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────7話*彼の導く選択
19・複雑な心【微R】
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****♡Side・電車(同僚・恋人)
風呂の中で何度もキスを強請る恋人。
電車はそんな塩田を可愛いなあと思いながらぎゅっと抱きしめる。
「皇は?」
「今日は企画部の残業につき合うから遅くなるって」
「よく働くな、あいつ」
「そうだね」
皇の都合を彼が電車に問うのは恋人の営みのお誘いの合図。
「夕飯はどうするって?」
「何か買ってきてくれるって。デパ地下で」
”食べたいものあるならメッセする?”と問えば、彼は大丈夫と首を横に振った。
恐らく皇ならば塩田の好みも電車の好みも把握しているはずだ。
世の中には二種の人間しかいない。それは無能か有能か。
人の行動とは家でしていること、プライベートで無意識に行っていることがそのまま社会でも出るものである。しかし会社や学校で学び、身についたことも自然とプライベートに生かされるものだ。
だからこそもともと有能な副社長である皇が二人と暮らしていて自然と好みを把握してしまうのは不思議ではない。
「任せておけばいっか」
「ん」
こくんと頷く塩田の腕を掴むと、
「じゃあ、そろそろあっち行こう。のぼせちゃう」
と声をかけて立ち上がる。
夕飯の心配は要らないが理性の方が限界を迎えていた。
身体をタオルで拭いベッドに乗り上げると、待ちきれないのか彼がぎゅっと抱き着いてくる。
電車は何度もその唇を求めながら、二人の間に熱を感じる彼自身に指を絡めた。
「もうこんなにしてるの」
「ダメなのかよ」
「ううん。可愛い」
「なんだそれ」
眉を寄せ、理解しがたいという表情をする彼。
「わからなくてもいいよ」
ニコッと微笑んで見せれば、もっとというようにキスを強請られる。
それに応えながらスピーカーのリモコンに片手を伸ばす。
流れ出すしっとりとしたピアノの旋律。少し気怠い女性の歌声。
「はあ……ッ」
のけぞる塩田の首筋に吸い付きながら、リモコンから放した手で彼の胸を撫でる。
「副社長、こういうのが好きなんだ?」
心を満たすような美しいメロディーに包まれながら彼にそう問えば、
「あいつは……えろっちいのが好き……なんだよ」
と切れ切れに答えをくれた。
「えろっちい?」
「そ」
音楽からはいやらしさは感じないが、三人でした時の皇の様子を思い浮かべた電車。
──そう言えば、副社長ってショッキングピンクのビキニ履いてたよなあ。
電車はトランクス派。塩田はボクサー派である。
あんな右から入れたら左からこぼれそうなものをよく履くなと思ったものだ。
「社長の趣味なのかな、あれ」
と電車が口にすると、
「いや、本人の好みだろ」
と塩田。
「そう言えば副社長とのデート、どこ行くの」
「知らん」
”今する話なのか?”と彼は電車の背中にしがみつきながら。
「こっち集中すると、すぐ達っちゃいそうだから」
「んん……」
根元から強く扱き上げると塩田は電車の肩に顔を埋め快感をやり過ごそうとする。
「紀夫」
「ん?」
「俺……紀夫ともどっか行きたい」
「うん」
「二人で」
こうなってしまって複雑な心境なのだろう。皇とデートをするなら電車ともすべきだと思っているのかもしれない。
責任を感じているのかも知れないし、済まないと思っているのかも知れない。
自分はそんなことを思う必要はないと思っている。
けれど彼の気持ちは大切にしたいし、一緒にどこかへ行きたいと思ってくれていることも素直に嬉しい。ただ、とても複雑な心境だ。
「何処行きたいの?」
「デートの定番と言えば海か遊園地だろ」
「俺たちインドア派なのに?」
無表情でジェットコースターに乗る塩田を思い浮かべ、なんだか笑ってしまう。
「インドアとかアウトドアとか関係ないだろ、別に俺たちが操作するわけじゃないんだし」
「捜査?」
”サスペンスドラマ?”と思いながら曖昧に頷くと、いまいちかみ合わないままデートをすることが決まった。話がかみ合わないのは今に始まったことではない。
それでもうまくいってきたのは、二人ともあまり細かいことを気にしないためだと思われる。結果的に良ければそれでいい。だから合うのだろうと電車は思っていた。
風呂の中で何度もキスを強請る恋人。
電車はそんな塩田を可愛いなあと思いながらぎゅっと抱きしめる。
「皇は?」
「今日は企画部の残業につき合うから遅くなるって」
「よく働くな、あいつ」
「そうだね」
皇の都合を彼が電車に問うのは恋人の営みのお誘いの合図。
「夕飯はどうするって?」
「何か買ってきてくれるって。デパ地下で」
”食べたいものあるならメッセする?”と問えば、彼は大丈夫と首を横に振った。
恐らく皇ならば塩田の好みも電車の好みも把握しているはずだ。
世の中には二種の人間しかいない。それは無能か有能か。
人の行動とは家でしていること、プライベートで無意識に行っていることがそのまま社会でも出るものである。しかし会社や学校で学び、身についたことも自然とプライベートに生かされるものだ。
だからこそもともと有能な副社長である皇が二人と暮らしていて自然と好みを把握してしまうのは不思議ではない。
「任せておけばいっか」
「ん」
こくんと頷く塩田の腕を掴むと、
「じゃあ、そろそろあっち行こう。のぼせちゃう」
と声をかけて立ち上がる。
夕飯の心配は要らないが理性の方が限界を迎えていた。
身体をタオルで拭いベッドに乗り上げると、待ちきれないのか彼がぎゅっと抱き着いてくる。
電車は何度もその唇を求めながら、二人の間に熱を感じる彼自身に指を絡めた。
「もうこんなにしてるの」
「ダメなのかよ」
「ううん。可愛い」
「なんだそれ」
眉を寄せ、理解しがたいという表情をする彼。
「わからなくてもいいよ」
ニコッと微笑んで見せれば、もっとというようにキスを強請られる。
それに応えながらスピーカーのリモコンに片手を伸ばす。
流れ出すしっとりとしたピアノの旋律。少し気怠い女性の歌声。
「はあ……ッ」
のけぞる塩田の首筋に吸い付きながら、リモコンから放した手で彼の胸を撫でる。
「副社長、こういうのが好きなんだ?」
心を満たすような美しいメロディーに包まれながら彼にそう問えば、
「あいつは……えろっちいのが好き……なんだよ」
と切れ切れに答えをくれた。
「えろっちい?」
「そ」
音楽からはいやらしさは感じないが、三人でした時の皇の様子を思い浮かべた電車。
──そう言えば、副社長ってショッキングピンクのビキニ履いてたよなあ。
電車はトランクス派。塩田はボクサー派である。
あんな右から入れたら左からこぼれそうなものをよく履くなと思ったものだ。
「社長の趣味なのかな、あれ」
と電車が口にすると、
「いや、本人の好みだろ」
と塩田。
「そう言えば副社長とのデート、どこ行くの」
「知らん」
”今する話なのか?”と彼は電車の背中にしがみつきながら。
「こっち集中すると、すぐ達っちゃいそうだから」
「んん……」
根元から強く扱き上げると塩田は電車の肩に顔を埋め快感をやり過ごそうとする。
「紀夫」
「ん?」
「俺……紀夫ともどっか行きたい」
「うん」
「二人で」
こうなってしまって複雑な心境なのだろう。皇とデートをするなら電車ともすべきだと思っているのかもしれない。
責任を感じているのかも知れないし、済まないと思っているのかも知れない。
自分はそんなことを思う必要はないと思っている。
けれど彼の気持ちは大切にしたいし、一緒にどこかへ行きたいと思ってくれていることも素直に嬉しい。ただ、とても複雑な心境だ。
「何処行きたいの?」
「デートの定番と言えば海か遊園地だろ」
「俺たちインドア派なのに?」
無表情でジェットコースターに乗る塩田を思い浮かべ、なんだか笑ってしまう。
「インドアとかアウトドアとか関係ないだろ、別に俺たちが操作するわけじゃないんだし」
「捜査?」
”サスペンスドラマ?”と思いながら曖昧に頷くと、いまいちかみ合わないままデートをすることが決まった。話がかみ合わないのは今に始まったことではない。
それでもうまくいってきたのは、二人ともあまり細かいことを気にしないためだと思われる。結果的に良ければそれでいい。だから合うのだろうと電車は思っていた。
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