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第20話 大賢者と謎の女の子
しおりを挟むう~ん、想定してなかったパターンだな。状況だけ伝えて判断はぶん投げるか。
エンビーさんが何か言葉を発しようとするも、時間が惜しい僕は言葉でそれを遮って状況を伝える。
「ただ、ベルモントさんの前に女の子がいて、部屋は嵐が過ぎ去った後のように荒れ果てています」
そう、部屋中大きな刃物にでも切り裂かれたような痕が至る所にあり、床には様々な本や調度品、木片などが散乱していた。
その異様な部屋の中、対峙しているベルモントさんと謎の女の子。
彼女の周囲にはまがまがしい半透明の黒い蔦がウヨウヨと生き物の様にうごめいていた。女の子の床に着いてもなお伸びる黒髪や、白いロングスカートの裾が彼女を中心に花を咲かせている見た目など見失ってしまう程に、それには悪意が込められているように感じる。
あの子が見えてないのはきついな。
十中八九この状況はあの子が作り出したものだ。
僕はそれを既に人として見ていなかった。
今日1日様々な人間ばなれした人種を見てきた中、彼女が最も自分に近い見た目をしていたにもかかわらず、脳が僕に違うと訴えかけてくる。
ベルモントさんと対峙しているそれは、こちらに気付いたようでチラリと見ると僕に対して口を開いた。
「あれ、君も私と同じ代理人?」
コテンと首を傾ける女の子。
どこか間延びした声がかすかに聞こえた瞬間全身に悪寒が走った。
一本の黒い蔦が巨大な柱のように膨れ上がり、目にも留まらぬ速さで僕らに襲いかかってきたのだ。
ドンッ!!
それは小手調べの一撃ではない、人など簡単に押しつぶすことが出来る必殺の一撃。僕らを守りるように突然目の前に現われた半透明の壁とぶつかった時に発生した空気の振動がその威力を物語っていた。
壁は護衛が出したのだろう。たったの一撃でそれは大きくひび割れ、パラパラと崩れ落ち空気中へと消えていってしまったが、その役割を十全に果たしたことは間違いない。
護衛もエンビーさんと同じで見えていないはず。それなのにさっき会ったばかりの僕のたった一言で即対応。間違えなく優秀だ、命を任せられる。
彼らの優秀さが少しテンパった僕の頭に冷静さを取り戻させるも、しかしそれは何の意味のない事だった。
「魔法ってやつだね~。この世界の生き物はなかなか面白いね」
クスクスと笑い出す女の子。
ただその行動は彼女にとって悪手であったと言わざるを得ない。
「私を前にして随分余裕だね」
女の子がベルモントさんの声に振り向くとようやく自分の置かれた状況に、彼女は気が付いた。女の子とベルモントさんの間には巨大な魔法陣が既に形を織りなし、魔法を知らない僕にもそれから強大な圧力を感じた。
女の子は反射的に蔦で攻撃しよう試みる。しかし中空から出現した赤黒い鎖によって、雁字搦めにその動きを封じ込められてしまった。
鎖ですまきにされたまま魔法陣を見つめる女の子。それをつまらないものでも見るように見下ろす大賢者。
僕は愚かにもその光景を目の当たりにして、頭がショートし指一つ動かす事か出来ないでいた。
「とりあえず部屋から出て行きな、お嬢ちゃん」
スローモーションのように魔法陣が生み出す光が、だんだん強まっていくのを感じた瞬間、有無を言わせない程の力が僕を背後へと引き抜いた。
護衛が離脱を選択したのだ。
ベルモントさんや入ってきた扉が急激に小さくなっていく中、さっきまでいた部屋が光によって包まれていく。
「飛ぶぞ、舌を噛むなよ!!」
僕もエンビーさんも護衛に抱えられ、さっき上ったばかりの階段へ頭から飛び込んだのとほぼ同時、周囲一帯を埋め尽くす程の膨大な光と熱が、ベルモントさんの部屋から世界へと放出されたのだった。
ドォゴォォォンッ!!!
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