39 / 214
────1話*俺のものになってよ
12・彼女と電車の関係とは?
しおりを挟む
****Side■塩田
「どこで会うんだ?」
翌日。
起きるなり気が重かった。
恋人となる予定の相手の彼女から品定めされるのだ。
誰だって気が重くなるだろう。
「会社の近くのレストラン」
と電車。
「水かけられたりするんじゃないのか?」
電車は塩田の言葉にぷっと吹き出す。
「ドラマの見過ぎだよ」
塩田はあまりドラマを見たことがなかったが、トレンディドラマの定番と言えば、これだろうと思っていた。
「どんな人?」
「うーん……」
塩田が着替えるのを眺めながら電車が唸る。
「普通の子だよ」
悩んでの答えがそれかよと思いながら、上着を羽織り鏡を覗き込む。
「何、そんな見つめて」
鏡越しに電車と目が合う。電車は何も言わずに傍まで歩いてくると、塩田を後ろから抱きしめた。
「なんだよ」
「好き……」
彼の腕が少し震えていて、思わず身をよじり電車に目を向ける。
「どうした?」
と問うが、
「なんでもないよ」
という返答。
お付き合いをしたことのない塩田には、彼がなにを不安に思い懸念しているのか、全く想像がつかなかった。
こんな時、気が利いた一言でも言えたらいいのにと思うばかりだ。
待ち合わせの場所はホテル内のレストラン。
サラリーマンなどがしょっちゅう来るようなところではなく、普通の子と言っていた相手はどう見ても普通ではなかった。
──これは一体どういうことだ?
電車の家庭の事情については今まで聞いたことがない。
彼女は大学時代から付き合っているとしか聞いてはいなかった。その為、普通の子と言われ、近場のOLなのだろうかと想像もしたが、想像とはまったく違っている。
待ち合わせ先に一足先についていた美女は、不機嫌そうに塩田を見つめている。彼女の身なりからの印象はよい家柄、もしくは稼ぎの良い者。
「ねえ」
電車が彼女の声にびくりと肩を揺らし、ティーカップをテーブルに置く。
「紀夫、あなたの趣味にとやかく言う気はないけど……」
──紀夫?
恋人だったならおかしくはないが。
「本気なの?」
「うん」
「はあ……」
彼女は肩を竦め立ち上がり、
「パパにはあなたから言って頂戴ね」
そう言い残し去っていった。
塩田はため息をつくとテーブルに片肘をつき顎を乗せる。
「電車、どういうことか説明しろ」
最小限の会話は三十分ほどで終了。どちらかと言うと間のほうが長かったような気も。
「ん、うん」
沈黙の長い別れ話というのはあるのかもしれない。
しかし何かが想像とは違っていた。
本当に恋人だったのだろうか?
どちらかというと、あまり顔を合わせない許嫁のような空気を感じたのである。
「どこで会うんだ?」
翌日。
起きるなり気が重かった。
恋人となる予定の相手の彼女から品定めされるのだ。
誰だって気が重くなるだろう。
「会社の近くのレストラン」
と電車。
「水かけられたりするんじゃないのか?」
電車は塩田の言葉にぷっと吹き出す。
「ドラマの見過ぎだよ」
塩田はあまりドラマを見たことがなかったが、トレンディドラマの定番と言えば、これだろうと思っていた。
「どんな人?」
「うーん……」
塩田が着替えるのを眺めながら電車が唸る。
「普通の子だよ」
悩んでの答えがそれかよと思いながら、上着を羽織り鏡を覗き込む。
「何、そんな見つめて」
鏡越しに電車と目が合う。電車は何も言わずに傍まで歩いてくると、塩田を後ろから抱きしめた。
「なんだよ」
「好き……」
彼の腕が少し震えていて、思わず身をよじり電車に目を向ける。
「どうした?」
と問うが、
「なんでもないよ」
という返答。
お付き合いをしたことのない塩田には、彼がなにを不安に思い懸念しているのか、全く想像がつかなかった。
こんな時、気が利いた一言でも言えたらいいのにと思うばかりだ。
待ち合わせの場所はホテル内のレストラン。
サラリーマンなどがしょっちゅう来るようなところではなく、普通の子と言っていた相手はどう見ても普通ではなかった。
──これは一体どういうことだ?
電車の家庭の事情については今まで聞いたことがない。
彼女は大学時代から付き合っているとしか聞いてはいなかった。その為、普通の子と言われ、近場のOLなのだろうかと想像もしたが、想像とはまったく違っている。
待ち合わせ先に一足先についていた美女は、不機嫌そうに塩田を見つめている。彼女の身なりからの印象はよい家柄、もしくは稼ぎの良い者。
「ねえ」
電車が彼女の声にびくりと肩を揺らし、ティーカップをテーブルに置く。
「紀夫、あなたの趣味にとやかく言う気はないけど……」
──紀夫?
恋人だったならおかしくはないが。
「本気なの?」
「うん」
「はあ……」
彼女は肩を竦め立ち上がり、
「パパにはあなたから言って頂戴ね」
そう言い残し去っていった。
塩田はため息をつくとテーブルに片肘をつき顎を乗せる。
「電車、どういうことか説明しろ」
最小限の会話は三十分ほどで終了。どちらかと言うと間のほうが長かったような気も。
「ん、うん」
沈黙の長い別れ話というのはあるのかもしれない。
しかし何かが想像とは違っていた。
本当に恋人だったのだろうか?
どちらかというと、あまり顔を合わせない許嫁のような空気を感じたのである。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
14
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる