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────3章『本格始動、宝船』
■11「最悪な結末」
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****♡Side・大里
なんで、なんで、なんで⁈
どうしてこうなった⁈
大里は葵から連絡を受け、パニックになっていた。
悪いのは俺だ。
俺があの子に手を出したから。
可哀想だなんて、中途半端なことをしたから。
“黒川 彩都”…大事にしていたのに!
『いやああああああああッ』
『やめろッ!』
『聖くんッ!いやだぁあああああッ!放してッ!助けてッ聖くんッ』
『お前ら辞めろおおおおおおおッ!』
『いやぁ...』
『大里ッ!大里!早く来てッ!』
『葵ッ!伏せろっ』
『サクッ!そっちッ』
『やぁッ...!やめてッ!嫌だッ。助けてッ!』
どうしてこうなった?!
スマホの受話口から聴こえるあの子、黒川の悲鳴と、葵と咲夜の怒声。大里は真っ青になった。
「大里!しっかりしろ!」
久隆の声にハッとする。気付けば大里は、久隆に引っ張られながら現場に向かっていた。
「久隆っ」
「二人があの子、黒川がリンチされてる現場に出くわしたのは、不幸中の幸いかもしれないっ」
「俺っ」
「きっと守ってくれてるっ。だから、俺らも急ごう!」
大里は、現場に着いて更に青くなる。大里が大切にしていた“黒川 彩都”は、ほぼ全裸に近かった。傍らにそれを葵が守るように膝をついており、咲夜が両腕を拡げ、黒川をリンチしようとしていた奴らを威嚇している。
俺、こんなにセフレいたんだ。
そこには大里にとっては見知った、十数名の男女がいた。その大里の元セフレたちは寄ってたかって、黒川を輪姦しようとしていたようにみえる。大里が近づくと、黒川は力なく両腕を伸ばす。激しく抵抗したのか傷だらけだった。
「聖くん..」
「ごめん、守ってやれなくてごめん」
大里は崩れるように膝をつくと、ぎゅっと彼を抱き締める。
「うわああああああん」
泣き出す彼を強く抱きしめながら、
「ごめんな、ごめん...彩都ッ」
何度も謝罪の言葉を述べる大里。その姿を見て、葵がぎゅっと目を閉じ顔を反らす。そこへカサッと草を踏む音がし、背筋をぞくりと何かが駆け上がり、大里が音の正体を確かめようとゆっくりと背後に目を向けると、殺気立つ久隆の足音であった。
「誰?」
久隆の瞳はまるで何も映してはいないように見え、静かな、腹を抉るような声で誰にともなく問う。
「誰なの?こんなことをしようとしたのは」
久隆をそうした大里でさえ、彼の異変には身が氷る思いがする。
「ねえ?死にたいの?答えなよ」
咲夜が久隆の変貌を見るのは初めてのことで、普段とは違う彼の様子に怯えており、それに気づいた葵は立ち上がると震える咲夜を抱き締めた。久隆は、そんな彼らのことは気にも留めず、
「へえ、答えないんだ?だったら全員同じ目に合わせてやろうか?舐めてるんだよね?俺のこと」
と、続ける。
「あ、あ..あいつ..」
一人が、ヒイッと声をあげたかと思うと、首謀者らしき者を指差した。指を差された者はガタガタと、震えている。
「そう、君なの」
久隆は静かに彼に近づいていく。
「俺ね、性的暴行が一番嫌いなんだよ」
首謀者らしき者の顎を捉えると耳元で。
「どうして人を傷つけようとするの?あの子がそんなに羨ましいの?」
「だ..だって、ズルいじゃないかッ」
「何が?」
「なんでアイツだけ切られないんだよッ」
久隆はじっと彼を見つめた。
「だって、君たちは大里を利用することしか考えてない豚だからでしょ?いらないじゃない、ただの豚なんて」
ねえ?と、久隆は首を傾げる。
「あー、豚に失礼だったね。ミジンコ以下のやつに豚なんて」
「ッ」
「そんなに怖い?ゲームが」
「当然じゃないかっ」
「なにもしなければ何も起きないのに?」
久隆はじっと彼の名札を見つめた。
「いつ巻き込まれるかわからないんだぞ!大里と居れば安心だったのにッ」
「君はゲームから抜けたいんだ?」
彼の瞳に希望の光がほんのり宿る。
「抜けられるものなら...」
まさか?
「抜けられるなら、二度とこんなことしない?」
「しない!絶対にッ」
「名前、教えてごらんよ」
言って久隆が、彼の口元に耳を寄せた。
ダメだッ!
例え、久隆が許しても俺は、許さない。
彩都をこんな風に傷つけたこと。
大里は立ち上がろうとした、その時だった。
「あっははははっ。期待しちゃった?」
久隆が笑い出す。
「バカじゃないの?お前らは許さないよ」
こんなことは、初めてだった。怒ると半分意識が飛ぶ久隆を大里はいつも意図的に止めていたのだが、今日は違っていて。
「絶対に許さねぇ!」
久隆は、後ずさる。そこへ、風紀委員と生徒会の連中が駆けつける。
「大崎」
と名前を呼びながら風紀委員長が、久隆に近づき、
「あとは任せろ」
と言ってポンと久隆の肩に手を置くと、
「頼みます」
とは彼は頭を下げたのだった。
**
「行こう」
と、久隆は風紀委員長から離れると、咲夜と葵に近づいていくと、
「久隆..」
咲夜が近づいてきた彼の腕にそっと触れる。ハッとした久隆が、
「咲夜、怖がらせてごめんね」
と。
その謝罪の言葉に咲夜が首を横に振るのが見え、大里は傷ついた黒川を上着で包むと、胸に抱き上げた。
「聖くん..」
大里の腕の中で、不安そうな黒川に、
「帰ろう」
力なく微笑みかける。大里たちは、後を任せてそれぞれの家に帰宅した。後味の悪さだけを残して。
なんで、なんで、なんで⁈
どうしてこうなった⁈
大里は葵から連絡を受け、パニックになっていた。
悪いのは俺だ。
俺があの子に手を出したから。
可哀想だなんて、中途半端なことをしたから。
“黒川 彩都”…大事にしていたのに!
『いやああああああああッ』
『やめろッ!』
『聖くんッ!いやだぁあああああッ!放してッ!助けてッ聖くんッ』
『お前ら辞めろおおおおおおおッ!』
『いやぁ...』
『大里ッ!大里!早く来てッ!』
『葵ッ!伏せろっ』
『サクッ!そっちッ』
『やぁッ...!やめてッ!嫌だッ。助けてッ!』
どうしてこうなった?!
スマホの受話口から聴こえるあの子、黒川の悲鳴と、葵と咲夜の怒声。大里は真っ青になった。
「大里!しっかりしろ!」
久隆の声にハッとする。気付けば大里は、久隆に引っ張られながら現場に向かっていた。
「久隆っ」
「二人があの子、黒川がリンチされてる現場に出くわしたのは、不幸中の幸いかもしれないっ」
「俺っ」
「きっと守ってくれてるっ。だから、俺らも急ごう!」
大里は、現場に着いて更に青くなる。大里が大切にしていた“黒川 彩都”は、ほぼ全裸に近かった。傍らにそれを葵が守るように膝をついており、咲夜が両腕を拡げ、黒川をリンチしようとしていた奴らを威嚇している。
俺、こんなにセフレいたんだ。
そこには大里にとっては見知った、十数名の男女がいた。その大里の元セフレたちは寄ってたかって、黒川を輪姦しようとしていたようにみえる。大里が近づくと、黒川は力なく両腕を伸ばす。激しく抵抗したのか傷だらけだった。
「聖くん..」
「ごめん、守ってやれなくてごめん」
大里は崩れるように膝をつくと、ぎゅっと彼を抱き締める。
「うわああああああん」
泣き出す彼を強く抱きしめながら、
「ごめんな、ごめん...彩都ッ」
何度も謝罪の言葉を述べる大里。その姿を見て、葵がぎゅっと目を閉じ顔を反らす。そこへカサッと草を踏む音がし、背筋をぞくりと何かが駆け上がり、大里が音の正体を確かめようとゆっくりと背後に目を向けると、殺気立つ久隆の足音であった。
「誰?」
久隆の瞳はまるで何も映してはいないように見え、静かな、腹を抉るような声で誰にともなく問う。
「誰なの?こんなことをしようとしたのは」
久隆をそうした大里でさえ、彼の異変には身が氷る思いがする。
「ねえ?死にたいの?答えなよ」
咲夜が久隆の変貌を見るのは初めてのことで、普段とは違う彼の様子に怯えており、それに気づいた葵は立ち上がると震える咲夜を抱き締めた。久隆は、そんな彼らのことは気にも留めず、
「へえ、答えないんだ?だったら全員同じ目に合わせてやろうか?舐めてるんだよね?俺のこと」
と、続ける。
「あ、あ..あいつ..」
一人が、ヒイッと声をあげたかと思うと、首謀者らしき者を指差した。指を差された者はガタガタと、震えている。
「そう、君なの」
久隆は静かに彼に近づいていく。
「俺ね、性的暴行が一番嫌いなんだよ」
首謀者らしき者の顎を捉えると耳元で。
「どうして人を傷つけようとするの?あの子がそんなに羨ましいの?」
「だ..だって、ズルいじゃないかッ」
「何が?」
「なんでアイツだけ切られないんだよッ」
久隆はじっと彼を見つめた。
「だって、君たちは大里を利用することしか考えてない豚だからでしょ?いらないじゃない、ただの豚なんて」
ねえ?と、久隆は首を傾げる。
「あー、豚に失礼だったね。ミジンコ以下のやつに豚なんて」
「ッ」
「そんなに怖い?ゲームが」
「当然じゃないかっ」
「なにもしなければ何も起きないのに?」
久隆はじっと彼の名札を見つめた。
「いつ巻き込まれるかわからないんだぞ!大里と居れば安心だったのにッ」
「君はゲームから抜けたいんだ?」
彼の瞳に希望の光がほんのり宿る。
「抜けられるものなら...」
まさか?
「抜けられるなら、二度とこんなことしない?」
「しない!絶対にッ」
「名前、教えてごらんよ」
言って久隆が、彼の口元に耳を寄せた。
ダメだッ!
例え、久隆が許しても俺は、許さない。
彩都をこんな風に傷つけたこと。
大里は立ち上がろうとした、その時だった。
「あっははははっ。期待しちゃった?」
久隆が笑い出す。
「バカじゃないの?お前らは許さないよ」
こんなことは、初めてだった。怒ると半分意識が飛ぶ久隆を大里はいつも意図的に止めていたのだが、今日は違っていて。
「絶対に許さねぇ!」
久隆は、後ずさる。そこへ、風紀委員と生徒会の連中が駆けつける。
「大崎」
と名前を呼びながら風紀委員長が、久隆に近づき、
「あとは任せろ」
と言ってポンと久隆の肩に手を置くと、
「頼みます」
とは彼は頭を下げたのだった。
**
「行こう」
と、久隆は風紀委員長から離れると、咲夜と葵に近づいていくと、
「久隆..」
咲夜が近づいてきた彼の腕にそっと触れる。ハッとした久隆が、
「咲夜、怖がらせてごめんね」
と。
その謝罪の言葉に咲夜が首を横に振るのが見え、大里は傷ついた黒川を上着で包むと、胸に抱き上げた。
「聖くん..」
大里の腕の中で、不安そうな黒川に、
「帰ろう」
力なく微笑みかける。大里たちは、後を任せてそれぞれの家に帰宅した。後味の悪さだけを残して。
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