これは少年ラーズの異世界物語

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第8話 レグルス様と加護の力

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 なるほど…、僕は一番偉い神様を選ぶ為の戦争に派遣されたんですね。
 なるほどなるほど…、意味がわからん。
 レグルス様…生き返られせて頂いた身ではありますが、世界のことを考え人選はもっとまじめにした方が良かったのではないでしょうか??

 様々な事が頭の中を駆け巡り脳みそが現実逃避したくなったのか、ふとよぎった素朴な疑問を口にする。

「なぜ代理人を使うなんてわざわざ回りくどい方法を?」
「大昔誰がというか、どの派閥から主神を出すかでもめにもめたらしい。それこそ選定の儀の最中神々の3割が消えさっちまうぐらいド派手にね。それの対策として代理人制度を導入したとメル様は言っておった。代理人同士に争わせておけば、儀にかこつけた神同士のきったはったは出来ないし、恨みもそこまで膨らまない。主神の任期を定めたのもその時という話だ」

 クリアでわかりやすい人柱だな、巻き込まれ側にたったら大分迷惑な話だ。

「今回の選定方法は【到達】だ。お前さんら代理人は案内人の指示に従い最終目的地である【真なる椅子】へ誰よりも早く辿り着くのが目的となる。」
「真なる椅子…。」

ベルモントさんは僕の頭をひと撫でし、僕はレグルスさんが残した不穏な言葉を思い出す。

「死ぬこともやっぱりあるんですか?」
「無いとは言えんな、人の身体は酷く脆い。ただ死ぬことを前提とした試練はないはずだし、仮に死んでも蘇れるようにはなっている。そうじゃなければ神ですらない案内人が主神を選ぶことも可能になるからね」

 ベルモントさんが腕を振るうと、中空に制止した文章たちは静かに消えていった。僕が読む気が無い事が伝わったのだろう。ごめんね、わざわざ出してくれたのに。

「話を聞く限りおまえさんを送り出した神は、不参加による神格剥奪を逃れる目的でお前さんを選んだようだ。まぁ色んな神がいる。人にとって良い神も悪い神も。お前さんを生き返らせた親紳がどういう方かわからんが、おまえさんは辛くても立ち止まらず、可能な限り先へ進んだ方がいい。」
「…逆ではないのですか?僕は結果を求められてないので、安全そうな所を見つけたら終わるまでそこでやり過ごす方がいいじゃないですか?」
「神は残酷だからね、意味をなさないものに慈悲は与えない。」

 ルールか期限でもあるのかな?
 悪意をもって言ってないことがなんとなくわかるのが救いだな。

「さて横道にそれてしまったね、そろそろお行き。選定に役立つ親神からの加護がわからないのは痛い所だが、親神関連は私の腕じゃ覗けない」

 ベルモントさんは大きな両手で再び僕を持ち上げると、優しく床に下し再び頭をなでた。
 どうやら話は本当にここまでらしい。僕が入ってきた扉とは逆の鉄扉がひとりでに開かれた。その扉の先には塔の上から見た市場と思われるテントの布屋根が広がっているのがわずかに見える。

 別れ際僕がお礼を伝えると、少し悲しそうに見えるベルモントさんの瞳が印象的だった。
 僕が扉を出て階段を降りようとした時、ベルモントさんが急に思い出したように僕を呼び止めた。

「ラーズ坊。親神を怨むんじゃないよ、それは何の意味のない事さ」

 それはつぶやくような、不安と心配が入り混じっているように感じた。
 優しい人だ。
 恐らく選定の儀の説明はおろか、虎の子の加護の説明すらされていないことをあんじたからだろう。僕が神と世界を恨んでこれからを駄目にしないように。

 僕はベルモントさんの気が少しでも晴れるように、僕の隠してはいないが話してもいない秘密を教えてあげた。

「僕はレグルス様には感謝しているんですよ、これでも。」
「………生き返らせてくれたからかい?」
「それもありますが…、実は僕、生きてる頃文字が読めなかったんです。普段よく目にする単語ぐらいはわかりますが、文章になるとさっぱり駄目で。でもそれがさっき、ベルモントさんが選定の儀の説明の時に見せてくれた文章を読むことができたんです。」

 ここまでは事実だ。そしてこれからは予測の話になる。
 ベルモントさんは沈黙によって僕に話の続きを促した。

「レグルス様がくれた加護は恐らくあらゆる言葉や文字を理解できるようになること。文字が読めなくていつも馬鹿にされてて、いつか本が読めるようになりたいという夢の一つを加護という形で叶えてくれたんだと思います。もしかしたら選定の儀にもっと役には立つ加護があったかもしれませんが、それでも僕はこの加護で良かったと思っています」

 だからそんな顔をしないでベルモントさん。優しいあなたにそんな表情は似合わないですよ。
 大丈夫、僕はそれなりにうまくやります。どのようにものをとらえるかで精神を安定させる方法も知ってます。例え普通を手に入れることが出来なくても、それは今までと大して変わらないのだから。

 僕の言葉にベルモントさんは表情は曇ったままだ。
 いや、よく見ればより悪くなった気もしないでもない。

 あれあれ?なんでそんな反応するの??そこがひっかかっていたところじゃないの??

「ラーズ坊………、それは大紳メル様が代理人全員に与えた加護の力で、おまえさんの親神の加護とは全くの無関係だよ…。」

 ベルモントさんはいたたまれなくなったのかついに視線をそらし、僕の作り笑顔は固まった。そして僕はそのままの表情で扉の外から見える雲一つない星空を見つめ、空の向こうから僕を見守っているだろうレグルス様へ祈りをささげる。

 レグルス様…いつか僕に与えてくれた特別な加護について知る日を心から楽しみしています。まさかとは思いますが、大事な大事な加護を与え忘れたなんてことあるわけないですよね、信じていますよ、レグルス様…。

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