R18【異・同性恋愛】『二人を繋ぐ宝物の日々』

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『二人を繋ぐ宝物の日々』

□奏の妹とは(5)【定着ハズキ男子】

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 ****side・夏海

「なにこれ、墨汁らしきものでちょろちょろっとごまかせばいいの?」
「んー?のぞみんにおまかせー」
 なんだかんだで希望通り掛け軸を描こうととする望はお人よしである。
「で、何かいてるの?」
「まずは、メインのカップル!」
「今回のテーマは何よ」
「芭蕉と弟子。出来てたって噂だし」
 まるで昨日、今日の話のように言う夏海に望が眉を寄せる。
「で、どっちが受け…」
 画面を覗き込んでギョッとした。

「ガチムチ弟子攻め♪」
 一応兄カップルをモデルにしているらしいがその面影もなければ形もなかった。
「師匠がいつも貞操を狙われる話だよ!」
「足腰弱ってそうな師匠の貞操を狙って行動を共にするなんて、ただのストーカーじゃないの!」
「なんでよー。宿場に着くたび”ああん!うふん”な展開とか」
「ちょ、ちょっと待って。今、宿場につくたびって言った?」
 望はとても嫌な予感がした。
「そう!旅物」
「夏海あんたまた外に出るの!?あんだけ室内にしろって言ったのに」
「日本海描いてね!」
「また難易度上げてきて…!」
 望は頭を抱える。

「ああ、待つ志摩や待つ志摩や…ん?三角関係だったのかな?」
「なんでよ」
「いやだって、待つ志摩」
「足腰弱った師匠を巡る三角関係なんて、保険金詐欺の匂いしかしないわよ!」
「じゃあ、ストーカーで」
 夏海は松の陰に志摩らしき男を描きはじめた。もちろん、ハズキは必須である。
「BLじゃなくてサスペンスじゃないのよ!」
「何言ってんの、のぞみん。BLっていうのは常に貞操を狙われるサスペンスよ!ヤるか!ヤられるか!」
「どんなよ…」

 ****

「ある日~♪森の中~♪腐女子に~出逢った~♪」
 たまにはまともな歌、唄ってみなさいよと言われ夏海は松尾芭蕉のことを考えながら歌を口ずさむ。器用だ。
「そんなところで腐女子はなにやってるのよ」
「腐女子さん~お待ちなさい♪ちょっと落し物♪」
 相変わらず押し付けられたタピオカドリンクを口に含みながら、望はルンルンで唄う夏海をシラーっと頬杖をつき眺めている。
「表紙が肌色のー♪大判どーうーじーんーしー♪」
「ブッ」
 望はタピオカを吹いた。

「なにその歌」
「森の腐女子」
「なにそれ、ガーリー系とか言うんじゃないわよね」
「何言ってんのよ、ぽつんと一軒家に住む腐女子の家に押しの同人誌を布教に行くところよ」
「随分山奥に住んでるんじゃない?」
「腐女子が都会に住んでると思ったら大間違いよ!」
 何故か夏海は威張っている。
 もっとまともな歌ないの?と望に言われ夏海はニヤッとする。嫌な予感しかしなかった。
「とっておきがあるよ!」

「唄ってみなさいよ」
「当てられるかなー?」
「当ててやるわよ」
 どんとこい!というように、夏海に向き直る。今日はなかなか乗り気である。
「腐女子だ♪×3 腐女子だ♪×4 プリティでキュアキュア二人は腐女子だー!」
「なにそれ、私腐女子じゃないんだけど」
 望は凄く嫌な顔をした。

「一難去ってまた一難ぶっちゃけ泥沼♪」
「凄い、イヤ」
「制服着てても二人は滅茶苦茶ガチムチ♪」
「何その組み合わせ!」
「お互いBL描き上げる度♪強く強くなれるううううう♪」
「なりたくない」
「ねえ?わかった?」
「わかりたくない」
 望は敗北した。

「一万年と二千年前から腐女子です♪」
「もう、好きにして」
 望はpcに向かい夏海にまともに取り合うことを諦めた。
「一千年過ぎた頃からもっと腐女子になった♪」
「どんだけ生きてんのよ」
「一万年と二千年後も腐女子です♪」
「あと、どれだけ生きるつもりなのよ。私はお先に失礼します」
「君萌えに出会ったその日から僕の心に同人誌が耐えな~い♪」
「夏海に出会った日から毎日がクレイジーよ」
 まったく、といって望はため息をつくのだった。

 ****

「ふ、ふ、ふ、ふふのふ~♪」
 夏海に頼まれ、せっせと松ノ木を書いていたら廊下から変な歌が聴こえて来た。もしかしなくてもお手洗いから帰る途中の夏海である。
「朝ーは寝床でBLだ♪楽しいな楽しいな♪」
 そりゃ、楽しいでしょうよ。
「腐女子は死なないー♪」
「ブッ」
 望は吹いた。
 何トチ狂ったこと言ってんの?!夏海あのこ。
「病気もなんにもない♪ふぅ♪」
 意気揚々と部屋に入ってくる夏海にネコ手パンチをお見舞いする。
「いたっ!」
「何ホラーな歌唄ってんのよ!お化けより怖いわ」
「えー!続きもあるのにい」

 頼んでもいないのに、隣に腰掛けながら続きを熱傷。
「よーるは、墓場でBLだ♪」
「家で読みなさいよ」
「楽しいな♪楽しいな♪」
「墓場とか、暗くて読めないじゃないのよ」
 まったく話を聞いていない。
「腐女子は学校も、試験もなんにもない♪ふぅ♪」
「ただのニートじゃないのよ!」
「そうともいう。でも、尊い同人活動があるから大丈夫」
 なにが大丈夫なんだか、なんにもだいじょばない。(大丈夫ではない)

「ちゃんと国民の義務を果たしなさいよ。労働の義務!」
「えー。お兄ちゃんに寄生するから大丈夫だもん」
「不憫な兄だな」
「お兄ちゃんが社長になった暁には、高給貰って、有給貰って、同人誌書くの」
「とんでもない野望ね」
 夏海は将来、これをやってのけるのだが。
「私は金持ち捕まえるわー」
 望は将来大里グループ社長の嫁である。
「えー、じゃあ夏海わたしと結婚すればいいじゃん」
 同性婚可能な時代という設定だ。
「いやよ!夏海と結婚したら、生涯アシスタントとしてこき使われそうだもん」
 それはあながち間違っていない。
「三食昼寝つけるからあ!」
「それ、ただのアシスタントじゃないのよ」
「バレたか」

 ****

「ねえねえ、のぞみん!」
「なによ?」
「お願いを簡単に聞いてもらえる歌を考えたんだけど」
「はあ?!」

 また頼みもしないのに唄い始める夏海はマイペースである。しかし今回は前置きがあるらしい。
「のぞみん、桃尻太郎と腐女子どっちがいい?」
「なにその、二択。どっちも嫌なんだけど」
 望は革靴で一日営業をした親父の靴下の臭いを嗅いだ時のような表情をする。
「えー!じゃあ、オーソドックスな腐女子バージョンで」
「頼んでないのに」
 望は額に手を充て頭痛しますポーズを決めた。

「腐女子さん、腐女子さん♪お腰につけた同人誌♪一部、私に下さいな」
「なんで腰につけてんのよ、そんなもの」
「ヤりましょう♪ヤりましょう♪これから同人即売会、ついて行くならヤりましょう♪」
「行かないわよ!」
「これから同人即売会♪」
「行かないって言ってるでしょ」
 夏海はしつこかった。

「もう、なんなのよ」
「プンスカしないでよー、のぞみん」
「いつもは一人で行くじゃない」
「だって今回はね”戦場の○ナルリスト”の同人即売会なんだもん。布教用に50冊欲しいの!」
「なにそれ」
 ”どんな話よ”と眉をしかめると

「その名の通り”戦場の彼らのア○ルのリストだよ”」
「なにその変態チックなやつ」
「決め台詞がね”アナルは無毛一たーーーーく!”って軍部の司令官がメガホンで」
「コメディなの?」
「どう見ても、ヒューマンドラマじゃん!」
「そんなヒューマンドラマ嫌!!!!」
「えー」
 そして今日も望はわけのわからない夏海の趣味につき合わされるのであった。

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