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1話『一つに繋がる糸と運命』
6 その経緯【微R】
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****♡side・聖
聖が久隆に恋心を抱いていると自覚したのは小学生の時。
久隆は片親なことでイジメに遭った。K学園初等部一年からのイジメが大々的に発覚する三年まで。父親に知られたくなかった久隆に黙っていて欲しいと言われ黙っていたことを聖は酷く後悔した。
久隆の兄は彼を溺愛していたため酷く責められ、今でも恨まれている。二度と久隆を誰にも傷つけさせないと自分自身に誓うと同時に、彼の特別でありたいと願った。
高校に上がると想いが止められなくなって久隆に想いを告げたが玉砕。想いのやり場がなくて音楽室でピアノを弾いていたら彼が驚いた顔をしてこちらを見ていた。
──俺がどれだけ本気なのか、きっとあの時知ったんだ
オーケーを貰った翌日半ば強引に身体を重ねた。
そうしなければ繋ぎ止められない気がして。
怖かったんだ。今だって怖い。
彼はどんなに抱いても感じているようには見えない。
ヤキモチを妬いて欲しい。
行かないでと縋って欲しい。
傍にいてと甘えられたい。
それなのに、彼は何も言わない。どんなに傍に居られなくても寂しそうな顔さえしない。それが自分の頑張りを肯定する行為であっても辛い。
──自分ばかり好きなのかな……。
俺じゃ駄目なのかな。
こんなに好きなのに。
俺はいつだって久隆の傍にいたい。
どこまで上を目指せば振り向いてくれる?
必要としてくれる?
聖は一人暮らしをしている自宅マンションのリビングにある黒いサイドボードに腰掛け、片膝を抱え脇にあるコンポから流れる音楽に耳を傾ける。
入っているのは久隆の好きな曲ばかりだ。
目を閉じ彼の姿を思い浮かべていたらチャイムが鳴った。時刻は二十一時を回っている。こんな時間に誰だろうとインタフォーンのカメラを覗く。
「!」
相手に驚いた聖は慌てて一階の入り口のロックを解除し、入るように告げると部屋を出て行った。ロビーのエレベーターに向かうために。
箱は静かに開いて、中からその人はゆっくりと出てきた。
愛しい愛しいその人が。
「久隆」
思わずその腕を掴むと胸に抱き寄せる。
「一人で来たのか?」
いくら近いとはいえ車で五分かかる。夜道を一人でここまで来たのだろうか? とても心配だった。
「ううん、送ってもらった」
「そっか、それなら良かった。部屋に行こう」
彼の手を引き部屋に連れ帰る。
早く抱き締めたい、そればかり考えていた。
「んんッ」
リビングのサイドボードに久隆を横抱きにして口づけを交わす。
「久隆がこんな時間に来るなんて、何かあったのか?」
名残惜しいと思いながらも唇を離す。
「父さん、再婚するんだって」
「え?」
「兄弟が出来るって」
むぎゅっと抱きつく彼の背中をなでる。不安そうに胸の中にいる彼は、父や兄に溺愛されていた。新しい兄弟に自分の居場所を奪われるかもしれないと怯えていたのだ。
「俺がいるよ」
「聖」
「もし辛かったら、ここで一緒に暮らそう」
ぎゅっと彼を抱き締めその髪に口付けた。彼はお兄ちゃん子だ、きっと兄の愛を奪われることを恐れているに違いない。
「大丈夫だよ」
「でも、聖は……」
寂しそうな彼の表情を初めて目にし、たまらなく愛しくなった。
「その時は全て投げ出して久隆の傍にいるから」
「ほんとに?」
不安げに見上げる彼を見つめ返す。
──可愛い!
凄く可愛い……たまらない。
「嘘なんて言わない。俺の全て、久隆に捧げるよ」
『ねえ、抱いて』
その切なくて甘い囁きに聖は従った。
もし、このまま彼が兄の愛を失ってしまったなら。そんな想いが胸を過ぎり、自分がイヤになる。彼を得られるチャンスなのでは? と思ってしまうのだ。
──久隆の心が欲しい。
全部自分だけのものにしたい。
決して離れないように。
いつもとは違う彼が自分の胸の中にいる。
「ふ……うんッ」
もっと乱れて感じて欲しい、そうは思うけれど彼はまだ性感が子供なのかもしれない。肌を撫で上げればそっと瞳をこちらに向ける。
優しくなでられるのが好きなようで。まるで子猫のようにいいこいいこされるのも好き。本人はプライドが高く子供扱いされるのを嫌がるが充分まだ子供で。そんな彼が愛しい。
「ああッ」
いつもより喘ぎ声を漏らす彼を優しく抱き締める。
「なあ、きもちいの?」
「うんッ」
これでも充分だと思っていた。感度の悪い自分を気にしていることも薄々知っているし、行為の最中の不安そうな顔ですら愛しい。
そう……彼があの子に会うまでは。
『あッ……やあんッ……そこ、だめぇ』
久隆があんな風に変わってしまうなんて思っていなかった。
『聖ッ……助けて……』
性欲を制御できなくなった久隆が自分に助けを求めてくるなんて思いもしなかったのに。
『もっと……欲しいのッ』
久隆は文字通り聖を虜にし、麻薬のように蝕んでいった。
だが聖は後悔しなかった。
彼を愛したこと、彼に溺れていったことを。
「聖ッ」
「ここにいるよ」
「ねえ、もっと愛して。俺だけを」
「愛してるよ」
聖は久隆に何度も口付けながら彼を犯し続けた。
聖が久隆に恋心を抱いていると自覚したのは小学生の時。
久隆は片親なことでイジメに遭った。K学園初等部一年からのイジメが大々的に発覚する三年まで。父親に知られたくなかった久隆に黙っていて欲しいと言われ黙っていたことを聖は酷く後悔した。
久隆の兄は彼を溺愛していたため酷く責められ、今でも恨まれている。二度と久隆を誰にも傷つけさせないと自分自身に誓うと同時に、彼の特別でありたいと願った。
高校に上がると想いが止められなくなって久隆に想いを告げたが玉砕。想いのやり場がなくて音楽室でピアノを弾いていたら彼が驚いた顔をしてこちらを見ていた。
──俺がどれだけ本気なのか、きっとあの時知ったんだ
オーケーを貰った翌日半ば強引に身体を重ねた。
そうしなければ繋ぎ止められない気がして。
怖かったんだ。今だって怖い。
彼はどんなに抱いても感じているようには見えない。
ヤキモチを妬いて欲しい。
行かないでと縋って欲しい。
傍にいてと甘えられたい。
それなのに、彼は何も言わない。どんなに傍に居られなくても寂しそうな顔さえしない。それが自分の頑張りを肯定する行為であっても辛い。
──自分ばかり好きなのかな……。
俺じゃ駄目なのかな。
こんなに好きなのに。
俺はいつだって久隆の傍にいたい。
どこまで上を目指せば振り向いてくれる?
必要としてくれる?
聖は一人暮らしをしている自宅マンションのリビングにある黒いサイドボードに腰掛け、片膝を抱え脇にあるコンポから流れる音楽に耳を傾ける。
入っているのは久隆の好きな曲ばかりだ。
目を閉じ彼の姿を思い浮かべていたらチャイムが鳴った。時刻は二十一時を回っている。こんな時間に誰だろうとインタフォーンのカメラを覗く。
「!」
相手に驚いた聖は慌てて一階の入り口のロックを解除し、入るように告げると部屋を出て行った。ロビーのエレベーターに向かうために。
箱は静かに開いて、中からその人はゆっくりと出てきた。
愛しい愛しいその人が。
「久隆」
思わずその腕を掴むと胸に抱き寄せる。
「一人で来たのか?」
いくら近いとはいえ車で五分かかる。夜道を一人でここまで来たのだろうか? とても心配だった。
「ううん、送ってもらった」
「そっか、それなら良かった。部屋に行こう」
彼の手を引き部屋に連れ帰る。
早く抱き締めたい、そればかり考えていた。
「んんッ」
リビングのサイドボードに久隆を横抱きにして口づけを交わす。
「久隆がこんな時間に来るなんて、何かあったのか?」
名残惜しいと思いながらも唇を離す。
「父さん、再婚するんだって」
「え?」
「兄弟が出来るって」
むぎゅっと抱きつく彼の背中をなでる。不安そうに胸の中にいる彼は、父や兄に溺愛されていた。新しい兄弟に自分の居場所を奪われるかもしれないと怯えていたのだ。
「俺がいるよ」
「聖」
「もし辛かったら、ここで一緒に暮らそう」
ぎゅっと彼を抱き締めその髪に口付けた。彼はお兄ちゃん子だ、きっと兄の愛を奪われることを恐れているに違いない。
「大丈夫だよ」
「でも、聖は……」
寂しそうな彼の表情を初めて目にし、たまらなく愛しくなった。
「その時は全て投げ出して久隆の傍にいるから」
「ほんとに?」
不安げに見上げる彼を見つめ返す。
──可愛い!
凄く可愛い……たまらない。
「嘘なんて言わない。俺の全て、久隆に捧げるよ」
『ねえ、抱いて』
その切なくて甘い囁きに聖は従った。
もし、このまま彼が兄の愛を失ってしまったなら。そんな想いが胸を過ぎり、自分がイヤになる。彼を得られるチャンスなのでは? と思ってしまうのだ。
──久隆の心が欲しい。
全部自分だけのものにしたい。
決して離れないように。
いつもとは違う彼が自分の胸の中にいる。
「ふ……うんッ」
もっと乱れて感じて欲しい、そうは思うけれど彼はまだ性感が子供なのかもしれない。肌を撫で上げればそっと瞳をこちらに向ける。
優しくなでられるのが好きなようで。まるで子猫のようにいいこいいこされるのも好き。本人はプライドが高く子供扱いされるのを嫌がるが充分まだ子供で。そんな彼が愛しい。
「ああッ」
いつもより喘ぎ声を漏らす彼を優しく抱き締める。
「なあ、きもちいの?」
「うんッ」
これでも充分だと思っていた。感度の悪い自分を気にしていることも薄々知っているし、行為の最中の不安そうな顔ですら愛しい。
そう……彼があの子に会うまでは。
『あッ……やあんッ……そこ、だめぇ』
久隆があんな風に変わってしまうなんて思っていなかった。
『聖ッ……助けて……』
性欲を制御できなくなった久隆が自分に助けを求めてくるなんて思いもしなかったのに。
『もっと……欲しいのッ』
久隆は文字通り聖を虜にし、麻薬のように蝕んでいった。
だが聖は後悔しなかった。
彼を愛したこと、彼に溺れていったことを。
「聖ッ」
「ここにいるよ」
「ねえ、もっと愛して。俺だけを」
「愛してるよ」
聖は久隆に何度も口付けながら彼を犯し続けた。
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