23 / 26
第23話 引けない交渉、近視感
しおりを挟む赤い瞳が見つめる中、差し出された物に僕は手を伸ばさない。
その瞳をまっすぐ見つめ返し、決まりきった答えが返ってくるのがわかってて、質問をした。
「エンビーさんはどうするつもり?」
僕の端的な質問にエンビーさんは少し弱ったように見える笑み浮かべた。
「ベルモントが見えるようになったんだ。何とか交渉の場を設けてみせるさ」
エンビーさんの発言に護衛達は困惑の表情を浮かべる。
やっぱりね、あれは覚悟を決めた目だった。一人でやり遂げるつもりだ。
「ならこれは受け取れないね。僕はまだ仕事も約束も果たしてない」
「ベルモントが見えるようになった。お前にこれ以上出来ることは何もない。」
「忘れたの?ベルモントさんが見えた場合の僕の役割。エンビーさんをベルモントさんに紹介する、それが約束だったはずだ。紹介はベルモントさんを知る代理人である僕にしか出来ない。」
エンビーさんは目を見開いたら、含み笑いをしだした。
「もう十分だ、お前にだってやることがあるんだろ」
「そうだね。今、目の前にあるね」
見つめ合う僕とエンビーさん。
人手が欲しいはずなのに断るエンビーさんと、今すぐ逃げ出したいのに残る選択肢以外拒否する僕。
あれこの押し問答近視感があるな、まぁいいか。
この島に来てから今までにない事が起こりすぎている。
これが自分の意思で生きるってことなのかもしれない。
その時、空気を読めな流れ火の玉が僕らに向かって襲い掛かかってきた。
ドゴォォォン!!!
大きな爆発音と共に白煙が辺りを包み込み、その中からそれを防いだ障壁と共に護衛のおじさんが現れる。
その障壁は蔦に攻撃された時のように壊れることはなく強固に健在していた。
「大丈夫か!」
「あぁ、問題ない。今パカスカ撃ってる魔法なら威力は6~7って所だ。居眠りしてなきゃ防げなくもねぇが、距離は欲しいし後10発ぐらいが限度だな」
「それぐらいなら、私もいける」
「俺もだ」
聞かれてもいないのに、他の護衛達も次々に答え始める。
長年チームを組んできたのだろう。グレドはそんな彼ら見ると、頭を抱え大きくため息をついた。
「わかった、わかったよ。他の連中が戻り次第、編成を組み直す。これでいいか?」
死地へ留まる判断に、護衛達から「ヤー」と歓声が沸き上がった。
エンビーさんはその状況に困惑するが、僕も自然と笑みを浮かべてしまった。
絶対賢くない選択なのに、やる気しかない時ってあるよね!
「グレド…」
「子供に覚悟を見せられたんだ、俺らが先にいも引くわけにはいかねぇさ」
「すまない、感謝する」
「先に言っておくけど無理も無茶もしねぇからな。お前のおやっさんの時代から雇われているのはそういう臆病な所も見込まれてるからだ。交渉のタイミングを伺う為に島に留まる、ただそれだけだ。それ以上の事はしない。わかったか、泣き虫お嬢ちゃん」
「もう20をとうの昔に過ぎてるんだ、お嬢ちゃんはやめてくれグレド」
「俺からすればまだまだお前は子供だよ」
張り詰めた雰囲気が弛緩したのか、護衛の女の人が僕にこっそり話しかけてきた。
「これつけなさい」
「なにこれ?」
「自動で障壁を張ってくれる魔道具よ、さっきの魔法の直撃には耐えられないけど、余波ぐらい何度か防げるから」
「いいの?お姉さんはつけなくて」
「もちろんつけてるわよ、それは私の予備だから、気にすることはないわ」
「ありがと、助かる」
「どういたしまして」
混乱する島にへし折れた塔。それに今なお収まる様子のない攻防。
死んでから一日も経たずに、それも自分の意思で戦場に舞い戻る選択をとるなんて…。
僕はいつからこんなに勇敢な人間になったんだろうね、全く…。
後悔などしないが自分の選択に呆れつつ、少しずつ変化している自分に驚きつつ、僕は癖になった装備品のチェックを行うのだった。
あれ、やば…。唯一の拳銃、分解してドクさんの所に置いてきたままだったな…。
レグルス様、貴方の大事な大事な代理人が今困り果ててます。助けるなら今のうちですよ!聞いてますかレグルス様!!
0
あなたにおすすめの小説
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~
甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって?
そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる