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────4話*水面下の戦い

7・起死回生? 彼らの計画

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****♡Side・副社長(皇)

 ここ数日、皇は副社長室に籠り業務をこなしていたため、塩田に会いに行っていなかった。逢いたい気持ちはある。彼の傍にいると、それだけで幸せを感じられるから。ちゃんと自分の意志を持っている、流されているだけじゃないと思えるから。
 皇は知らなかったのだ、自分の居ないところで何が行われているのか。苦情係の者たちからすると、皇が苦情係に顔を出さないことに違和感はあっても、今はそれが都合が良いということを。

「はあ。帰ろ」
 カバンにノートPCをしまい部屋を出る。恋人の彼女も今週は忙しく、こちらに顔を出すのは難しいと言っていた。別れたいはずの相手なのに、こんな時は一人が嫌だった。彼女なら何も言わず、何も聞かず世間話で流してくれるはず。

──そうだ。性格の相性は良かったんだ。

 何をしても口を出さず、二人の掲げた目標に向かい協力し合う。自分たちはそういうビジネスパートナーだった。皇が塩田に本気になるまでは。
 一途を貫くことが出来ないと落胆しても、社長と今のような関係になるまでは悩むことなどなかった。
 ”どうして自分はこうなんだろう”と皇は唇を噛みしめる。

「皇くん」
 急に声をかけられ、びくりと肩を揺らす。
「夕飯、一緒にどうかな?」
 今、まさに逢いたくない相手だった。夕飯だけでは済まないかもしれない。自分だって今まで清らかで真面目な交際をしていたとは決して言えないが、他の人を想いながら拒絶することも出来ないまま、欲望に従うのは辛いのだ。
 その時はいい。後から襲ってくる罪悪感と後悔はどうにもならない。相手が社長でなければ拒否もできるのに、と。
「今日はその……」
 食事くらいなら断れるだろうと思ったが、
「食事だけ。何もしないよ」
 先手を打たれ、とっさに言葉を失う。心を読まれているのではないかと思ったからだ。

 どうしようか迷っていると、
「帰るよ、副社長どへたくそ
と、失礼極まりない言葉が背後より投げかけられた。
「今日は三人で吞み会って約束しただろ」
 振り返れば、電車でんまと塩田が立っている。

──そんな約束した覚えはないが。

「俺たちの不満聞いてくれるって言ってたじゃないか」
 電車がそう言いながら、目だけで”合わせろと”合図しているように感じた。
「ああ。そうだったな。忙しくて忘れてた」
 苦笑いし、塩田に視線を移すと偉く真剣な目をしてこちらを見ている。なんだろう、と気になるが今は聞けない。
「すみません、社長。今日は先約が」
 渡りに船と思い、皇は社長に会釈する。
 社長は何か言いたげだったが、二人の手前、
「しょうがないね。じゃあまた、後日」
と余裕の笑みを浮かべ、片手を挙げたのだった。
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