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────1話*俺のものになってよ

10・愛しい彼との情事【R】

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****Side■塩田

「塩田」
「ん……はあッ……」
 くぷぷッと彼自身を蕾に挿入され、快感が塩田を支配していく。
「また声我慢してるの?」
 塩田に覆いかぶさった電車が耳元で優しく問う。
「出していいのに」
「んッ……耳元で喋るなッ」

 もう自分は分かっている。
 彼との行為で何故自分がこんな風になってしまうのかを。
 皇には嫌悪を感じ、唯野に恐怖を感じ、企画部の奴らには気持ち悪さを感じた。
 彼らと電車との違いはたった一つ。

 彼は塩田の髪に手を差し入れると、親指の腹で耳を撫でた。
「やッ……」
 塩田の背中を何かが駆け抜け、身を捩る。
「塩田、耳弱いよね」
 優しい声、優しい瞳。
 そんな目で見つめないで欲しい。

──頭……おかしくなるッ。
 可愛い顔しやがって。

 彼がカプリと塩田の耳を噛む。
 塩田は小さく声を漏らした。
「やめ……」
「なんで?」
 彼自身が蕾をゆっくりと出入ではいりするのを感じながら、ぎゅっと電車にしがみつく。どうしてこんなに自分ばかり余裕がないのだろうと思いながら。
 形を持つということは少なからずも興奮しているはずなのに、彼は余裕だ。
 自分ばかりが夢中なのだろうか?
 そんなことを思ってしまう。

「電車……」
「うん?」
「俺の中、気持ちいい?」
 何を聞いているのだろう自分は、と思った。
 しかし彼からは、
「何いってるの、当たり前でしょ」
という返答。
 安心した塩田は、
「そっか」
と小さく笑う。
 すると彼が驚いた顔をした。

 どうしたのかと思っていると、電車は手で口元を抑えた。頬を染めて。
「その顔は反則だから」
「は?」
 相変わらず何を言っているのか分からないなと思っていると、
「可愛すぎ」
 身に覚えのないことを言われた。
 だが何のことなのかわからない。
 仕方なしに不思議そうに彼を見つめていると、そっと口づけされる。

「塩田の笑顔は、破壊力半端ない」
「何言ってんだ」
「でも、俺以外の前ではダメだよ」
 心地よく甘い独占欲に、酔ってしまいそうだ。
「好きだよ塩田」
「ん……俺も」
 ニコッと微笑んだ彼に、強く腕を引かれて態勢を変えられる。

 電車の足を跨ぐ形になり、
「対面騎乗位でしようよ」
と言われた。
 初めての時は自分で腰をおろせと言われ、恐かったことを思い出す。
 今回は繋がったまま。
 恐くはないし、痛くもない。
 塩田は電車の首に自分の腕を巻き付けると、彼の肩に額を寄せる。 
 背中を優しく撫でられ、奥をきゅっと締め付けてしまう。
「ん」
「いっぱい、ぎゅってしててね」
と彼。
 電車からのおねだりは嫌いじゃない。
 しかし……。
「余裕があったらな」
 塩田には余裕がなかったのだった。
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