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────2話*俺のものでしょ?

18・塩田を怒らせ、電車困惑

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****♡Side・電車

「どした?」
 あーんをしてくれた彼を電車でんまがじっと見つめていると、そう問われる。
「ほんと、塩田変わったよね」
「は?」

──以前だったら、飲みに誘っても断られたはずだし、自然にあーんなんてしなかったはず。まあ、会社ではあれだし。

 電車は頬杖をつくと、彼の髪に手を伸ばそうとして固まる。彼が不安そうに瞳を揺らしていたからだ。今にも泣き出しそうな顔で。
 今まで一度だってそんな顔を見たことのなかった電車は、困惑した。何か、彼を傷つけることをしてしまったのだろうかと。
「塩田?」
「なんでお前までそんなこと言うんだよ」
 立ち上がろうとする彼の腕をとっさに掴む。捕まえておかないと、どっかにいっちゃいそうで怖くなる。もしその行き先が、皇のところだったら?
「恋人らしくなりたいって、思ってるだけなのに」
 塩田は方向性がおかしいが、頑張っていることは電車もよく理解していた。度を超えているため、不自然すぎることも。
「わかってるよ」
 電車は彼を慰めるように、胸に引き寄せる。

──彼が頑張っているのは、俺に恋人らしいことをしてあげたいから。
 努力するなと言うのは酷だ。
 変わるなということも、きっと塩田を傷つける。
 でも、頑張らなくていい。そのまま自然でいて欲しい。
 それはわがままなのかな?

「そんなに俺たちは不自然なのか?」
と、塩田。
「誰かに何か言われたの?」
 なんでも話してほしいと願っているくせに、きっと自分は頼りないのだ。彼を不安にさせ、悩みも打ち明けさせることもできない。
「板井に”副社長とのほうが恋人っぽい”って」

──あの野郎! 覚えてろよ。
 塩田に余計なこと言いやがって。
 はあ……でも、俺だってそう感じるんだからそりゃそうだよな。

「お前のノリが悪いからいけないんだ」
 どうやら塩田の怒りの矛先は、こちらに向かっている。
「ちょ……、待ってよ、塩田」
「俺が頑張ってるのに」
「いや、でも……会社で膝枕はちょっと……」
「外でキスする癖に」
 ぎゅっと抱きつく塩田は可愛いが、恨み言にたじろぐ電車。
「そもそも、塩田はイチャイチャしたいのか? 会社で」
「愚問だ」

──それどっちの意味なんだよ!
 こんなとき、できる男はなんて返すものなんだ?

 電車は心の中でため息をつくと、
「俺は会社より、家でイチャイチャしたいんだけどな」
と彼の耳元で囁く。
 しかし、それは逆効果だった。
「そんなこと言って、ちっともしないくせに」
「え」
 一瞬、何について言われているのかわからなかったのだが。
「毎日しようって言っても、もっとしようって言っても断るくせに」
 塩田の身体を気遣っているのが、どうやら仇となったようで。
「会社では絶倫って噂のお前が、聞いてあきれるな」
 火に油を注いでしまったようだ。

──誰だよ! そんな噂バラまいてるの!!!!
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