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────6話*狂いだした歯車と動き出す運命

9・泣いている君を【R】

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****♡Side・電車でんま(同僚・恋人)

「ねえ、塩田」
 マンションに着くといつも通り、先に風呂へ向かった。
 湯船に浸かりながら彼の話を聞き終えた電車でんまは、塩田の頬を撫でながら彼に語り掛ける。
「塩田がどんなに課長の気持ちを否定しても、なかったことにはならないんだよ?」
「わかってる」
「課長が塩田を好きじゃなかったことにはならない」
「わかってるよ。じゃあ、紀夫は板井が傷ついても良いって言うのか?」
 電車は、眉を寄せハラハラと涙を零す彼の顎を引き寄せると口づけた。

「はあッ……逆上せる」
 嫌がるどころか、電車にしがみついてさらにキスを強請る彼。
 言っていることとやっていることが滅茶苦茶だ。
「でよう」
 もっとと欲しがる彼の腕を掴むと、既に力が入らないようだった。
「ケガするから、頑張って歩こう?」
「ああ」

「板井はきっと大丈夫だよ」
 彼の髪にドライヤーをあてながらそういうと、
「何を思ってそんなことを言うんだ?」
と塩田に問われる。
「課長が塩田に好きだと言ったのは、自分の気持ちを整理したかったからでしょう? まあ、板井が不安がっているからそうしたかったのだと思う」
「自分勝手だな」
 不満そうな彼。
「人間なんて、みんなそんなものなんだよ?」
 ”俺だってそうだったでしょう?”と続けると、彼は黙った。
「俺は特別じゃないんだよ? 俺を特別にしてくれたのは、塩田なの」
 ドライヤーを止め、彼のサラサラの黒髪に口づける。

 真っすぐで揺らぎない彼が好きだ。
 少し言葉は塩だが、いつだって気持ちに嘘をつかない。
 自分を偽らないから、信用できる。 

「ベッド行こうよ、塩田を抱きたい」
「!」
「泣いてる塩田は、可愛い」
「トチ狂ったこと言うなよ」
 電車は塩田の向かい側に回り、腰をかがめて彼に口づけた。
「んんッ……」
 腰に手を回し、ソファーから彼を引き起こせば既にその気になっているのが分かる。
「良い反応」
と耳元で囁けば、
「あんなこと言われたら、その気になるだろ」
と文句を言われた。

──塩田らしくて可愛いけれどね。

 後ろから抱きしめ彼のうなじに唇を寄せる。
 すると彼は、
「あッ……」
と思わず甘い声を漏らした。

 そういえば二人きりは久々だなと思いながら電車は、彼の太ももに手を伸ばす。内ももを撫でながら首筋に舌を這わせれば、塩田が良い反応をした。
「んん……」
 身を捩る彼のシャツの中に手を忍ばせ、胸の突起を人差し指で優しく転がす。
「紀夫……や……」
「何が嫌? こっちはもう、こんなだよ? 触ってくれなきゃ嫌ってこと?」
「お前……意地悪ッ」
 涙目で睨みつける彼の唇を追い、内ももを撫でていた手で彼自身をさする。もう充分形を持っている彼自身がびくびくしていた。

「可愛い」
「後ろからじゃ、嫌だ」
「じゃあ、こっち向いて」
 おずおずと反転する塩田の腰を引き寄せ唇を奪う。
 彼の下着を剥ぎ取りながら。
「んん……」
 何度も何度も口づけつつ、彼自身を扱きあげる。
 気持ちいいのか、塩田の瞳は虚ろ。
「塩田、舐めてあげるから足広げて」

 塩田はいつだって気取らない。羞恥は……感じたことあるのだろうか?
 一緒に寝っ転がっていた電車でんまは彼に覆いかぶさると、彼の両股りょうももの後ろに手を差し入れ、大きく開いた。
 流石に恥ずかしいのか、塩田は顔を背け、腕で覆う。
「ほんと綺麗なやらしい色」
「や……そっち?」
「先に美味しそうなこっちだよ」
「んんんッ……はあッ」
 電車は彼自身に指を絡めながら、最奥の蕾に舌を滑らせる。

 久しぶりだからか、いつもより感じているように見えた。
 胸を逸らせば、ツンっと立ち上がった胸の突起がいやらしい。
「紀夫……好き」
「俺も大好きだよ」

 塩田はかつて自分をレイプしようとした人間から『好き』だと告白された。好きだからなんでもして良いというのは間違いだ。
 その想いを聞くことで彼は、自分が懇意にしているものが傷つくことを恐れた。彼の涙は悲しみじゃない。くやしさなのだろうと思う。

──俺も同罪なのに。
 無理矢理塩田を自分のものにしようとした。
 副社長の策に乗って。

 あの時はチャンスだと思ったのだ。
 ずっと好きだった塩田を手に入れるチャンスだと。

「ん……ああッ」
 蕾を舐められて感じている彼が可愛い。
 鈴口にいっぱい透明な蜜を溜めて。
「いっぱいしようね、塩田」
 忘れさせてあげたい、何もかも。
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