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4話 新たな情報
1 小さな手がかり
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「はい」
翌朝、陽菜と駅で待ち合わせした戀は挨拶もそこそこに車のキーを差し出す。本日向かうところは徒歩では遠すぎた。
「男と二人で車に乗るのは心配だと思うから」
戀から車のキーを受け取った彼女は手の中のそれを見つめる。
「だから免許証持って来てと言ったの?」
「うん」
どの道、彼女の兄の家までは案内がなければいけない。
陽菜は一度ぎゅっと手の中のキーを握ると、”はい”と戀にそれを突っ返す。
「え?」
キーを受け取る形になった戀はその行動に戸惑った。
「朝ご飯まだなの。戀くんもまだでしょ? 珈琲店までは戀くんが運転して」
”兄の家へはわたしが運転するから”と続け、彼女はふんわりと笑う。
「どこに停めてるの?」
「えっと……」
戸惑いながら先導する戀。
「大丈夫、信じてるから」
背中からかけられた声に立ち止まる。
「戀くんと昨日、夕方まで一緒に行動を共にしたけれど、戀くんは誠実な人だと思う」
それは信頼と受け取っていいのだろうか。
それとも釘を刺されたのだろうか。
複雑な気持ちになりながら車に乗り込むと珈琲店を目指す。
恋に時間なんて関係ないとは思う。
恋とはするものというよりは落ちるものだ。それを陽菜との出逢いで初めて知った自分は、あの時声をかけていなければこうして一緒に行動を共にすることもなかったのだろうと思った。
それでも、これに乗じて告白する勇気などない。
『焦っちゃ駄目よ』
叔母の言葉が蘇る。
焦って良いことなんて何もないだろう。
ゆっくりと仲良くなっていけばいい。この関係に終わりがあったとしても。
珈琲店では『すっかり常連のように感じるわ』と叔母に言われ、『まだ三回目なのに』と笑う彼女をぼんやりと眺めていた。
この事件が解決したらこんな風に彼女と居られる時間は減ってしまうのだろうか?
昨日が長く一緒にいたためか、感傷に浸ってしまう自分がいる。
茶飲み友達の、お茶する頻度はいかほどなのだろう?
そんな訳の分からないことをスマホで検索してしまうくらいには、陽菜と一緒にいる時間を心地よいと感じてしまっていた。
「ご飯食べている時、全然喋らなかったけど、考え事?」
店を出ると陽菜がそう言って不思議そうに戀の顔を覗き込んだ。
「あ、いや。陽菜さんがかわ……変わらず元気でよかったなと」
”可愛い”と言いそうになって何とか誤魔化す。
「なにそれ」
彼女がぷっと吹き出した。
「なにそれって言われてもですね」
何と返していいか分からない戀は困って眉を寄せる。
車のドアを開けると中に陽菜を促す。彼女は車に乗り込むと運転席の位置を直し始めた。そんな様子をしばらく眺めていると、彼女がこちらを見上げる。
「早く乗らないとおいて行っちゃうわよ?」
「それは困るね」
戀は肩を竦めると助手席に回り込む。
今日は彼女の兄がどこの雑誌社に原稿を持ち込んでいたのか調べる予定だ。これで何を主に調べていたのかわかることだろう。
シートベルトを確認すると彼女がアクセルを踏み込む。車は彼女の兄宅へ向けて走り出す、加速する恋心を乗せて。
「当たりだね」
「うん」
珈琲店を出て車で数十分。二人は陽菜の兄の借りていたマンションの一室で雑誌とにらめっこしていた。現在は両親が代わりに賃貸料を支払っているらしい。いつか戻ってくる彼のために。
「やっぱり政治関係か」
「これはスクープにはならないのね」
二人は兄が書いたと思われる記事を眺めながら。
「元々騒がれていた事件だからね。続報ではスクープ扱いにはならないんじゃないの?」
彼の記事はある議員の汚職についてであった。だが注目すべきはその人物が地元出身であることだろう。雑誌の日付は1年前。
「日付的にはどうなの?」
「連絡が取れなくなるより前じゃないかと思う」
戀の問いに陽菜はスマホを取り出す。彼女が戀に向けたのはメッセージアプリの彼とのやり取りの画面。
既読のつかないメッセージの日付を確認するとやはり雑誌の日付の方が前と確認できた。
「とりあえず、この雑誌社にお兄さんが今も出入りしているのか聞いてみよう」
戀の言葉に彼女も頷く。
まずは失踪した正確な日付を知りたいと思っていたのである。
翌朝、陽菜と駅で待ち合わせした戀は挨拶もそこそこに車のキーを差し出す。本日向かうところは徒歩では遠すぎた。
「男と二人で車に乗るのは心配だと思うから」
戀から車のキーを受け取った彼女は手の中のそれを見つめる。
「だから免許証持って来てと言ったの?」
「うん」
どの道、彼女の兄の家までは案内がなければいけない。
陽菜は一度ぎゅっと手の中のキーを握ると、”はい”と戀にそれを突っ返す。
「え?」
キーを受け取る形になった戀はその行動に戸惑った。
「朝ご飯まだなの。戀くんもまだでしょ? 珈琲店までは戀くんが運転して」
”兄の家へはわたしが運転するから”と続け、彼女はふんわりと笑う。
「どこに停めてるの?」
「えっと……」
戸惑いながら先導する戀。
「大丈夫、信じてるから」
背中からかけられた声に立ち止まる。
「戀くんと昨日、夕方まで一緒に行動を共にしたけれど、戀くんは誠実な人だと思う」
それは信頼と受け取っていいのだろうか。
それとも釘を刺されたのだろうか。
複雑な気持ちになりながら車に乗り込むと珈琲店を目指す。
恋に時間なんて関係ないとは思う。
恋とはするものというよりは落ちるものだ。それを陽菜との出逢いで初めて知った自分は、あの時声をかけていなければこうして一緒に行動を共にすることもなかったのだろうと思った。
それでも、これに乗じて告白する勇気などない。
『焦っちゃ駄目よ』
叔母の言葉が蘇る。
焦って良いことなんて何もないだろう。
ゆっくりと仲良くなっていけばいい。この関係に終わりがあったとしても。
珈琲店では『すっかり常連のように感じるわ』と叔母に言われ、『まだ三回目なのに』と笑う彼女をぼんやりと眺めていた。
この事件が解決したらこんな風に彼女と居られる時間は減ってしまうのだろうか?
昨日が長く一緒にいたためか、感傷に浸ってしまう自分がいる。
茶飲み友達の、お茶する頻度はいかほどなのだろう?
そんな訳の分からないことをスマホで検索してしまうくらいには、陽菜と一緒にいる時間を心地よいと感じてしまっていた。
「ご飯食べている時、全然喋らなかったけど、考え事?」
店を出ると陽菜がそう言って不思議そうに戀の顔を覗き込んだ。
「あ、いや。陽菜さんがかわ……変わらず元気でよかったなと」
”可愛い”と言いそうになって何とか誤魔化す。
「なにそれ」
彼女がぷっと吹き出した。
「なにそれって言われてもですね」
何と返していいか分からない戀は困って眉を寄せる。
車のドアを開けると中に陽菜を促す。彼女は車に乗り込むと運転席の位置を直し始めた。そんな様子をしばらく眺めていると、彼女がこちらを見上げる。
「早く乗らないとおいて行っちゃうわよ?」
「それは困るね」
戀は肩を竦めると助手席に回り込む。
今日は彼女の兄がどこの雑誌社に原稿を持ち込んでいたのか調べる予定だ。これで何を主に調べていたのかわかることだろう。
シートベルトを確認すると彼女がアクセルを踏み込む。車は彼女の兄宅へ向けて走り出す、加速する恋心を乗せて。
「当たりだね」
「うん」
珈琲店を出て車で数十分。二人は陽菜の兄の借りていたマンションの一室で雑誌とにらめっこしていた。現在は両親が代わりに賃貸料を支払っているらしい。いつか戻ってくる彼のために。
「やっぱり政治関係か」
「これはスクープにはならないのね」
二人は兄が書いたと思われる記事を眺めながら。
「元々騒がれていた事件だからね。続報ではスクープ扱いにはならないんじゃないの?」
彼の記事はある議員の汚職についてであった。だが注目すべきはその人物が地元出身であることだろう。雑誌の日付は1年前。
「日付的にはどうなの?」
「連絡が取れなくなるより前じゃないかと思う」
戀の問いに陽菜はスマホを取り出す。彼女が戀に向けたのはメッセージアプリの彼とのやり取りの画面。
既読のつかないメッセージの日付を確認するとやはり雑誌の日付の方が前と確認できた。
「とりあえず、この雑誌社にお兄さんが今も出入りしているのか聞いてみよう」
戀の言葉に彼女も頷く。
まずは失踪した正確な日付を知りたいと思っていたのである。
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