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2話 過去の綻び
5 意外な親子喧嘩と再会
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再び駅方面に歩き出そうとした戀は、文具屋から元の道に戻ろうとして立ち止まった。近くに小学校か中学校があるとあたりをつけていたが、遠くに小学生の集団と思しきものが見えたからである。
「戀くん?」
「行こうか」
恐らく近くにあるのは小学校。この位置からは確認できなかったが。
お昼になるにつれ、少しずつ気温があがっていくのを感じながら駅へ向かう。陽菜《はるな》には例の件を通報すべきとは言ったが、犯人が簡単に見つかるとは思えなかった。
「そう言えば、陽菜さんのお父さんはお兄さんに仕事を継いで欲しいと言っていたけれど」
顔も知らないスリよりはまだ情報のある兄の方が見つけらる確率は高い。戀はそのように思っていた。
「父は和菓子職人なの。兄は幼いころからそれを見ていて一時はデザインを提案するということではあるけれど、店を手伝っていたの」
余計な口出しをしたから彼女の父が怒ったのかと思ったら、そうではない。
「継がないことがわかったから仲違いを?」
「ううん」
彼女が左右に首を振ると、艶やかな髪がそれに合わせて揺れた。
「きっかけはインボイス制度」
インボイスとは販売先に対し税率と税額を正確に伝えるために、従来の区分記載請求書に必要事項を追記した請求書のことだ。それらをきちんとしないと仕入税額控除が受けられず適格な税金にならない。結果、税務署に多く税金を納めるはめになる。
「それで仕入れ先がちゃんと発行してくれず、店が潰れそうとかそういう?」
「そうじゃないの」
予想を立てて質問をしていた戀はそこで黙る。どうやら的外れな質問ばかりしていたようだ。
インボイス制度が導入されることは開始される前から騒がれていたことでもある。それのせいで多くの中小企業が影響を受け、個人商店なんかは存続の危機にさらされるということも言われていた。
だが戀にはいまいちピンとこなかったことが思い出される。
最近知ったことであるが。
消費税10%の商品の場合、自分たちは100円の買い物をするのに110円払うだろう。そのうち10円を税金だと思っているのが一般的だが、実はそうではないらしい。買い物をする時点で110円なのである。単に表示として消費税10円と書かれているに過ぎない。
消費税が導入されると同時に値上がりしただけの話なのだ。つまり商品は元から110円。そこから10円を消費税として納める可能性を示しているだけに過ぎない。
簡単に言えば、買い物をする側が消費税を必ず負担しているかのように見えるだけ。
「その制度の話から兄と父の考え方が違うことが分かって、兄は和菓子屋を継ぐことをやめてライターになろうとしたの」
「そうなんだ」
どうしてそれがライターになるきっかけとなったのか、戀には理解できなかったが。
SNSなどで常に情報を収集し真実について考えようとする若い世代と未だにTVのニュースを鵜呑みにする世代。持っている情報や信じているモノが違えば意見も変わるだろうことくらいは理解できた。
恐らくだが。
通常の上司と部下の関係で例えるなら『考え方の合わない上司とは上手くやっていけない』と部下が会社を辞めて転職したという状況なのだろう。
ただ、それと”スクープを取って認めて貰う”という話がどう繋がるのか、戀には分からなかった。
もう少し踏み込んで聞いてみようかと思ったところで、彼女が何かに気づいたように立ち止まる。いつの間にか駅の近くまで来ていたらしい。戀も彼女に合わせて立ち止まる。
「あの子たち」
この時間の人出は思ったよりも少なかった。
その為、駅の入り口付近の壁を背に座り込んでいる二人組が近づかずとも認識できる。どうやら小学生二人組のようだ。二人とも長袖に半ズボンという恰好をしていた。幼く見える方の少年はつまらなそうに地面を見つめている。
「知り合い?」
「ううん」
どうやら今日は全く予想が当たらない。不正解率100%だなと苦笑いしていると陽菜から意外な言葉が。
「あの日ぶつかってきた二人組よ」
今度ばかりは言われていることをすんなり理解できた戀であった。
「戀くん?」
「行こうか」
恐らく近くにあるのは小学校。この位置からは確認できなかったが。
お昼になるにつれ、少しずつ気温があがっていくのを感じながら駅へ向かう。陽菜《はるな》には例の件を通報すべきとは言ったが、犯人が簡単に見つかるとは思えなかった。
「そう言えば、陽菜さんのお父さんはお兄さんに仕事を継いで欲しいと言っていたけれど」
顔も知らないスリよりはまだ情報のある兄の方が見つけらる確率は高い。戀はそのように思っていた。
「父は和菓子職人なの。兄は幼いころからそれを見ていて一時はデザインを提案するということではあるけれど、店を手伝っていたの」
余計な口出しをしたから彼女の父が怒ったのかと思ったら、そうではない。
「継がないことがわかったから仲違いを?」
「ううん」
彼女が左右に首を振ると、艶やかな髪がそれに合わせて揺れた。
「きっかけはインボイス制度」
インボイスとは販売先に対し税率と税額を正確に伝えるために、従来の区分記載請求書に必要事項を追記した請求書のことだ。それらをきちんとしないと仕入税額控除が受けられず適格な税金にならない。結果、税務署に多く税金を納めるはめになる。
「それで仕入れ先がちゃんと発行してくれず、店が潰れそうとかそういう?」
「そうじゃないの」
予想を立てて質問をしていた戀はそこで黙る。どうやら的外れな質問ばかりしていたようだ。
インボイス制度が導入されることは開始される前から騒がれていたことでもある。それのせいで多くの中小企業が影響を受け、個人商店なんかは存続の危機にさらされるということも言われていた。
だが戀にはいまいちピンとこなかったことが思い出される。
最近知ったことであるが。
消費税10%の商品の場合、自分たちは100円の買い物をするのに110円払うだろう。そのうち10円を税金だと思っているのが一般的だが、実はそうではないらしい。買い物をする時点で110円なのである。単に表示として消費税10円と書かれているに過ぎない。
消費税が導入されると同時に値上がりしただけの話なのだ。つまり商品は元から110円。そこから10円を消費税として納める可能性を示しているだけに過ぎない。
簡単に言えば、買い物をする側が消費税を必ず負担しているかのように見えるだけ。
「その制度の話から兄と父の考え方が違うことが分かって、兄は和菓子屋を継ぐことをやめてライターになろうとしたの」
「そうなんだ」
どうしてそれがライターになるきっかけとなったのか、戀には理解できなかったが。
SNSなどで常に情報を収集し真実について考えようとする若い世代と未だにTVのニュースを鵜呑みにする世代。持っている情報や信じているモノが違えば意見も変わるだろうことくらいは理解できた。
恐らくだが。
通常の上司と部下の関係で例えるなら『考え方の合わない上司とは上手くやっていけない』と部下が会社を辞めて転職したという状況なのだろう。
ただ、それと”スクープを取って認めて貰う”という話がどう繋がるのか、戀には分からなかった。
もう少し踏み込んで聞いてみようかと思ったところで、彼女が何かに気づいたように立ち止まる。いつの間にか駅の近くまで来ていたらしい。戀も彼女に合わせて立ち止まる。
「あの子たち」
この時間の人出は思ったよりも少なかった。
その為、駅の入り口付近の壁を背に座り込んでいる二人組が近づかずとも認識できる。どうやら小学生二人組のようだ。二人とも長袖に半ズボンという恰好をしていた。幼く見える方の少年はつまらなそうに地面を見つめている。
「知り合い?」
「ううん」
どうやら今日は全く予想が当たらない。不正解率100%だなと苦笑いしていると陽菜から意外な言葉が。
「あの日ぶつかってきた二人組よ」
今度ばかりは言われていることをすんなり理解できた戀であった。
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