これは少年ラーズの異世界物語

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第23話 引けない交渉、近視感

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 赤い瞳が見つめる中、差し出された物に僕は手を伸ばさない。
 その瞳をまっすぐ見つめ返し、決まりきった答えが返ってくるのがわかってて、質問をした。

「エンビーさんはどうするつもり?」

僕の端的な質問にエンビーさんは少し弱ったように見える笑み浮かべた。

「ベルモントが見えるようになったんだ。何とか交渉の場を設けてみせるさ」

 エンビーさんの発言に護衛達は困惑の表情を浮かべる。
 
 やっぱりね、あれは覚悟を決めた目だった。一人でやり遂げるつもりだ。

「ならこれは受け取れないね。僕はまだ仕事も約束も果たしてない」
「ベルモントが見えるようになった。お前にこれ以上出来ることは何もない。」
「忘れたの?ベルモントさんが見えた場合の僕の役割。エンビーさんをベルモントさんに紹介する、それが約束だったはずだ。紹介はベルモントさんを知る代理人である僕にしか出来ない。」

エンビーさんは目を見開いたら、含み笑いをしだした。

「もう十分だ、お前にだってやることがあるんだろ」
「そうだね。今、目の前にあるね」

 見つめ合う僕とエンビーさん。
 人手が欲しいはずなのに断るエンビーさんと、今すぐ逃げ出したいのに残る選択肢以外拒否する僕。
 
 あれこの押し問答近視感があるな、まぁいいか。
 この島に来てから今までにない事が起こりすぎている。
 これが自分の意思で生きるってことなのかもしれない。

 その時、空気を読めな流れ火の玉が僕らに向かって襲い掛かかってきた。

 ドゴォォォン!!!

 大きな爆発音と共に白煙が辺りを包み込み、その中からそれを防いだ障壁と共に護衛のおじさんが現れる。
 その障壁は蔦に攻撃された時のように壊れることはなく強固に健在していた。

「大丈夫か!」
「あぁ、問題ない。今パカスカ撃ってる魔法なら威力は6~7って所だ。居眠りしてなきゃ防げなくもねぇが、距離は欲しいし後10発ぐらいが限度だな」
「それぐらいなら、私もいける」
「俺もだ」

 聞かれてもいないのに、他の護衛達も次々に答え始める。
 長年チームを組んできたのだろう。グレドはそんな彼ら見ると、頭を抱え大きくため息をついた。

「わかった、わかったよ。他の連中が戻り次第、編成を組み直す。これでいいか?」

 死地へ留まる判断に、護衛達から「ヤー」と歓声が沸き上がった。
 エンビーさんはその状況に困惑するが、僕も自然と笑みを浮かべてしまった。
 
 絶対賢くない選択なのに、やる気しかない時ってあるよね!

「グレド…」
「子供に覚悟を見せられたんだ、俺らが先にいも引くわけにはいかねぇさ」
「すまない、感謝する」
「先に言っておくけど無理も無茶もしねぇからな。お前のおやっさんの時代から雇われているのはそういう臆病な所も見込まれてるからだ。交渉のタイミングを伺う為に島に留まる、ただそれだけだ。それ以上の事はしない。わかったか、泣き虫お嬢ちゃん」
「もう20をとうの昔に過ぎてるんだ、お嬢ちゃんはやめてくれグレド」
「俺からすればまだまだお前は子供だよ」

 張り詰めた雰囲気が弛緩したのか、護衛の女の人が僕にこっそり話しかけてきた。

「これつけなさい」
「なにこれ?」
「自動で障壁を張ってくれる魔道具よ、さっきの魔法の直撃には耐えられないけど、余波ぐらい何度か防げるから」
「いいの?お姉さんはつけなくて」
「もちろんつけてるわよ、それは私の予備だから、気にすることはないわ」
「ありがと、助かる」
「どういたしまして」
 
 混乱する島にへし折れた塔。それに今なお収まる様子のない攻防。
 
 死んでから一日も経たずに、それも自分の意思で戦場に舞い戻る選択をとるなんて…。
 僕はいつからこんなに勇敢な人間になったんだろうね、全く…。

 後悔などしないが自分の選択に呆れつつ、少しずつ変化している自分に驚きつつ、僕は癖になった装備品のチェックを行うのだった。
 
 あれ、やば…。唯一の拳銃、分解してドクさんの所に置いてきたままだったな…。
 レグルス様、貴方の大事な大事な代理人が今困り果ててます。助けるなら今のうちですよ!聞いてますかレグルス様!!

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