これは少年ラーズの異世界物語

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第22話 火の手が上がる交差市場とすれ違う意思

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 僕は護衛の人に抱えられたまま、海岸と塔のちょうど中間近くに位置する場所まで屋根の上をつたって逃げてきた。人混みを避ける為だ。

 建屋の中にいた人達もぞろぞろと路上に顔を出し、状況を把握する為に奔走している者も見受けられる。
 
 島に混沌した雰囲気が流れる中、周囲に目を光らせる護衛達に囲まれ、エンビーさんが僕と視線の高さを合わせる為に中腰になった。額にはうっすらと汗あり、ほのかに甘い香りも漂う。

「何があったか説明してくれラーズ。我々はベルモントの怒りを買ったのか?」
「恐らくそれは違う。見た限りだけど、僕たちに黒い蔦で攻撃してきた女の子とベルモントさんの戦闘に巻き込まれただけだと思う」

 僕の予測に護衛達がおのおの口を開く。

「全く感じなかった魔力が、爆発の直前にいきなり感じる事が出来たのは、やはりベルモントの魔法だったか…」
「でも感じたのはかすかだった、あんな威力出せるものなの?」
「魔力も姿と同じで見えないようにしてたんだろ、あまりに大きすぎて隠せるレベルを超えたから、俺達にも感知できたんじゃないのか?」

 エンビーさんは護衛の魔法うんぬんよりも、女の子との動向が気になるようだ。
 それもそのはず、ベルモントさんとの交渉まであと少しの所で邪魔された感は否めない。

「なぜベルモントと戦闘など…。奴隷が反旗を翻したのか?」
「あの子も僕と同じ代理人の一人だと思う。僕に君も代理人か?って聞いてきたし、首輪も着けてなかった。ちなみにだけど他の代理人がベルモントさんと揉めた話は聞いたことある?」
「集めた情報が正しければ、それは無いはずだ。もしそんなことがあれば、ラーズに声をかける事はなかったかもしれない」

 どうやらベルモントさんと揉めるのは正規の脱出ルートではないようだ。
 まぁ僕とっては今更だけどね。

 ドンッ!ドンッ!!ドンッ!!!

 突如、僕達がいる位置から右手の方に広がる街や市場からいくつもの爆発と火柱が上がった。それは戦闘継続を意味し、あの爆発をあの子が生き抜いたことを表していた。
 
 威力はまるで空爆だ…、いやそれ以上か?
 その中をあの子は未だ生きて戦っている。まさしく僕と違って神の代理人と名乗っても名前負けしない。ベルモントさんが僕を脆弱な部類の子供と評価した理由も、あれと比較されたら納得の評価と言わざるを得ない。

「エンビー、これからの方針を決めたい」

 護衛のリーダーを務めるグレドさんの掛け声に、エンビーさんは反応しなかった。 
 いや声をかけられる前から、眉間にしわを寄せたまま目を瞑り、何かを考え込んでいる。
 その様子を他の護衛達は周囲を警戒しながらも、かたずをのんで見守っているが、グレドはエンビーさんの様子にかまわず話を続けた。

「俺はこの島からの脱出を提案する。自分の島を平然と吹き飛ばすような奴だ。場合によっては島丸ごと吹き飛ばしてもおかしくない。御話のベルモンドはそれが実現可能で、そして平然とそれをやるタイプだからな」

 エンビーさんはまだ目をつぶったままだ。
 未だ離れているとは言え、火柱も爆発も止まることはない。

「どの道この状況で交渉なんて不可能だろう。エンビー、どんな思いでここにいるか知らないが、悪いが決断をしてほしい。もしノーだというのらば違約金を払ってでも俺達はおろさせてもらう。」

 判断を仰いでるようで、選択肢を一つしか持たせないグレドさん。
 その信用を捨てる覚悟を示したグレドさんに反応したのか、エンビーさんは目を開け、一度星空を眺めた後大きな深呼吸をした。
 そして重くなったその口を開いた。

「わかった、グレド。全員脱出の準備を始めてくれ」

 グレドさんは深くうなずき、チケットを配り始めた。
 別の男は通信機を取り出し、恐らく他の仲間を呼び出し始めたのだろう。
 
 ここまでか…、仕方のない事だ。僕でも同じ判断をする。
 エンビーさん抜きでも、ドクさんが交渉に応じてくれるかわからないが頼りにいくしかないか…。

 エンビーさんは護衛から受け取ったチケットをおもむろに見つめた後、それをそのまま僕へと差し出した。
 彼女の瞳は、死神が手ぐすね引いて待ち受ける戦場へ向かう時に、よく見た目と同じだった。

「ラーズも今すぐこの島を出ろ。私の故郷なら悪くない選択肢のはずだ。ドクには私から言っておく」
 
 いやいやいや、そうじゃないだろ。この人は本当にもう…。
 
 
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