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情熱が消えた日
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「で?」
と、俺。
「恋人を作れば治るらしい!」
と、彼。
「誰情報?」
「そこ重要?」
───いや待て、重要だろ?それとも俺の感覚がおかしいのか?
眉を顰め、彼を見つめていると、
「これ」
とスマホの画面を差し出される。そこには、有名なモザイクチャンネルの一ページが映し出されていた。某、巨大掲示板サイトだ。某?名前出ているのにか?
「確かにな。しかしこれは、信ぴょう性はあるのか?」
と、俺。彼は、
「俺、実はさ」
「おう」
「親父と確執があるんだよ」
「唐突だな」
───いくら何でも。唐突過ぎるだろ。
「いつだって、確執告白は唐突さ」
と彼。
「何言ってんの、ホント」
「俺ーずっとさ」
「話、聞けよ」
彼はトレンチコートのポケットに両手を突っ込み、空を見上げる。適度に雲が流れている。いつ着たんだ、トレンチコートは。
「飲食店経営に憧れていて」
「なんで電気屋?」
「ほら、継がないと」
「そんなの誰が決めたんだよ」
「親父?」
親父とはどこの家も勝手だな、と思った。子供の夢なんてお構いなし。俺だって、夢の一つくらいあったさ。親父が捕まって諦めたけどさ。確か俺の夢って…なんだっけ?
「やりたいことやればいいじゃん」
俺は考えることを放棄した。
「到流、手伝ってくれる?」
「俺、カレー出したことしかないけど」
「そこはいいんだ、親父が寝ている間に、電気屋を改装する」
「待てよ!親父は何日寝てるんだよ」
「毎日寝るだろ」
───待て待て、寝ている間に、ちょっとづつ改装ってこと?そんな無茶苦茶な。
彼の無茶ぶりは今に始まったことではないが。
「改装しちゃえば、親父も諦めると思うんだ」
「その前に、話し合えよ」
「話して何とかなるくらいなら、とっくに話している。確執はそういうものだろ?って、何してる」
「え、検索。《名・ス自》自分の意見を強く主張してゆずらないこと。またそこから起こる争い。Google先生」
「Google先生は今どき、流行らないぞ。時代はハッシュタグだからな!」
───言っていることは間違ってはいないが、タグで確執調べるのか?どうかしているぞ。
「で、主張は譲らないと」
と、俺。
「ああ。親父は禿電気。俺はフサフサ飲食店」
「それ、どういう、悪口?」
相変わらず、電波な発言をする彼に、俺も少し自分のことを話そうと思った。
「実は俺も親父と確執があってさ」
「奇遇だな」
そこは奇遇とか言わんだろ、とツッコミ入れたいのを抑えつつ、
「何で?」
と、彼。
「親父、法を犯して捕まった」
その言葉を聞いて、何かに思い当たった彼が口を噤んだ。
「辞めろって言ったよ、信念貫いたって無駄だって」
「うん」
「残された家族のことなんて考えていないんだ…ちきしょう」
俺は石を蹴る。
「痛っ」
跳ね返って脛に当たった。
「到流さ、親父さんは間違ってないよ」
「なんで!」
家族は犯罪者の身内のレッテル貼られて、庭は占領され、壁にラッ〇ンみたいな絵を書かれていてもか?俺はダ・ウィンチが好きなのに!
「だって、到流の父さんは情熱を守りたかったんだろ?みんなのやる気を」
この国の法律が変わらない限り、親父は犯罪者のままだ。それでもか?
「間違ってるのは父さんじゃないだろ」
「寝ている間に、店を改装しようとしている、あんただな」
「そ、それは、否定はしないが」
と、俺。
「恋人を作れば治るらしい!」
と、彼。
「誰情報?」
「そこ重要?」
───いや待て、重要だろ?それとも俺の感覚がおかしいのか?
眉を顰め、彼を見つめていると、
「これ」
とスマホの画面を差し出される。そこには、有名なモザイクチャンネルの一ページが映し出されていた。某、巨大掲示板サイトだ。某?名前出ているのにか?
「確かにな。しかしこれは、信ぴょう性はあるのか?」
と、俺。彼は、
「俺、実はさ」
「おう」
「親父と確執があるんだよ」
「唐突だな」
───いくら何でも。唐突過ぎるだろ。
「いつだって、確執告白は唐突さ」
と彼。
「何言ってんの、ホント」
「俺ーずっとさ」
「話、聞けよ」
彼はトレンチコートのポケットに両手を突っ込み、空を見上げる。適度に雲が流れている。いつ着たんだ、トレンチコートは。
「飲食店経営に憧れていて」
「なんで電気屋?」
「ほら、継がないと」
「そんなの誰が決めたんだよ」
「親父?」
親父とはどこの家も勝手だな、と思った。子供の夢なんてお構いなし。俺だって、夢の一つくらいあったさ。親父が捕まって諦めたけどさ。確か俺の夢って…なんだっけ?
「やりたいことやればいいじゃん」
俺は考えることを放棄した。
「到流、手伝ってくれる?」
「俺、カレー出したことしかないけど」
「そこはいいんだ、親父が寝ている間に、電気屋を改装する」
「待てよ!親父は何日寝てるんだよ」
「毎日寝るだろ」
───待て待て、寝ている間に、ちょっとづつ改装ってこと?そんな無茶苦茶な。
彼の無茶ぶりは今に始まったことではないが。
「改装しちゃえば、親父も諦めると思うんだ」
「その前に、話し合えよ」
「話して何とかなるくらいなら、とっくに話している。確執はそういうものだろ?って、何してる」
「え、検索。《名・ス自》自分の意見を強く主張してゆずらないこと。またそこから起こる争い。Google先生」
「Google先生は今どき、流行らないぞ。時代はハッシュタグだからな!」
───言っていることは間違ってはいないが、タグで確執調べるのか?どうかしているぞ。
「で、主張は譲らないと」
と、俺。
「ああ。親父は禿電気。俺はフサフサ飲食店」
「それ、どういう、悪口?」
相変わらず、電波な発言をする彼に、俺も少し自分のことを話そうと思った。
「実は俺も親父と確執があってさ」
「奇遇だな」
そこは奇遇とか言わんだろ、とツッコミ入れたいのを抑えつつ、
「何で?」
と、彼。
「親父、法を犯して捕まった」
その言葉を聞いて、何かに思い当たった彼が口を噤んだ。
「辞めろって言ったよ、信念貫いたって無駄だって」
「うん」
「残された家族のことなんて考えていないんだ…ちきしょう」
俺は石を蹴る。
「痛っ」
跳ね返って脛に当たった。
「到流さ、親父さんは間違ってないよ」
「なんで!」
家族は犯罪者の身内のレッテル貼られて、庭は占領され、壁にラッ〇ンみたいな絵を書かれていてもか?俺はダ・ウィンチが好きなのに!
「だって、到流の父さんは情熱を守りたかったんだろ?みんなのやる気を」
この国の法律が変わらない限り、親父は犯罪者のままだ。それでもか?
「間違ってるのは父さんじゃないだろ」
「寝ている間に、店を改装しようとしている、あんただな」
「そ、それは、否定はしないが」
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