【完結】心打つ雨音、恋してもなお

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3話 図書館と彼

3 世間は狭いと実感する瞬間

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 お喋りをしながら先を行く三人を見ながら、れんはまるで親子のようだなと思っていた。すると自分は父親だろうかと苦笑いする。

 だが今はそんなことを考えている場合ではない。
 彼らの母とどんな繋がりがあったのか。陽菜はるなは明確にはせずに『ついてからのお楽しみ』と人差し指を口元に当てた。大変可愛らしい。
 度々思考が脱線しつつも、何故彼女の兄が新聞を見ていたのかについて考える。
 今回出会った小学生兄弟の話では、彼は”いつも”新聞コーナーを利用していたという。ネットが繋がる媒体《ばいたい》を持っているならパソコンルームを使用する必要はなかったのだろう。

 しかし何故あえて新聞なのか?
 単純に、新聞を取っていなかったからという見方もできるが彼はライターなのだ。何か特ダネになるネタを探していたと考える方が妥当。
「新聞でなければならなかった理由……か」
 戀は小さく呟いて顎に手をやる。
 新聞とネット記事の違いに目を向ければ自ずと理由が見えてくるだろうと思った。

 ネット記事は膨大だ。正式なところもあれば、個人の見解も知ることが出来るのが利点。そのため、時には”その発想はなかった”と思うことにも出くわすだろう。
 だがその代わり、全てにおいて精査せずとも配信できるという難点がある。つまりはフェイクニュースが存在するということだ。
 そしてそれを正しいかどうか考えずに人は広めていく。配信元の善意、悪意は問わずに。

 ではフェイクニュースの是正でもしていたのか?
 その可能性は低いだろう。新聞記事はそれこそネットでも視られるのだから。
 他の難点といえば、有料記事があることだろうか? その先を知りたければ課金の必要がでてくる。たった一つの記事だけのために月額課金はバカらしいと考えた可能性も否定はできない。
 そうは思うが、しょっちゅう図書館に行くよりは課金をした方が早いだろう。
 そこで戀はある一つの可能性について考えてみる。

 ミステリーで誰かが新聞記事を調べる場合。それは小さな記事のことが多い。その小さい記事は地域のもの。
 ある大物ミステリー作家の小説にも、その地域限定の記事を読むためにある人物が新聞を取り寄せていたということがあった。
 となれば彼が地域限定でしか新聞に載らなかった記事を目的にしていた可能性は浮上する。

「ここの地域限定だとしても、せめてジャンルがわからないと」
 目的を持って探していた人と、その目的を突き止めるために調べるのでは全く意味合いが違う。何に重点を置くかわかっても、何を探せばいいのかわからないのだ。
 戀の目にふと議員のポスターが飛び込む。選挙のポスターではなく、指針や意思表明のようなことが書かれているものである。
 ポスターから再び陽菜たちに視線を戻した戀は、彼女が言っていた兄の印象を思い出す。

『真面目で正義感が強い』
 確か彼女は兄についてそう話していた。
 そして揉めた内容はインボイス制度。
 総合して考えると、彼が政治や法律に関心や知識があったことが伺えた。

 戀は思わず今、通り過ぎた議員のポスターを振り返る。
「いや、まさかね」
 数秒立ち止まると、自分の考えを否定し再び歩き出す。
 サスペンスドラマではないのだ。仮に汚職などを調べていたとしても、そう簡単に邪魔だと消されるわけはない。某国ではあるまいし。ここは日本なのだ。
 仮にそんなことがあったとしても、何らかの事件としてニュースになっていないのはオカシイ。そう頻繁に殺人事件が起こる国ではないのだから。
 交通事故に見せかけた殺人なら分からないが。

「あら。ホント世間は狭いわね」
 先に行ってくれといったのは先方だったはずだ。叔母の言葉に陽菜がこちらに視線を向ける。
 てっきり小学生兄弟の母は仕事を抜け出してくるか、お昼休みにこちらへ来るのかと思っていた戀は珈琲店に着いて唖然とした。
 それを見た陽菜は、悪戯が成功した子供のようにクスクスと笑う。
「そういうことか」
 小学生兄弟の母は、なんとこの珈琲店が野菜の仕入れ先であるスーパーの店員。ここの配送は彼女の担当だったのである。
 当然、戀とも顔見知り。世間は実に狭いと実感した瞬間であった。
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