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────6話*狂いだした歯車と動き出す運命
15・激情の行方【微R】
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****♡Side・板井(同僚)
正直、唯野から聞いた業務命令の内容は想像を絶するものであった。
非人道的といっても差し支えないとも言える。
それを”あの”塩田が引き受けたのは意外だった。
──塩田の世界の中心にいるのは電車だ。
仮に電車からやれと言われたところで塩田がやるとは思えないし、そもそも電車が承諾するとは思えない。
つまり塩田の意思が働いているということ。
自分がされたことをカミングアウトする以上に彼らへ業務命令の内容を明かすことの方がダメージが大きかったのか、先ほどから唯野は黙って項垂れている。
板井はそんな彼を眺めながら”唯野の忠犬”などと呼ばれている自分自身を滑稽に思った。
以前から唯野のことを信頼し慕っていた板井。
きっと何を知ってもそれは変わらなかったと思う。
変わるくらいの気持ちならば『人の良い面』しか見ていないということにもなるし、それでは自分に都合の良い上司像を慕っているだけと言っているようなものだから。
でも、その想いは彼には伝わっていなかったのだ。
仮に唯野が恋慕から板井に嫌われるのが怖くて口にできなかったのだったとしても。
──信頼されていなかったことが地味にキツイ。
きっとそんなつもりはないのだろうけれど。
誰だって好きな相手には嫌われたくないはずだ。
幻滅されるのも軽蔑されるのも辛いに違いない。
理論では理解できるがやはり納得していない自分がいる。
──いや、修二さんが悪いわけじゃない。
自分だって好きとは言わなかったじゃないか。
想いを告げていれば違った可能性だってあるのに。
それでも済んでしまったことに拘っている自分がいた。
この激情を一体どこにぶつけたら自分は救われるのだろう?
そんなことを思いながら唯野の傍らに膝をつく。
「修二さん」
思い切って、先に進むために声をかける。
「あ……」
顔を上げた彼は何か言おうとし、口を噤む。板井はその顎を掴み口づけた。
きっと何を言っても救われることはないのだろう。
どんなに言葉尽くしてもこの想いを昇華させることはできない。
理解はされても。
何故なら。
自分が求めているのは過去の改変であり、理解ではないから。
変えることができない過去に拘って、苦悩して、自分の感情に振り回されているに過ぎない。大人げないと思いながら、やめることが出来ない。
「ん……あッ……」
彼のシャツの中に手を差し入れ、わき腹を撫でれば上気した頬に潤んだ瞳。
「こ、ここでする?」
今から自分が板井に何をされるのか察した彼が頬を染め、問う。
彼に自分自身を穿てばこんな気持ちから解放されるのだろうか?
間違っていると思ったが、唯野は板井の激情の全てを受け止める気でいるように感じた。
「いえ。ベッドにいきましょう」
小さな優しさを絞り出して理性を保つ。
だがそんなものすぐに消えてしまうことも分かっていた。
薄っぺらな理性はすぐに手の中でクシャっと握りつぶされる。
それほどに今の板井には余裕がなかったのだ。
「んッ……はあッ」
何をしようとも彼は抵抗しなかった。
背面騎乗位で形を持った彼自身に指を絡める板井。
自分の中にある劣等感や焦燥、後悔をこんな形で発散しようとするのは間違っている。正しくないことを嫌と言うほど理解しているのに、それを彼にぶつける外なかった。
言葉にしなければ伝わらないとわかっていながら、周りの評価に甘んじた自分。
責められるべきは自分の方だろう。
だからこれは甘えでしかない。
それなのに……
「板井」
名前を呼ばれハッとして彼に視線を移すと”愛しい”とでもいうようにこちらを見つめていた。
「そんな、泣きだしそうな顔しないでくれよ」
ゆっくりと瞬きをし、頬に触れる。
愛だけで満足できたならどんなに良かっただろうか。
その感情の全てを自分に向けて欲しいなんて、どこまで自分は強欲なのだろう。
正直、唯野から聞いた業務命令の内容は想像を絶するものであった。
非人道的といっても差し支えないとも言える。
それを”あの”塩田が引き受けたのは意外だった。
──塩田の世界の中心にいるのは電車だ。
仮に電車からやれと言われたところで塩田がやるとは思えないし、そもそも電車が承諾するとは思えない。
つまり塩田の意思が働いているということ。
自分がされたことをカミングアウトする以上に彼らへ業務命令の内容を明かすことの方がダメージが大きかったのか、先ほどから唯野は黙って項垂れている。
板井はそんな彼を眺めながら”唯野の忠犬”などと呼ばれている自分自身を滑稽に思った。
以前から唯野のことを信頼し慕っていた板井。
きっと何を知ってもそれは変わらなかったと思う。
変わるくらいの気持ちならば『人の良い面』しか見ていないということにもなるし、それでは自分に都合の良い上司像を慕っているだけと言っているようなものだから。
でも、その想いは彼には伝わっていなかったのだ。
仮に唯野が恋慕から板井に嫌われるのが怖くて口にできなかったのだったとしても。
──信頼されていなかったことが地味にキツイ。
きっとそんなつもりはないのだろうけれど。
誰だって好きな相手には嫌われたくないはずだ。
幻滅されるのも軽蔑されるのも辛いに違いない。
理論では理解できるがやはり納得していない自分がいる。
──いや、修二さんが悪いわけじゃない。
自分だって好きとは言わなかったじゃないか。
想いを告げていれば違った可能性だってあるのに。
それでも済んでしまったことに拘っている自分がいた。
この激情を一体どこにぶつけたら自分は救われるのだろう?
そんなことを思いながら唯野の傍らに膝をつく。
「修二さん」
思い切って、先に進むために声をかける。
「あ……」
顔を上げた彼は何か言おうとし、口を噤む。板井はその顎を掴み口づけた。
きっと何を言っても救われることはないのだろう。
どんなに言葉尽くしてもこの想いを昇華させることはできない。
理解はされても。
何故なら。
自分が求めているのは過去の改変であり、理解ではないから。
変えることができない過去に拘って、苦悩して、自分の感情に振り回されているに過ぎない。大人げないと思いながら、やめることが出来ない。
「ん……あッ……」
彼のシャツの中に手を差し入れ、わき腹を撫でれば上気した頬に潤んだ瞳。
「こ、ここでする?」
今から自分が板井に何をされるのか察した彼が頬を染め、問う。
彼に自分自身を穿てばこんな気持ちから解放されるのだろうか?
間違っていると思ったが、唯野は板井の激情の全てを受け止める気でいるように感じた。
「いえ。ベッドにいきましょう」
小さな優しさを絞り出して理性を保つ。
だがそんなものすぐに消えてしまうことも分かっていた。
薄っぺらな理性はすぐに手の中でクシャっと握りつぶされる。
それほどに今の板井には余裕がなかったのだ。
「んッ……はあッ」
何をしようとも彼は抵抗しなかった。
背面騎乗位で形を持った彼自身に指を絡める板井。
自分の中にある劣等感や焦燥、後悔をこんな形で発散しようとするのは間違っている。正しくないことを嫌と言うほど理解しているのに、それを彼にぶつける外なかった。
言葉にしなければ伝わらないとわかっていながら、周りの評価に甘んじた自分。
責められるべきは自分の方だろう。
だからこれは甘えでしかない。
それなのに……
「板井」
名前を呼ばれハッとして彼に視線を移すと”愛しい”とでもいうようにこちらを見つめていた。
「そんな、泣きだしそうな顔しないでくれよ」
ゆっくりと瞬きをし、頬に触れる。
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その感情の全てを自分に向けて欲しいなんて、どこまで自分は強欲なのだろう。
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