21 / 72
4話 新たな情報
3 意外な接点
しおりを挟む
「この人ならたまに近くのコンビニで一緒になったことがあるよ。そっか姫宮さんって言うんだね」
陽菜に連絡を取って貰ったのが功を奏したのか定かではないが、紹介して貰った後輩という人物は二つ返事で会うことを承諾してくれた。
現在、陽菜の兄のマンション近くのコインパーキングでその人物と会っている状況だ。
その人物の第一印象は優し気で気さく。特別容姿が優れているというわけではないが、スポーツでもしているのかガッチリした体系で、なかなかの高身長であった。短髪で爽やかな雰囲気。戀たちと年齢は変わらないはずだが、その喋り方のせいで年上に感じる。
彼は事前に写真を確認してくれていたが。
陽菜にスマホの画面に映る兄の写真を改めて見せられると『そうそう、彼』と何度か頷いて。
「何故、覚えてたかって?」
どうやら彼が陽菜の兄を覚えていたのには、いくつか理由があるらしい。何かの手掛かりになるかもしれないと、二人は彼の詳しく話を聞くことにした。
「初めて姫宮さんを認識したのは、そのコンビニの表で女子高生に絡まれていたのが始まりなんだよね。いや、絡んでいたのかな」
2年前の前のことをよく覚えているなと戀は思ったが、それだけ印象深かったのだろう。
「初め見た時はナンパでもしているのかと思ったんだけれど。そうか、彼ライターなんだ」
”どうりで”と一人で納得する彼。
「姫宮さんとコンビニで遭遇するのは夕方から夜の時間が多かった。僕は朝にも利用することはあったけれど、その時間帯に会ったことはないな」
彼の話を総合するとこういうことらしい。
初めて陽菜の兄を認識した時、彼は女子高生たちと談笑《だんしょう》していたように見えたという。すれ違った時、彼女たちの家の事情などを話しているのが聴こえたらしい。
今思えば、陽菜の兄は彼女たちにコンビニに遅い時間までいる理由を取材をしていたのではないかと思うと彼は言う。
「もしかしたら単に心配して話しかけたのかもしれないけれどね。ほら、姫宮さんってイケメンでしょう? 当時の俺はあれだけの容姿があれば、女子高生からも気軽に声をかけられちゃうんだなって思って」
羨ましい気持ちもあって覚えたようだ。
「最後に見かけた日?」
「はい。できればいつ頃か詳しく知りたいんです」
戀の言葉に、何故か彼は眉を寄せ陽菜に視線を移す。あまりにも申し訳なさそうに見えたので、覚えていないのかと思ったがそうではなかったようだ。
「2年、そっか。姫宮さんが引っ越したから会わなくなったのかと思ってたよ」
”もっと早く協力してあげられたら良かったね”と続けて。
「実は最後に見かけた日のこと、僕はよく覚えているんだ」
彼の言葉に戀は陽菜と顔を見合わせる。
「あの日は彼女の誕生日でさ。ケーキは買ったんだけれど、飲み物を買うの忘れてコンビニに行ったんだよね」
「彼女……」
陽菜の兄を羨ましがっていたので、てっきり一人だと思ったがどうやら違うようだ。
「彼女っていうのは」
おつき合いされている相手が彼の家に出入りしているのであれば、もしかしたらその彼女も陽菜の兄を目撃しているかもしれない。そう思った戀は彼にスマホを向けられるままに覗き込んで固まった。
「お、おつき合いされているのですか? 彼女と」
動揺を隠せない戀。陽菜が不思議そうに彼の差し出すスマホを覗き込む。
「この人って」
陽菜も驚いて戀の方を見上げる。
「つき合い? いやいや違う。知ってるの? 二人とも彼女のこと」
「知っているというか」
『元カノだ』とは言えずに口ごもる戀。動揺の意味を汲み取ったのか、心配そうに戀の腕に手を添える陽菜。
「僕の推しなんだよね」
まさかここで自分の元恋人について語られることになるとは思っていなかった戀は、気づかれないように深呼吸をする。
彼が見せてきたのは、戀の元恋人のホームページ。陽菜がすぐに気づいたのは昨日、戀が見ていた雑誌の記事を見たからであろう。
どんな苦行だと思いながらも、事件の手掛かりのためには彼の話を聞くしかないと覚悟を決めた戀であった。
陽菜に連絡を取って貰ったのが功を奏したのか定かではないが、紹介して貰った後輩という人物は二つ返事で会うことを承諾してくれた。
現在、陽菜の兄のマンション近くのコインパーキングでその人物と会っている状況だ。
その人物の第一印象は優し気で気さく。特別容姿が優れているというわけではないが、スポーツでもしているのかガッチリした体系で、なかなかの高身長であった。短髪で爽やかな雰囲気。戀たちと年齢は変わらないはずだが、その喋り方のせいで年上に感じる。
彼は事前に写真を確認してくれていたが。
陽菜にスマホの画面に映る兄の写真を改めて見せられると『そうそう、彼』と何度か頷いて。
「何故、覚えてたかって?」
どうやら彼が陽菜の兄を覚えていたのには、いくつか理由があるらしい。何かの手掛かりになるかもしれないと、二人は彼の詳しく話を聞くことにした。
「初めて姫宮さんを認識したのは、そのコンビニの表で女子高生に絡まれていたのが始まりなんだよね。いや、絡んでいたのかな」
2年前の前のことをよく覚えているなと戀は思ったが、それだけ印象深かったのだろう。
「初め見た時はナンパでもしているのかと思ったんだけれど。そうか、彼ライターなんだ」
”どうりで”と一人で納得する彼。
「姫宮さんとコンビニで遭遇するのは夕方から夜の時間が多かった。僕は朝にも利用することはあったけれど、その時間帯に会ったことはないな」
彼の話を総合するとこういうことらしい。
初めて陽菜の兄を認識した時、彼は女子高生たちと談笑《だんしょう》していたように見えたという。すれ違った時、彼女たちの家の事情などを話しているのが聴こえたらしい。
今思えば、陽菜の兄は彼女たちにコンビニに遅い時間までいる理由を取材をしていたのではないかと思うと彼は言う。
「もしかしたら単に心配して話しかけたのかもしれないけれどね。ほら、姫宮さんってイケメンでしょう? 当時の俺はあれだけの容姿があれば、女子高生からも気軽に声をかけられちゃうんだなって思って」
羨ましい気持ちもあって覚えたようだ。
「最後に見かけた日?」
「はい。できればいつ頃か詳しく知りたいんです」
戀の言葉に、何故か彼は眉を寄せ陽菜に視線を移す。あまりにも申し訳なさそうに見えたので、覚えていないのかと思ったがそうではなかったようだ。
「2年、そっか。姫宮さんが引っ越したから会わなくなったのかと思ってたよ」
”もっと早く協力してあげられたら良かったね”と続けて。
「実は最後に見かけた日のこと、僕はよく覚えているんだ」
彼の言葉に戀は陽菜と顔を見合わせる。
「あの日は彼女の誕生日でさ。ケーキは買ったんだけれど、飲み物を買うの忘れてコンビニに行ったんだよね」
「彼女……」
陽菜の兄を羨ましがっていたので、てっきり一人だと思ったがどうやら違うようだ。
「彼女っていうのは」
おつき合いされている相手が彼の家に出入りしているのであれば、もしかしたらその彼女も陽菜の兄を目撃しているかもしれない。そう思った戀は彼にスマホを向けられるままに覗き込んで固まった。
「お、おつき合いされているのですか? 彼女と」
動揺を隠せない戀。陽菜が不思議そうに彼の差し出すスマホを覗き込む。
「この人って」
陽菜も驚いて戀の方を見上げる。
「つき合い? いやいや違う。知ってるの? 二人とも彼女のこと」
「知っているというか」
『元カノだ』とは言えずに口ごもる戀。動揺の意味を汲み取ったのか、心配そうに戀の腕に手を添える陽菜。
「僕の推しなんだよね」
まさかここで自分の元恋人について語られることになるとは思っていなかった戀は、気づかれないように深呼吸をする。
彼が見せてきたのは、戀の元恋人のホームページ。陽菜がすぐに気づいたのは昨日、戀が見ていた雑誌の記事を見たからであろう。
どんな苦行だと思いながらも、事件の手掛かりのためには彼の話を聞くしかないと覚悟を決めた戀であった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる