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7話 協力者たち
1 陽菜の父と兄
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痛々しそうに見える両頬。彼は妻から往復ビンタを受けたという。
それというのも、陽菜の話を聞こうとしなかった為。父に話を聞いて貰おうと必死な陽菜を2日間無視したところ、とうとう妻が見かねて手を出したようだ。
彼は濡れ手で腫れるほど顔を叩かれたらしい。
それは家庭内暴力ではないのかと戀は青ざめたが、本人曰く自業自得だから仕方ないとのこと。
当の陽菜は家を出て行ってしまったようだ。
事情を理解したので戻ってくるように言ったが、戀に謝るまで許さないと言うのが彼女の出した条件。どうして二人が行動を共にしていたのかは、陽菜から事情を説明された妻から又聞きしたと言う。
一応事情は理解したようで、戀は彼から謝罪と御礼の言葉を受けた。
そんな彼からのSOSの内容は実に簡単。陽菜を一緒に迎えに行って欲しいとのことだった。
快諾した戀にホッとした表情を見せた彼。
そんな彼を見ながら戀は思う。これはチャンスなのではないかと。
「息子さんが和菓子職人からフリーライターになった理由って、ご存じですか?」
正直、この質問には嫌な顔をされるかもしれないとは思った。話を聞いている限りでは、ライターになることに陽菜の父は賛成してはいないと思うから。
「そんなことか」
陽菜の父は呟くように言って苦笑いをした。
「その質問に答える前に、聞いておきたいことがあるんだが。君は息子がまだ生きていると思うかい?」
”息子が失踪して2年も経つんだよ”と続けて。
その質問はきっと陽菜の兄がライターになろうとした理由に関係しているのだろう。
「現時点ではわかりません。でも、生きていると信じたいです」
戀は真っ直ぐに本心を告げることが誠意だと思った。
「そっか。君も息子と一緒だね」
「一緒……?」
「ああ」
小さく微笑み、彼は続けた。世の中には二つの人間がいると。
「私は諦めてしまった人間で、君たちは諦めない人間なんだよ」
そもそものきっかけはインボイス導入の話だったらしい。
決められたことは変わらない。消費税だってそう。導入されたら上がるばかり。政治は国民のためのものであるはずなのに、政治家は自分の利権しか考えていない。
目先のことばかりで、苦しんでいる国民に目を向けようとせず破滅に向かっているのがこの国。悪路を辿るこの国に諦めを抱いている人は多くいる。彼もまたそのうちの一人。
若者は夢を持てず、若年層の自ら命を絶つ人数が年々増え続ける国。しかし彼の息子は違った。
『父さん、諦めたらダメなんだよ。反対もしないで受け入れるのと、反対しながらも仕方なく法律に従うのは意味が違う。国民が諦めてしまったら、絶対に変わらない。だから諦めたらダメなんだ』
自分が生まれてから衰退の一途を辿るこの国に。
政治家に何が期待できるというのか。
そのようにして言い合いになったことも多かった。
『だったら、俺が悪事を暴いてやる。一人の力は小さいよ。声だって届かないかもしれない。でも、努力しないで諦めるのは違うよ、父さん』
今に見てろと言って彼の息子は家を出たのだ。
「息子は真っ直ぐで、正義感が強かった。家族思いでな」
陽菜の父の声は震えている。ハンドルを握る彼に視線を向ければ、はらはら涙を零していた。
「私はそんなことよりも、良い人を見つけて幸せになって欲しかった。危ないことに頭を突っ込んで欲しくなかった」
赤信号でブレーキを踏んだ彼は、戀からティッシュを受け取り涙を拭う。
「今の日本で生きるのは大変だよ。けれども毎日ニュースを見ていると、大変なのは日本だけじゃないようだがね」
日本に比べ海外はいささか他力本願な気はしている。だがそれは諦めていないからなのかもしれないし、どうにかできなければ政権交代という政治家への抑圧になっているのかもしれなかった。
「信じましょうよ、息子さんが生きていること。お父さんが信じなければ、息子さんが可哀そうじゃないですか」
すれ違ったまま終わってしまっては切ないと戀は思う。
息子の幸せを願った父の気持ちはぜひとも伝わって欲しい。
「ああ、そうだね」
先ほどとは違う、柔らかい声音。戀の言葉に肯定の意を示すと、彼は再びアクセルを踏んだ。
それというのも、陽菜の話を聞こうとしなかった為。父に話を聞いて貰おうと必死な陽菜を2日間無視したところ、とうとう妻が見かねて手を出したようだ。
彼は濡れ手で腫れるほど顔を叩かれたらしい。
それは家庭内暴力ではないのかと戀は青ざめたが、本人曰く自業自得だから仕方ないとのこと。
当の陽菜は家を出て行ってしまったようだ。
事情を理解したので戻ってくるように言ったが、戀に謝るまで許さないと言うのが彼女の出した条件。どうして二人が行動を共にしていたのかは、陽菜から事情を説明された妻から又聞きしたと言う。
一応事情は理解したようで、戀は彼から謝罪と御礼の言葉を受けた。
そんな彼からのSOSの内容は実に簡単。陽菜を一緒に迎えに行って欲しいとのことだった。
快諾した戀にホッとした表情を見せた彼。
そんな彼を見ながら戀は思う。これはチャンスなのではないかと。
「息子さんが和菓子職人からフリーライターになった理由って、ご存じですか?」
正直、この質問には嫌な顔をされるかもしれないとは思った。話を聞いている限りでは、ライターになることに陽菜の父は賛成してはいないと思うから。
「そんなことか」
陽菜の父は呟くように言って苦笑いをした。
「その質問に答える前に、聞いておきたいことがあるんだが。君は息子がまだ生きていると思うかい?」
”息子が失踪して2年も経つんだよ”と続けて。
その質問はきっと陽菜の兄がライターになろうとした理由に関係しているのだろう。
「現時点ではわかりません。でも、生きていると信じたいです」
戀は真っ直ぐに本心を告げることが誠意だと思った。
「そっか。君も息子と一緒だね」
「一緒……?」
「ああ」
小さく微笑み、彼は続けた。世の中には二つの人間がいると。
「私は諦めてしまった人間で、君たちは諦めない人間なんだよ」
そもそものきっかけはインボイス導入の話だったらしい。
決められたことは変わらない。消費税だってそう。導入されたら上がるばかり。政治は国民のためのものであるはずなのに、政治家は自分の利権しか考えていない。
目先のことばかりで、苦しんでいる国民に目を向けようとせず破滅に向かっているのがこの国。悪路を辿るこの国に諦めを抱いている人は多くいる。彼もまたそのうちの一人。
若者は夢を持てず、若年層の自ら命を絶つ人数が年々増え続ける国。しかし彼の息子は違った。
『父さん、諦めたらダメなんだよ。反対もしないで受け入れるのと、反対しながらも仕方なく法律に従うのは意味が違う。国民が諦めてしまったら、絶対に変わらない。だから諦めたらダメなんだ』
自分が生まれてから衰退の一途を辿るこの国に。
政治家に何が期待できるというのか。
そのようにして言い合いになったことも多かった。
『だったら、俺が悪事を暴いてやる。一人の力は小さいよ。声だって届かないかもしれない。でも、努力しないで諦めるのは違うよ、父さん』
今に見てろと言って彼の息子は家を出たのだ。
「息子は真っ直ぐで、正義感が強かった。家族思いでな」
陽菜の父の声は震えている。ハンドルを握る彼に視線を向ければ、はらはら涙を零していた。
「私はそんなことよりも、良い人を見つけて幸せになって欲しかった。危ないことに頭を突っ込んで欲しくなかった」
赤信号でブレーキを踏んだ彼は、戀からティッシュを受け取り涙を拭う。
「今の日本で生きるのは大変だよ。けれども毎日ニュースを見ていると、大変なのは日本だけじゃないようだがね」
日本に比べ海外はいささか他力本願な気はしている。だがそれは諦めていないからなのかもしれないし、どうにかできなければ政権交代という政治家への抑圧になっているのかもしれなかった。
「信じましょうよ、息子さんが生きていること。お父さんが信じなければ、息子さんが可哀そうじゃないですか」
すれ違ったまま終わってしまっては切ないと戀は思う。
息子の幸せを願った父の気持ちはぜひとも伝わって欲しい。
「ああ、そうだね」
先ほどとは違う、柔らかい声音。戀の言葉に肯定の意を示すと、彼は再びアクセルを踏んだ。
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