これは少年ラーズの異世界物語

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第24話 成り立たない会話

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「フフフ。私ね、私を生んだ神様から代理人を全て殺せって頼まれたの」
 
 女の子が突如大賢者ベルモントの前に現れたのは、ラーズがエンビーが食事を終えた直ぐ後の事だ。
 既に選定の儀が始まってから3か月以上が経つ。この出遅れた代理人を見て、また神格の剥奪を逃れる為かと思いつつも、次の案内人に出会う方法の説明を行った。
 
 その後の一言である。選定の儀の趣旨とは大きく外れる女の子の目的に、案内人の端くれぐらいの自覚はあるベルモントの眉が小さくゆがんだ。

「ルール上は問題はない。だがそれは不毛で意味のないことだ。殺すことは事実上出来ないからだ」
「私、前は大きな大きな木だったの」

 ベルモントの返答に的外れな回答を返す女の子。
 笑顔が絶えない女の子のその一言に、ベルモントは小さくため息を漏らした。
 理由は成り立たない会話ではなく、人ではなかったという主張にだ。 
 
 実在した者から代理人を選ぶ、それは選定の儀のルールにある。それは神がどんな性質の者を選出するかでその神の資質を問う、選定の儀の中で最も重要な要素である。
 大派閥の神々ですらルールの穴をついてくることはあっても、正面切って破るものはそうはいない。主神を決めるという大義がある選定の儀で、それを平然と破る神がいるという事実に呆れる以外ほかはない。

「興味がない。それを裁く立場にもない」
「初めはね、動物に食べられそうになるぐらい小さかったの。でも新しい景色を見たくてね、どんどん頑張って大きくなったの。色んな動物が集まってきて、中には街を作る動物もいたわ。それからもっともっと違う景色が見たくなって大きくなったら、気付いた時には私以外星空しか残っていなかったわ。」
 
 駄目だな、人に作り替えられたばかりで会話が成り立たない。ベルモントがそう思い、出口を指し示そうとした直後、女の子の周囲から黒い蔦が浮かびあがり、それは実体化した。
 前世の身体を模したものだろう。どうやら女の子はただ身の上話を聞いて欲しいというわけではないようだ。
 
「兄弟達も神様が言うには他に8本いたらしいんだけど、知らぬ間に飲み込んでいたみたい。だから私、狩りの仕方がわからないの。」
「…、何が言いたいんだい?」
 
 大賢者の顔から感情が抜け、魔力がオーラとなって彼女の周囲を漂い出す。
 蔦は女の子を中心に床に広がり、先端は食べ物を探しているようにウヨウヨと動きだした。

「貴方で狩りの練習させてほしいの、動物さん。私が他の代理人に後れを取らないように。お話し相手になってくれる神様の願いを叶える為に」
「はぁ…。神が主神の座に興味が無さすぎるってのも問題だね…全く…」
 
 業務外のお願いに再びため息を付くベルモントに対して、無数の黒い蔦が目にも止まらぬ速さで襲い掛かっていった。

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