上 下
73 / 214
────3話*俺のものだから

0・苦情係の日常

しおりを挟む
****♡Side・課長(唯野)

「お前はそうやってビービー、ビービー泣いてりゃいいと思ってるんだろ!」
「うるさいな! 毎度毎度、俺の塩田に勝手に触りやがって!」
 ここは苦情係である。主に悪質なクレーマーのお相手をする部署だ。
「はあ? 俺様のほうがよっぽど塩田の恋人に見えるだろうが」
「塩田と付き合っているのは俺なんだよ!」
 決して社員同士が揉める場所ではない。
「へえ。誰に聞いたって俺様のほうが有利だな。お前は彼女がいるってもっぱら噂が立ってるしな」
「あんたは婚約者がいるだろうが!」
 何度も言うが、ここは苦情係だ。

「おい。塩田なんとかしろよ。電車《でんま》と副社長が揉めてるだろうが」
 渦中の男は最強塩男と名高い【塩田以往】。チラッと二人に視線を移しただけで、
「知らん」
ときたもんだ。
「おい、皇いる?」
と、そこへ唯野の同期の総括部長黒岩が顔を出す。
 苦情係はとても小さな部署であり商品部の奥へ設置されており、平社員三人と課長一人で回している。
 なのに何故か、次から次へと管理職のやつらが顔を出す変わった部署でもあった。社長を筆頭に、副社長皇。商品部の部長、総括部長黒岩などがやってくる。大抵は塩田に用があるのだが……。最近少し傾向が変わってきているようで。
 唯野は先日の黒岩との会話を思い出し、頭痛がしたのだった。

**

『俺、皇とヤりたいんだよな』
『ぶッ』
 黒岩の突然の発言に、唯野はコーヒーを吹いた。
『お前、とうとうイかれたのか?』
『俺はいたって真面目だ』
 どうやら真面目に頭がイかれたようだ。どう考えても、ネジの二、三本はぶっ飛んだ発言である。相手はあの“キラキラ俺様副社長”だ。
『仕事のしすぎじゃないのか? 有給ちっとも消化できないんだろ?』
『いや、真面目にアイツにキメたいんだって』

──言ってることが薬中のようだぞ、大丈夫か?

『何、トチ狂ったこといってるんだ。嫁さんが泣くぞ』
『でも、皇可愛いし。エロくね?』
 何を思ってそんなことを言うのか、まったく理解ができなかった。

──可愛い? 顔がか?
 確かに童顔だとは思うが。

『誘ってもちっとも受けてくれないし。かと思えば家まで送ってくれるしさ。俺に少しは気があるよな?』
 それは大いに勘違いと言うものだ。
『焦らしてんだよな、きっと』

──何を言ってるんだ! この男は。
 どう見ても、皇は塩田に夢中だ。
 なんだか、ややこしいことになってきたな。

『なあ、聞いてくれるか?』
 さっきから、話ならずっと聞いているはずだ。
『どうやら、社長も皇に気があるみたいなんだよな』
『は?』

 社長と副社長皇の噂は後を経たない。しかし、全て社長が黙らせたはずだった。何故また浮上したのか気になる。

──あの二人はそんな綺麗なものじゃない。
 本当は……。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

この世は理不尽だらけ(^^)v

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:1,278pt お気に入り:16

義兄弟で秘密のレッスン!

BL / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:152

貴方には渡しません!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:71pt お気に入り:999

落ちこぼれ治癒聖女は幼なじみの騎士団長に秘湯で溺愛される

恋愛 / 完結 24h.ポイント:994pt お気に入り:616

異世界に来ちゃったよ!?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:375

処理中です...