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3話 図書館と彼
2 カードのない理由
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「この人ね、図書館の入り口で弟が転んだ時に助けてくれたの」
「いいお兄ちゃんなの!」
どうやら彼らが陽菜の兄を覚えていたのは、そういった経緯があるから。それ以降、何度かお菓子を貰ったこともあるという。
だが、いつからか図書館で会うことはなくなった。
恐らく失踪したことが原因なのだろう。
「あのお兄ちゃんはね、いつも新聞のところにいたよ」
彼らの話から、陽菜の兄は新聞コーナーにいたことが発覚。戀は図書館を出る時にチラリと視た新聞コーナーについて思い出す。確か新聞も貸し出し不可。
図書館の貸し出し利用カードこと図書カードは本の貸し出しや貸し出し不可書籍を閲覧するときに必要。
他にも学習室の利用やパソコンルーム利用時にも必要だが、それは図書館自体が広く一般公開されているからだろう。誰でも利用はできるが、貸し出しや特別な施設を利用できるのはあくまでも市民。
だが新聞を閲覧するにはカードは不要。
ネットでなんでも調べられる時代に、わざわざ過去の新聞を見ていたのには何か理由がある。これはかなり有力な手掛かりになるのではないか。
駅の時計を見上げると、いつの間にか11時を過ぎていた。
いつまでも彼らを引きとめてはおけないと思った戀は、財布から千円札を二枚取り出し、情報料として彼らに渡そうとして手を止める。相手は小学生。何かの誤解を受けては大変だ。
「両親は今日もお仕事?」
”りょうしん?”と不思議そうな顔をする弟に対し、兄が大きく頷く。
探している相手が陽菜の兄だということを話すと、二人はホッとした表情を見せた。だが、いなくなってしまったと告げると、弟の方が泣きそうな顔をする。恐らく、自分の兄がいなくなってしまったらと想像したに違いない。
先ほど兄を庇った様子を見ても、二人は大変仲が良く、弟は兄が大好きなのだろうと感じていた。親が共働きで代わりにいつも面倒を見てくれるのであれば、なおさらだ。
「お礼にさ、二人にお昼をご馳走したいのだけれど、お母さんに連絡は取れる?」
”お父さんでもいいけれど”と戀は付け加えて。
すると兄の方が鞄から子供用のスマホを取り出す。来年は中学生だというから、しっかりしていても不思議はないが中学に上がれば部活に入ることもあるだろう。
他人事ながら、弟が寂しがるのではないかと心配してしまう。
彼らの母親へは陽菜から説明をしてもらった。これは男性よりも女性に説明して貰った方が安心するだろうという考えによるもの。
とは言え自分たちは赤の他人。勝手に連れまわしては心配するだろう。
陽菜が説明をしている間に、戀は叔母に連絡を入れる。陽菜の方をチラリと見ながら文字を打っていると、指で小さくOKのサインを作ったのち手を開いた。
それを見た戀は”パー?”と思わず声を漏らす。
するとそれを隣で聞いていた弟に何故かぺちっと叩かれた。
「え? なに」
「ご!」
「ご」
戀は彼の言葉を反芻するが。
何の暗号なのかと思っていると、弟が再び『ご!』といいながら片手を開く。
「人数の話よ。戀くん」
「あ、5人ね」
スマホを兄の方に手渡した陽菜に補足をされ、ようやく戀は理解する。
5人ということは母親も合流することを示しているのだろう。
「場所の説明をしたら『職場からの方が近いので、先に向かっていて欲しい』と言われたの」
「信用されてるんだな」
陽菜の熱心で丁寧な説明があってこそだと思った。
「うん……それがね。この子たちのお母さん、意外な繋がりがあるみたいなの」
「え?」
世間は狭い。それは日常的に感じることではある。
何故なら生活圏には区分はあるが圏域には構成に基準があり、圏域範囲は半径4~6km程度。
つまり、近くに住んでいたらその辺ですれ違うのは当然。そして知らず知らずのうちに同じ店を使っていたりするものだ。
この兄弟が図書館を使っているという話から、彼らが通っているのは図書館近くの小学校だということが想定できる。
珈琲店から図書館までは徒歩20分。不動産屋の基準で考えると1.6kmくらいになる。つまり十分その辺ですれ違う範囲内となるわけだ。
「いいお兄ちゃんなの!」
どうやら彼らが陽菜の兄を覚えていたのは、そういった経緯があるから。それ以降、何度かお菓子を貰ったこともあるという。
だが、いつからか図書館で会うことはなくなった。
恐らく失踪したことが原因なのだろう。
「あのお兄ちゃんはね、いつも新聞のところにいたよ」
彼らの話から、陽菜の兄は新聞コーナーにいたことが発覚。戀は図書館を出る時にチラリと視た新聞コーナーについて思い出す。確か新聞も貸し出し不可。
図書館の貸し出し利用カードこと図書カードは本の貸し出しや貸し出し不可書籍を閲覧するときに必要。
他にも学習室の利用やパソコンルーム利用時にも必要だが、それは図書館自体が広く一般公開されているからだろう。誰でも利用はできるが、貸し出しや特別な施設を利用できるのはあくまでも市民。
だが新聞を閲覧するにはカードは不要。
ネットでなんでも調べられる時代に、わざわざ過去の新聞を見ていたのには何か理由がある。これはかなり有力な手掛かりになるのではないか。
駅の時計を見上げると、いつの間にか11時を過ぎていた。
いつまでも彼らを引きとめてはおけないと思った戀は、財布から千円札を二枚取り出し、情報料として彼らに渡そうとして手を止める。相手は小学生。何かの誤解を受けては大変だ。
「両親は今日もお仕事?」
”りょうしん?”と不思議そうな顔をする弟に対し、兄が大きく頷く。
探している相手が陽菜の兄だということを話すと、二人はホッとした表情を見せた。だが、いなくなってしまったと告げると、弟の方が泣きそうな顔をする。恐らく、自分の兄がいなくなってしまったらと想像したに違いない。
先ほど兄を庇った様子を見ても、二人は大変仲が良く、弟は兄が大好きなのだろうと感じていた。親が共働きで代わりにいつも面倒を見てくれるのであれば、なおさらだ。
「お礼にさ、二人にお昼をご馳走したいのだけれど、お母さんに連絡は取れる?」
”お父さんでもいいけれど”と戀は付け加えて。
すると兄の方が鞄から子供用のスマホを取り出す。来年は中学生だというから、しっかりしていても不思議はないが中学に上がれば部活に入ることもあるだろう。
他人事ながら、弟が寂しがるのではないかと心配してしまう。
彼らの母親へは陽菜から説明をしてもらった。これは男性よりも女性に説明して貰った方が安心するだろうという考えによるもの。
とは言え自分たちは赤の他人。勝手に連れまわしては心配するだろう。
陽菜が説明をしている間に、戀は叔母に連絡を入れる。陽菜の方をチラリと見ながら文字を打っていると、指で小さくOKのサインを作ったのち手を開いた。
それを見た戀は”パー?”と思わず声を漏らす。
するとそれを隣で聞いていた弟に何故かぺちっと叩かれた。
「え? なに」
「ご!」
「ご」
戀は彼の言葉を反芻するが。
何の暗号なのかと思っていると、弟が再び『ご!』といいながら片手を開く。
「人数の話よ。戀くん」
「あ、5人ね」
スマホを兄の方に手渡した陽菜に補足をされ、ようやく戀は理解する。
5人ということは母親も合流することを示しているのだろう。
「場所の説明をしたら『職場からの方が近いので、先に向かっていて欲しい』と言われたの」
「信用されてるんだな」
陽菜の熱心で丁寧な説明があってこそだと思った。
「うん……それがね。この子たちのお母さん、意外な繋がりがあるみたいなの」
「え?」
世間は狭い。それは日常的に感じることではある。
何故なら生活圏には区分はあるが圏域には構成に基準があり、圏域範囲は半径4~6km程度。
つまり、近くに住んでいたらその辺ですれ違うのは当然。そして知らず知らずのうちに同じ店を使っていたりするものだ。
この兄弟が図書館を使っているという話から、彼らが通っているのは図書館近くの小学校だということが想定できる。
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