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情熱が消えた日
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「到流くん!」
と、そこへ副社長が、店から飛び出してきた。
「ああ。皇さん」
「今、タレコミがあった」
スマホの画面を見せられる。モザイクチャンネルだ。親父を売った奴が、分かったと言うのか?しかし、分かったところで、親父は出て来られない。それに、あの時逢いに行かなかった。来なくなった手紙。親父はもしかしたら、もう…。
海沿いの選挙用の、のぼりを見つめる。明日決まる総理戦。目玉は”レビュー禁止法を撤回”。しかし、国で一度決まったことが撤回されることなんて、稀だ。もし勝ったら、親父は帰って来られるのだろうか。そしたら、俺はなんて言えばいい?
困った顔をして俯いていると、隣から、
「嘘だろ…」
という声が。なんだろうとスマホを覗き込むと、
「犯人、俺の親父かよ」
と、文雄。俺の親父を売ったのは、電気屋の…。でも、何故?
ショックを受けていたはずの彼の目が、キラキラした。
「到流、チャンスだ」
と。
「なにが」
「俺と飲食店をやるチャンスだよ。親父は、到流に罪悪感を持っているはず。脅して改装しよう」
「あんた、ちょっと、発想が怖いな」
「今さらだろ? 俺と恋人になり、まずは俺の奇病を治してくれ」
「それは構わないが」
俺は冷めているので、恋愛は別にしなくてもいい。
「そうと決まったら、親父のとこに行こう」
「ああ」
理由くらいは聞きたいと思った。理由はさ。
しかし、ついてみたら予想外の展開に。
───何故に?
「本気で言っているのか?文雄」
「ああ、本気だぜ、親父」
彼の父は、眉を顰めた。俺も、眉を顰める。
───そんな話し、しに来たのか?
彼は電気屋に着くなり、
『俺たち結婚します』
と宣言した。ゼロ日婚。流行っているのか?俺は構わないが、唐突過ぎる。
「で、親父、俺の伴侶の親父を売ったのか?」
どうやら、本題は忘れてはいなかったようだ。彼の親父は、青ざめる。苦しそうな顔をして、横を向いた。
「理由、聞かせていただけませんかね」
と俺は、極めて丁寧に詰め寄る。
「あれは…あいつが悪いんだよ!」
まさか、親父はこの店に酷評でもしたというのだろうか?
酷評とは、《名・ス他》手きびしい批評をすること。その批評。
───電気屋にか?
自分の考えにツッコミを入れる。
「もう、十年も好きだと言ってるのに、やらしてくれないから」
待て、何年好きだと言おうがやらせないだろう?
「だから、俺言ったんだよ」
彼は吐き出すように。
「ピンクのスケスケおパンティ、履いてくれって!」
───どういう状況?
「そしたらあいつさ!ブルーが良いっていうんだぜ?ありえないだろ」
文雄は、複雑な表情をして話を聞いている。
「おパンティはピンクだぞ!ピンク!」
文雄の親父は絶叫した。なんだかもう、どうでもいい気分になってきた。
「親父!」
何故か、文雄が唐突に親父をビンタする。
「目を覚ませ!」
「いだあッ。起きてるから」
涙目で頬を抑える、文雄の親父。
「だからさ、ピンクのスケスケおパンティを履かなきゃ、お前を売るって脅してやったんだ!だが、アイツは屈しなかった」
───親父、頑固だしな。
過去は変えられない。親父はこんなくだらないことで、監獄行きだ。
と、そこへ副社長が、店から飛び出してきた。
「ああ。皇さん」
「今、タレコミがあった」
スマホの画面を見せられる。モザイクチャンネルだ。親父を売った奴が、分かったと言うのか?しかし、分かったところで、親父は出て来られない。それに、あの時逢いに行かなかった。来なくなった手紙。親父はもしかしたら、もう…。
海沿いの選挙用の、のぼりを見つめる。明日決まる総理戦。目玉は”レビュー禁止法を撤回”。しかし、国で一度決まったことが撤回されることなんて、稀だ。もし勝ったら、親父は帰って来られるのだろうか。そしたら、俺はなんて言えばいい?
困った顔をして俯いていると、隣から、
「嘘だろ…」
という声が。なんだろうとスマホを覗き込むと、
「犯人、俺の親父かよ」
と、文雄。俺の親父を売ったのは、電気屋の…。でも、何故?
ショックを受けていたはずの彼の目が、キラキラした。
「到流、チャンスだ」
と。
「なにが」
「俺と飲食店をやるチャンスだよ。親父は、到流に罪悪感を持っているはず。脅して改装しよう」
「あんた、ちょっと、発想が怖いな」
「今さらだろ? 俺と恋人になり、まずは俺の奇病を治してくれ」
「それは構わないが」
俺は冷めているので、恋愛は別にしなくてもいい。
「そうと決まったら、親父のとこに行こう」
「ああ」
理由くらいは聞きたいと思った。理由はさ。
しかし、ついてみたら予想外の展開に。
───何故に?
「本気で言っているのか?文雄」
「ああ、本気だぜ、親父」
彼の父は、眉を顰めた。俺も、眉を顰める。
───そんな話し、しに来たのか?
彼は電気屋に着くなり、
『俺たち結婚します』
と宣言した。ゼロ日婚。流行っているのか?俺は構わないが、唐突過ぎる。
「で、親父、俺の伴侶の親父を売ったのか?」
どうやら、本題は忘れてはいなかったようだ。彼の親父は、青ざめる。苦しそうな顔をして、横を向いた。
「理由、聞かせていただけませんかね」
と俺は、極めて丁寧に詰め寄る。
「あれは…あいつが悪いんだよ!」
まさか、親父はこの店に酷評でもしたというのだろうか?
酷評とは、《名・ス他》手きびしい批評をすること。その批評。
───電気屋にか?
自分の考えにツッコミを入れる。
「もう、十年も好きだと言ってるのに、やらしてくれないから」
待て、何年好きだと言おうがやらせないだろう?
「だから、俺言ったんだよ」
彼は吐き出すように。
「ピンクのスケスケおパンティ、履いてくれって!」
───どういう状況?
「そしたらあいつさ!ブルーが良いっていうんだぜ?ありえないだろ」
文雄は、複雑な表情をして話を聞いている。
「おパンティはピンクだぞ!ピンク!」
文雄の親父は絶叫した。なんだかもう、どうでもいい気分になってきた。
「親父!」
何故か、文雄が唐突に親父をビンタする。
「目を覚ませ!」
「いだあッ。起きてるから」
涙目で頬を抑える、文雄の親父。
「だからさ、ピンクのスケスケおパンティを履かなきゃ、お前を売るって脅してやったんだ!だが、アイツは屈しなかった」
───親父、頑固だしな。
過去は変えられない。親父はこんなくだらないことで、監獄行きだ。
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