これは少年ラーズの異世界物語

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第25話 激化する戦闘

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 ベルモントと女の子の戦闘は激化の一途を辿った。
 巨大な蔦とベルモントの炎弾が闇夜に踊り、戦闘の巻き添えをくらった街は瓦礫と火の海へと変わる。
 そこに住民達の悲鳴などない、既に戦場となった島の東部はもぬけの殻になっていた。

 女の子のとった行動はシンプルだった。
 超人的な再生能力を背景に、炎弾が当たろうともベルモントの元へ近づき蔦で攻撃をする、ただそれだけだ。
  
 その原始的な強引さに塔の間近まで幾度となく接近を許すも、ベルモントの巧みな砲撃によってその凶刃は彼女へと辿り着けないでいた。
 
 しかし女の子の13回目の突貫時、その均衡は崩れた。
 
 着弾する直前、蔦で建屋と自身を縫い付ける事によって、爆発によって吹き飛ばされるのを防いだのだ。
 目論みは成功した。だが逃げ場を失った威力を全身で受け止めたせいで、身体の損傷は激しかった。
 爆炎に包まれながら、片腕となった身体をバネのようにしならせ、巨大化させた蔦をベルモントへと鋭く振り下ろすのだった。

 ドン!! 

 初めての手ごたえに笑顔を一瞬みせるも、女の子は目の当たりにした現実に目を見開いた。
 
 巨大な大樹となった蔦をベルモントがいとも簡単に片手で受け止めたのだ。

「単調だね。蔦も始素でてきているという点を除けばありふれている」

 女の子の目の前に突如魔法陣が現れた。そこから発せられる光が彼女を包み込んだ瞬間、再び彼女は街の上空へとあっさり吹き飛ばされていった。

「始素を中核に蔦を構成するのは、前世の名残かね…。魔素が大半を占めるこの世界では悪手ともいえる選択だが、親神が愚かど子供も大変だね」
 
 女の子から切り離された蔦は脆くも消え去った。
 火の手が上がる街へと消えた女の子に対し、ベルモントはすかさず追撃の魔法を撃ち込み始める。

 攻め手にかける、だが決して彼女は弱者ではない。
 前世は神が実験の為に直々に作り出し、星一つを自身の勢力圏におさめる事に成功した一本の大樹である。あらゆる環境に適合しながら、縄張りを広げ、同時に多くの命と文明を飲み込んでいった。その力と能力をそのまま人間の身体に落とし込んだのが彼女という存在だ。
  
 しかし相手は人類が神の座から引きずり下ろすために、無条件に降伏した相手。
 徐々に女の子の速度が上がり着弾率が下がってくるも、予想の範囲内といわんばかりにその表情は変わらない。

 再び接近を目論む女の子が屋根の上に現れた直後、ベルモントは再び炎弾を打ち込んだ。
 同じことの繰り返し、彼女の行動に変化が無ければそうなるはずだった。
 しかし女の子は蔦を巨大な刃へと形状を変化させ、それを叩き切る。
 二つに切り裂かれた炎弾は女の子の後方建屋4棟を吹き飛ばすと、その爆風は女の子の長い黒髪が大きく揺した。

「えへへへ、わかっちゃった。それの対処法!」
「そうかい、そいつは良かったね」

 指を差しながら不敵に女の子は笑う。ベルモントはつまらないようにそれを見つめる。

「私に刃を向けるからもう少し楽しめるかと思ったが、お前さんの引き出しは少なそうだ。そろそろ終わりにするかね」
「うんっと…、じゃあ飲み込んであげる!」
「ふふふ、なめすぎだよ私を」

 ベルモントの上空に直径5m程の魔法陣が出現する。
 そこから無数の光の槍が打ち上げ花火の様に空へ放たれ、発射時の光が大賢者顔に深い陰影を浮かばせる。
 それらは空中で突如方向を変えると流星のごとく女の子へと進路を変えた。
 刃へと変化させたそれで切り落とそうするが、無数の光槍はまるでそれが存在してないかのように貫通し、建屋を瓦礫に変えながら再び女の子を海岸近くまで運んでいった。

「さてどうするか。正面切って案内人に刃を向けたんだ、私が殺してもメル様からのお咎めはないだろう。しかしそれをしたところで、あれを送り込んできたどこぞのアホに痛手はない。それはこの上なく不満で不愉快だ」

 ナパーム弾を落とされたように海岸まで続く灰煙。
 終着点となった砂浜では、土煙が海岸を呑み込む勢いでその規模を広げた。

「仕方がない、勿体ないが月をいくつか使うか…。練る時間は奴隷共を使って稼ぐとするかね」
 
 土煙の中へと消えたそれを見ていたベルモントの口元に、小さな魔法陣が現れる。

「良く聞きな奴隷共」

 戦闘の経過を息を潜めて見守っていたベルモントの奴隷達の脳内に、突然絶対の支配者からの声が響いた。
 中には数百年振りにその声を聞いた者もいただろう。ある者は恐怖し、ある者は神のお告げと歓喜した。
 そんな彼らの頭に、直接女の子のイメージが叩き込まれる。

「今から一つ魔法を構築する。島を消されて魚の餌になりたく無ければ、完成するまでこの子と少し遊んでやんな。参加しない奴はそのまま契約解除だよ」

 契約解除。ベルモントの指した契約が何なのか奴隷達は把握していなかった。ほとんどの者が突然現れたベルモントに超常の存在と人との絶対なる壁を思い知らされて、気が付いたらベルモントの奴隷となりここで働かされていたのだから。
 しかし奴隷となり、不老となった奴隷達は直ぐにそれが死に直結することだけは理解出来た。
 それでもある者は叫ばざるをえなかった。今のままこれに巻き込まれたどの道死ぬと。
 その声に呼応するかのように彼らに刻まれた首輪が光を強め、強い痛みが彼らを襲うと、首輪が忽然と消えた。
 その瞬間、ベルモントによって封印された傍若無人に時代を謳歌していた時の力が、奴隷達の全身にみなぎっていくのだった。
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