15 / 72
3話 図書館と彼
3 世間は狭いと実感する瞬間
しおりを挟む
お喋りをしながら先を行く三人を見ながら、戀はまるで親子のようだなと思っていた。すると自分は父親だろうかと苦笑いする。
だが今はそんなことを考えている場合ではない。
彼らの母とどんな繋がりがあったのか。陽菜は明確にはせずに『ついてからのお楽しみ』と人差し指を口元に当てた。大変可愛らしい。
度々思考が脱線しつつも、何故彼女の兄が新聞を見ていたのかについて考える。
今回出会った小学生兄弟の話では、彼は”いつも”新聞コーナーを利用していたという。ネットが繋がる媒体《ばいたい》を持っているならパソコンルームを使用する必要はなかったのだろう。
しかし何故あえて新聞なのか?
単純に、新聞を取っていなかったからという見方もできるが彼はライターなのだ。何か特ダネになるネタを探していたと考える方が妥当。
「新聞でなければならなかった理由……か」
戀は小さく呟いて顎に手をやる。
新聞とネット記事の違いに目を向ければ自ずと理由が見えてくるだろうと思った。
ネット記事は膨大だ。正式なところもあれば、個人の見解も知ることが出来るのが利点。そのため、時には”その発想はなかった”と思うことにも出くわすだろう。
だがその代わり、全てにおいて精査せずとも配信できるという難点がある。つまりはフェイクニュースが存在するということだ。
そしてそれを正しいかどうか考えずに人は広めていく。配信元の善意、悪意は問わずに。
ではフェイクニュースの是正でもしていたのか?
その可能性は低いだろう。新聞記事はそれこそネットでも視られるのだから。
他の難点といえば、有料記事があることだろうか? その先を知りたければ課金の必要がでてくる。たった一つの記事だけのために月額課金はバカらしいと考えた可能性も否定はできない。
そうは思うが、しょっちゅう図書館に行くよりは課金をした方が早いだろう。
そこで戀はある一つの可能性について考えてみる。
ミステリーで誰かが新聞記事を調べる場合。それは小さな記事のことが多い。その小さい記事は地域のもの。
ある大物ミステリー作家の小説にも、その地域限定の記事を読むためにある人物が新聞を取り寄せていたということがあった。
となれば彼が地域限定でしか新聞に載らなかった記事を目的にしていた可能性は浮上する。
「ここの地域限定だとしても、せめてジャンルがわからないと」
目的を持って探していた人と、その目的を突き止めるために調べるのでは全く意味合いが違う。何に重点を置くかわかっても、何を探せばいいのかわからないのだ。
戀の目にふと議員のポスターが飛び込む。選挙のポスターではなく、指針や意思表明のようなことが書かれているものである。
ポスターから再び陽菜たちに視線を戻した戀は、彼女が言っていた兄の印象を思い出す。
『真面目で正義感が強い』
確か彼女は兄についてそう話していた。
そして揉めた内容はインボイス制度。
総合して考えると、彼が政治や法律に関心や知識があったことが伺えた。
戀は思わず今、通り過ぎた議員のポスターを振り返る。
「いや、まさかね」
数秒立ち止まると、自分の考えを否定し再び歩き出す。
サスペンスドラマではないのだ。仮に汚職などを調べていたとしても、そう簡単に邪魔だと消されるわけはない。某国ではあるまいし。ここは日本なのだ。
仮にそんなことがあったとしても、何らかの事件としてニュースになっていないのはオカシイ。そう頻繁に殺人事件が起こる国ではないのだから。
交通事故に見せかけた殺人なら分からないが。
「あら。ホント世間は狭いわね」
先に行ってくれといったのは先方だったはずだ。叔母の言葉に陽菜がこちらに視線を向ける。
てっきり小学生兄弟の母は仕事を抜け出してくるか、お昼休みにこちらへ来るのかと思っていた戀は珈琲店に着いて唖然とした。
それを見た陽菜は、悪戯が成功した子供のようにクスクスと笑う。
「そういうことか」
小学生兄弟の母は、なんとこの珈琲店が野菜の仕入れ先であるスーパーの店員。ここの配送は彼女の担当だったのである。
当然、戀とも顔見知り。世間は実に狭いと実感した瞬間であった。
だが今はそんなことを考えている場合ではない。
彼らの母とどんな繋がりがあったのか。陽菜は明確にはせずに『ついてからのお楽しみ』と人差し指を口元に当てた。大変可愛らしい。
度々思考が脱線しつつも、何故彼女の兄が新聞を見ていたのかについて考える。
今回出会った小学生兄弟の話では、彼は”いつも”新聞コーナーを利用していたという。ネットが繋がる媒体《ばいたい》を持っているならパソコンルームを使用する必要はなかったのだろう。
しかし何故あえて新聞なのか?
単純に、新聞を取っていなかったからという見方もできるが彼はライターなのだ。何か特ダネになるネタを探していたと考える方が妥当。
「新聞でなければならなかった理由……か」
戀は小さく呟いて顎に手をやる。
新聞とネット記事の違いに目を向ければ自ずと理由が見えてくるだろうと思った。
ネット記事は膨大だ。正式なところもあれば、個人の見解も知ることが出来るのが利点。そのため、時には”その発想はなかった”と思うことにも出くわすだろう。
だがその代わり、全てにおいて精査せずとも配信できるという難点がある。つまりはフェイクニュースが存在するということだ。
そしてそれを正しいかどうか考えずに人は広めていく。配信元の善意、悪意は問わずに。
ではフェイクニュースの是正でもしていたのか?
その可能性は低いだろう。新聞記事はそれこそネットでも視られるのだから。
他の難点といえば、有料記事があることだろうか? その先を知りたければ課金の必要がでてくる。たった一つの記事だけのために月額課金はバカらしいと考えた可能性も否定はできない。
そうは思うが、しょっちゅう図書館に行くよりは課金をした方が早いだろう。
そこで戀はある一つの可能性について考えてみる。
ミステリーで誰かが新聞記事を調べる場合。それは小さな記事のことが多い。その小さい記事は地域のもの。
ある大物ミステリー作家の小説にも、その地域限定の記事を読むためにある人物が新聞を取り寄せていたということがあった。
となれば彼が地域限定でしか新聞に載らなかった記事を目的にしていた可能性は浮上する。
「ここの地域限定だとしても、せめてジャンルがわからないと」
目的を持って探していた人と、その目的を突き止めるために調べるのでは全く意味合いが違う。何に重点を置くかわかっても、何を探せばいいのかわからないのだ。
戀の目にふと議員のポスターが飛び込む。選挙のポスターではなく、指針や意思表明のようなことが書かれているものである。
ポスターから再び陽菜たちに視線を戻した戀は、彼女が言っていた兄の印象を思い出す。
『真面目で正義感が強い』
確か彼女は兄についてそう話していた。
そして揉めた内容はインボイス制度。
総合して考えると、彼が政治や法律に関心や知識があったことが伺えた。
戀は思わず今、通り過ぎた議員のポスターを振り返る。
「いや、まさかね」
数秒立ち止まると、自分の考えを否定し再び歩き出す。
サスペンスドラマではないのだ。仮に汚職などを調べていたとしても、そう簡単に邪魔だと消されるわけはない。某国ではあるまいし。ここは日本なのだ。
仮にそんなことがあったとしても、何らかの事件としてニュースになっていないのはオカシイ。そう頻繁に殺人事件が起こる国ではないのだから。
交通事故に見せかけた殺人なら分からないが。
「あら。ホント世間は狭いわね」
先に行ってくれといったのは先方だったはずだ。叔母の言葉に陽菜がこちらに視線を向ける。
てっきり小学生兄弟の母は仕事を抜け出してくるか、お昼休みにこちらへ来るのかと思っていた戀は珈琲店に着いて唖然とした。
それを見た陽菜は、悪戯が成功した子供のようにクスクスと笑う。
「そういうことか」
小学生兄弟の母は、なんとこの珈琲店が野菜の仕入れ先であるスーパーの店員。ここの配送は彼女の担当だったのである。
当然、戀とも顔見知り。世間は実に狭いと実感した瞬間であった。
0
あなたにおすすめの小説
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
シンデレラは王子様と離婚することになりました。
及川 桜
恋愛
シンデレラは王子様と結婚して幸せになり・・・
なりませんでした!!
【現代版 シンデレラストーリー】
貧乏OLは、ひょんなことから会社の社長と出会い結婚することになりました。
はたから見れば、王子様に見初められたシンデレラストーリー。
しかしながら、その実態は?
離婚前提の結婚生活。
果たして、シンデレラは無事に王子様と離婚できるのでしょうか。
死ぬほど嫌いな上司と付き合いました
三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。
皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。
涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥
上司×部下BL
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる