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────2話*俺のものでしょ?
14・自然な彼と不自然な恋人
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****♡Side・電車
電車は片腕で頬杖をつき、塩田と皇副社長を眺めていた。
皇は塩田に手を伸ばすと、その髪に触れる。いつ見ても自然な二人は、自分よりも恋人らしく見えて、嫉妬してしまいそうだ。
「サラサラの艶々」
指の隙間からするすると滑り落ちる塩田の髪に、そう感想を漏らす皇。
「紀夫が毎晩、シャンプーしてくれるんだ」
”どうだ、良いだろ? 羨ましいだろ?”と言う表情をする塩田に、
「なんだ、殿様扱いか」
と、面白くなさそうな反応をする皇。
塩田は、ムッとした。
「誰が殿様だ。お前じゃあるまいし。恋人の営みだ」
一部言葉が間違っているが”可愛いな、塩田は”と思っていると、
「紀夫は上手くて、気持ちいぞ」
と彼が続けるので、二人の会話を聞いていた唯野が再びコーヒーを吹いた。
「課長! いい加減にしてください」
コーヒーを被った板井が、怒っている。
「塩田が真昼間から、卑猥なこと言うからだろ?」
”俺は悪くない”と唯野は言い訳をした。二人のやり取りを聞いていた皇が、肩で笑っている。塩田は”なんのことだ?”と言う表情をして電車を見たが、知らないふりをして肩を竦めた。
そして、
「塩田」
不思議そうな表情を浮かべる塩田の注意を自分へ向けると、
「なんだ?」
「ちょっと休憩行かない?」
と電車は彼を休憩室に連れ出すのだった。
**
「どうかしたのか?」
休憩室に先客はいなかった。電車がソファーに腰かけると、心配そうに見下ろす彼。
「ううん」
何でもないよと首を横に振ると、彼に向けて両腕を伸ばす。
「なんだ? 抱っこか?」
「無理でしょ! 誰もいないし、お膝抱っこしようよ」
電車は塩田が恋人らしくイチャイチャしたいのではないかと思い、提案するが。
「……」
彼は顎に手をやり、何かを思案しているようだ。
──あ、お膝抱っこって意味わからなかったかな?
それとも、人前でイチャイチャしたかっただけ?
手のやり場に困り下ろそうかとかと考えていると、彼は電車の隣に腰かけ膝をポンポンと叩き、
「さあ、来い!」
と言った。
偉く男らしさを感じるが電車はして欲しいのではなく、したかったのだ。どうやら塩田は勘違いをし、悩んでいたらしい。
「違う」
「違う? これじゃないのか?」
彼は再び顎に手をやり唸った。
そんな彼の腕を掴むと、
「塩田がここに座るの」
と腰を引き寄せた。
電車はそのまま自分の膝の上に彼を座らせようとしたのだが、思ったよりも力が強かったらしく、押し倒されたような態勢になってしまう。
「塩田?」
彼は電車の顔の横に両手をつき、じっとこちらを見下ろしている。
「え……」
彼は驚く電車に構わずスッと瞳を閉じると、そっと口づけたのだった。
電車は片腕で頬杖をつき、塩田と皇副社長を眺めていた。
皇は塩田に手を伸ばすと、その髪に触れる。いつ見ても自然な二人は、自分よりも恋人らしく見えて、嫉妬してしまいそうだ。
「サラサラの艶々」
指の隙間からするすると滑り落ちる塩田の髪に、そう感想を漏らす皇。
「紀夫が毎晩、シャンプーしてくれるんだ」
”どうだ、良いだろ? 羨ましいだろ?”と言う表情をする塩田に、
「なんだ、殿様扱いか」
と、面白くなさそうな反応をする皇。
塩田は、ムッとした。
「誰が殿様だ。お前じゃあるまいし。恋人の営みだ」
一部言葉が間違っているが”可愛いな、塩田は”と思っていると、
「紀夫は上手くて、気持ちいぞ」
と彼が続けるので、二人の会話を聞いていた唯野が再びコーヒーを吹いた。
「課長! いい加減にしてください」
コーヒーを被った板井が、怒っている。
「塩田が真昼間から、卑猥なこと言うからだろ?」
”俺は悪くない”と唯野は言い訳をした。二人のやり取りを聞いていた皇が、肩で笑っている。塩田は”なんのことだ?”と言う表情をして電車を見たが、知らないふりをして肩を竦めた。
そして、
「塩田」
不思議そうな表情を浮かべる塩田の注意を自分へ向けると、
「なんだ?」
「ちょっと休憩行かない?」
と電車は彼を休憩室に連れ出すのだった。
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「どうかしたのか?」
休憩室に先客はいなかった。電車がソファーに腰かけると、心配そうに見下ろす彼。
「ううん」
何でもないよと首を横に振ると、彼に向けて両腕を伸ばす。
「なんだ? 抱っこか?」
「無理でしょ! 誰もいないし、お膝抱っこしようよ」
電車は塩田が恋人らしくイチャイチャしたいのではないかと思い、提案するが。
「……」
彼は顎に手をやり、何かを思案しているようだ。
──あ、お膝抱っこって意味わからなかったかな?
それとも、人前でイチャイチャしたかっただけ?
手のやり場に困り下ろそうかとかと考えていると、彼は電車の隣に腰かけ膝をポンポンと叩き、
「さあ、来い!」
と言った。
偉く男らしさを感じるが電車はして欲しいのではなく、したかったのだ。どうやら塩田は勘違いをし、悩んでいたらしい。
「違う」
「違う? これじゃないのか?」
彼は再び顎に手をやり唸った。
そんな彼の腕を掴むと、
「塩田がここに座るの」
と腰を引き寄せた。
電車はそのまま自分の膝の上に彼を座らせようとしたのだが、思ったよりも力が強かったらしく、押し倒されたような態勢になってしまう。
「塩田?」
彼は電車の顔の横に両手をつき、じっとこちらを見下ろしている。
「え……」
彼は驚く電車に構わずスッと瞳を閉じると、そっと口づけたのだった。
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