再び僕を持ち上げると、優しく床に下し再び頭をなでた。
どうやら話は本当にここまでらしい。僕が入ってきた扉とは逆の鉄扉がひとりでに開かれた。その扉の先には塔の上から見た市場と思われるテントの布屋根が広がっているのがわずかに見える。
別れ際僕がお礼を伝えると、少し悲しそうに見えるベルモントさんの瞳が印象的だった。
僕が扉を出て階段を降りようとした時、ベルモントさんが急に思い出したように僕を呼び止めた。
「ラーズ坊。親神を怨むんじゃないよ、それは何の意味のない事さ」
それはつぶやくような、不安と心配が入り混じっているように感じた。
優しい人だ。
恐らく選定の儀の説明はおろか、虎の子の加護の説明すらされていないことをあんじたからだろう。僕が神と世界を恨んでこれからを駄目にしないように。
僕はベルモントさんの気が少しでも晴れるように、僕の隠してはいないが話してもいない秘密を教えてあげた。
「僕はレグルス様には感謝しているんですよ、これでも。」
「………生き返らせてくれたからかい?」
「それもありますが…、実は僕、生きてる頃文字が読めなかったんです。普段よく目にする単語ぐらいはわかりますが、文章になるとさっぱり駄目で。でもそれがさっき、ベルモントさんが選定の儀の説明の時に見せてくれた文章を読むことができたんです。」
ここまでは事実だ。そしてこれからは予測の話になる。
ベルモントさんは沈黙によって僕に話の続きを促した。
「レグルス様がくれた加護は恐らくあらゆる言葉や文字を理解できるようになること。文字が読めなくていつも馬鹿にされてて、いつか本が読めるようになりたいという夢の一つを加護という形で叶えてくれたんだと思います。もしかしたら選定の儀にもっと役には立つ加護があったかもしれませんが、それでも僕はこの加護で良かったと思っています」
だからそんな顔をしないでベルモントさん。優しいあなたにそんな表情は似合わないですよ。
大丈夫、僕はそれなりにうまくやります。どのようにものをとらえるかで精神を安定させる方法も知ってます。例え普通を手に入れることが出来なくても、それは今までと大して変わらないのだから。
僕の言葉にベルモントさんは表情は曇ったままだ。
いや、よく見ればより悪くなった気もしないでもない。
あれあれ?なんでそんな反応するの??そこがひっかかっていたところじゃないの??
「ラーズ坊………、それは大紳メル様が代理人全員に与えた加護の力で、おまえさんの親神の加護とは全くの無関係だよ…。」
ベルモントさんはいたたまれなくなったのかついに視線をそらし、僕の作り笑顔は固まった。そして僕はそのままの表情で扉の外から見える雲一つない星空を見つめ、空の向こうから僕を見守っているだろうレグルス様へ祈りをささげる。
レグルス様…いつか僕に与えてくれた特別な加護について知る日を心から楽しみしています。まさかとは思いますが、大事な大事な加護を与え忘れたなんてことあるわけないですよね、信じていますよ、レグルス様…。
なるほどなるほど…、意味がわからん。
レグルス様…生き返られせて頂いた身ではありますが、世界のことを考え人選はもっとまじめにした方が良かったのではないでしょうか??
様々な事が頭の中を駆け巡り脳みそが現実逃避したくなったのか、ふとよぎった素朴な疑問を口にする。
「なぜ代理人を使うなんてわざわざ回りくどい方法を?」
「大昔誰がというか、どの派閥から主神を出すかでもめにもめたらしい。それこそ選定の儀の最中神々の3割が消えさっちまうぐらいド派手にね。それの対策として代理人制度を導入したとメル様は言っておった。代理人同士に争わせておけば、儀にかこつけた神同士のきったはったは出来ないし、恨みもそこまで膨らまない。主神の任期を定めたのもその時という話だ」
クリアでわかりやすい人柱だな、巻き込まれ側にたったら大分迷惑な話だ。
「今回の選定方法は【到達】だ。お前さんら代理人は案内人の指示に従い最終目的地である【真なる椅子】へ誰よりも早く辿り着くのが目的となる。」
「真なる椅子…。」
ベルモントさんは僕の頭をひと撫でし、僕はレグルスさんが残した不穏な言葉を思い出す。
「死ぬこともやっぱりあるんですか?」
「無いとは言えんな、人の身体は酷く脆い。ただ死ぬことを前提とした試練はないはずだし、仮に死んでも蘇れるようにはなっている。そうじゃなければ神ですらない案内人が主神を選ぶことも可能になるからね」
ベルモントさんが腕を振るうと、中空に制止した文章たちは静かに消えていった。僕が読む気が無い事が伝わったのだろう。ごめんね、わざわざ出してくれたのに。
「話を聞く限りおまえさんを送り出した神は、不参加による神格剥奪を逃れる目的でお前さんを選んだようだ。まぁ色んな神がいる。人にとって良い神も悪い神も。お前さんを生き返らせた親紳がどういう方かわからんが、おまえさんは辛くても立ち止まらず、可能な限り先へ進んだ方がいい。」
「…逆ではないのですか?僕は結果を求められてないので、安全そうな所を見つけたら終わるまでそこでやり過ごす方がいいじゃないですか?」
「神は残酷だからね、意味をなさないものに慈悲は与えない。」
ルールか期限でもあるのかな?
悪意をもって言ってないことがなんとなくわかるのが救いだな。
「さて横道にそれてしまったね、そろそろお行き。選定に役立つ親神からの加護がわからないのは痛い所だが、親神関連は私の腕じゃ覗けない」
ベルモントさんは大きな両手で再び僕を持ち上げると、優しく床に下し再び頭をなでた。
どうやら話は本当にここまでらしい。僕が入ってきた扉とは逆の鉄扉がひとりでに開かれた。その扉の先には塔の上から見た市場と思われるテントの布屋根が広がっているのがわずかに見える。
別れ際僕がお礼を伝えると、少し悲しそうに見えるベルモントさんの瞳が印象的だった。
僕が扉を出て階段を降りようとした時、ベルモントさんが急に思い出したように僕を呼び止めた。
「ラーズ坊。親神を怨むんじゃないよ、それは何の意味のない事さ」
それはつぶやくような、不安と心配が入り混じっているように感じた。
優しい人だ。
恐らく選定の儀の説明はおろか、虎の子の加護の説明すらされていないことをあんじたからだろう。僕が神と世界を恨んでこれからを駄目にしないように。
僕はベルモントさんの気が少しでも晴れるように、僕の隠してはいないが話してもいない秘密を教えてあげた。
「僕はレグルス様には感謝しているんですよ、これでも。」
「………生き返らせてくれたからかい?」
「それもありますが…、実は僕、生きてる頃文字が読めなかったんです。普段よく目にする単語ぐらいはわかりますが、文章になるとさっぱり駄目で。でもそれがさっき、ベルモントさんが選定の儀の説明の時に見せてくれた文章を読むことができたんです。」
ここまでは事実だ。そしてこれからは予測の話になる。
ベルモントさんは沈黙によって僕に話の続きを促した。
「レグルス様がくれた加護は恐らくあらゆる言葉や文字を理解できるようになること。文字が読めなくていつも馬鹿にされてて、いつか本が読めるようになりたいという夢の一つを加護という形で叶えてくれたんだと思います。もしかしたら選定の儀にもっと役には立つ加護があったかもしれませんが、それでも僕はこの加護で良かったと思っています」
だからそんな顔をしないでベルモントさん。優しいあなたにそんな表情は似合わないですよ。
大丈夫、僕はそれなりにうまくやります。どのようにものをとらえるかで精神を安定させる方法も知ってます。例え普通を手に入れることが出来なくても、それは今までと大して変わらないのだから。
僕の言葉にベルモントさんは表情は曇ったままだ。
いや、よく見ればより悪くなった気もしないでもない。
あれあれ?なんでそんな反応するの??そこがひっかかっていたところじゃないの??
「ラーズ坊………、それは大紳メル様が代理人全員に与えた加護の力で、おまえさんの親神の加護とは全くの無関係だよ…。」
ベルモントさんはいたたまれなくなったのかついに視線をそらし、僕の作り笑顔は固まった。そして僕はそのままの表情で扉の外から見える雲一つない星空を見つめ、空の向こうから僕を見守っているだろうレグルス様へ祈りをささげる。
レグルス様…いつか僕に与えてくれた特別な加護について知る日を心から楽しみしています。まさかとは思いますが、大事な大事な加護を与え忘れたなんてことあるわけないですよね、信じていますよ、レグルス様…。
0
あなたにおすすめの小説
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~
甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって?
そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる