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8話 その分岐点
5 心強い協力者
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「だいぶ遅くなってしまったね」
時間が遅くなってしまったため、戀と陽菜はいつもの珈琲店にいた。夕飯がまだだったからである。
「そうね。でも分かったこともあったし」
戀は車のドアを開け彼女を外に促す。予定よりも時間が遅いので彼女の父が迎えに来てくれると言う話だった。どうやら先に珈琲店にいるらしい。
店の前まで行くと中からドアが開く。車のエンジン音に気づいたのだろう。
「寒かったでしょう? 早くお入りなさいな」
叔母はいつものように心配そうに出迎えてくれた。
礼を述べる陽菜に笑顔を向けた叔母は『お父さん、先にいらしてるわよ』と中へ促す。
「戀」
「うん?」
陽菜がカウンターの父のところへ向かうのを確認し、扉の外に立っていた戀に声をかける彼女。
「何か良くないことでもあったの?」
やはり彼女は察しが良い。つき合いが長いからわかるのかもしれないが、戀の様子から何かを読み取るのが上手いのはいつものこと。その度に戀は感心してしまうのだ。
「まだ、断言はできない。でも、避けていた結論を突きつけられている気はする」
「でも確定ではないのでしょう?」
「それは、まあ」
戀が彼女から視線を逸らし床に向けるとポンと肩に置かれた手。
「大丈夫よ。身元不明の遺体に関しては照会済みなんでしょう?」
「そう言ってたね」
言わば、それに期待を繋いでいる状況なのだ。
しかしもし陽菜の兄が事故に遭い、相手が心無い者だったなら。
身元不明のご遺体がないと言うのは、警察に届け出ていない可能性もある。何処かに埋めてしまったなら見つからないだろう。
女子高生グループの一人から来た情報は、救急搬送された誰かがいたと言う事実を提示してくれただけに過ぎない。その搬送された誰かが陽菜の兄とは限らないのである。
だがそこから戀が連想したのは、あの日陽菜の兄が事故に巻き込まれた可能性について。酷く酔っ払い、足元もおぼつかなかったと言う。あの通りの平日のあの時間の交通量は分からないが、年末に近づくにつれて事故件数は上がっているようにも感じる。
それは日が落ちるのが早くなるからとも言えるだろう。翌日は祝日というから、遅くまで出かけていた人がいても不思議ではない。
政府や地方自治体から自粛を促された期間は県などにもばらつきはあるものの、主に三つの期間。沖縄以外では解除されていたところもあるとのことだ。
20年4月7日から5月25日。
21年1月8日から3月21日。
同年の4月25日から9月30日。
そう、あの年の11月22日は自粛の期間から外れているのである。人の流動が戻り始めた時期。羽目を外していた者がいても不思議はないだろう。
「中、入りましょうか」
「うん」
頷く戀の背中を軽くさする叔母の手。”大丈夫よ”とでも言うように。
「戀が信じてあげなきゃ」
「そうだね」
まだ最悪の事態と決まったわけではない。今からお通夜のような気分になっていては駄目だと自分を奮い立たせる。
戀がカウンターに腰かけると、心配そうにこちらに視線を向ける陽菜。彼女の隣には父が座っていた。
「待たせてごめん。簡単に状況を説明してた」
無理に笑顔を作ると何かを察した彼女も笑顔を作る。
「今日はね、鍋を用意してあるのよ」
「へえ、それは楽しみ」
叔母の言葉に顔を見合わせた戀と陽菜。
「お父さんの分もあるわ」
陽菜の父は、帰りの遅い娘と捜索状況が気になって夕飯どころではなかったらしい。叔母の言葉にガッツポーズをきめる彼女の父。そんな様子を見ながら戀は、彼の息子が生きていることを心から願った。
叔母が準備をしてくれている間、当然話は捜索状況のことへと移る。
「図書館へ?」
今日までの状況と推理を述べたのち、次なる目的地を告げれば陽菜の父は不思議そうに聞き返す。
「ネットにその記事がないとは言えないけれど、やはり地域のことはその地域で発行している新聞の方が載っている確率は高いと思うのです」
「それなら私も手伝おう」
「お店の方はよろしいので?」
一日くらい弟子たちに任せても問題はないと言う彼。それならばと彼にお願いすることにした戀であった。
時間が遅くなってしまったため、戀と陽菜はいつもの珈琲店にいた。夕飯がまだだったからである。
「そうね。でも分かったこともあったし」
戀は車のドアを開け彼女を外に促す。予定よりも時間が遅いので彼女の父が迎えに来てくれると言う話だった。どうやら先に珈琲店にいるらしい。
店の前まで行くと中からドアが開く。車のエンジン音に気づいたのだろう。
「寒かったでしょう? 早くお入りなさいな」
叔母はいつものように心配そうに出迎えてくれた。
礼を述べる陽菜に笑顔を向けた叔母は『お父さん、先にいらしてるわよ』と中へ促す。
「戀」
「うん?」
陽菜がカウンターの父のところへ向かうのを確認し、扉の外に立っていた戀に声をかける彼女。
「何か良くないことでもあったの?」
やはり彼女は察しが良い。つき合いが長いからわかるのかもしれないが、戀の様子から何かを読み取るのが上手いのはいつものこと。その度に戀は感心してしまうのだ。
「まだ、断言はできない。でも、避けていた結論を突きつけられている気はする」
「でも確定ではないのでしょう?」
「それは、まあ」
戀が彼女から視線を逸らし床に向けるとポンと肩に置かれた手。
「大丈夫よ。身元不明の遺体に関しては照会済みなんでしょう?」
「そう言ってたね」
言わば、それに期待を繋いでいる状況なのだ。
しかしもし陽菜の兄が事故に遭い、相手が心無い者だったなら。
身元不明のご遺体がないと言うのは、警察に届け出ていない可能性もある。何処かに埋めてしまったなら見つからないだろう。
女子高生グループの一人から来た情報は、救急搬送された誰かがいたと言う事実を提示してくれただけに過ぎない。その搬送された誰かが陽菜の兄とは限らないのである。
だがそこから戀が連想したのは、あの日陽菜の兄が事故に巻き込まれた可能性について。酷く酔っ払い、足元もおぼつかなかったと言う。あの通りの平日のあの時間の交通量は分からないが、年末に近づくにつれて事故件数は上がっているようにも感じる。
それは日が落ちるのが早くなるからとも言えるだろう。翌日は祝日というから、遅くまで出かけていた人がいても不思議ではない。
政府や地方自治体から自粛を促された期間は県などにもばらつきはあるものの、主に三つの期間。沖縄以外では解除されていたところもあるとのことだ。
20年4月7日から5月25日。
21年1月8日から3月21日。
同年の4月25日から9月30日。
そう、あの年の11月22日は自粛の期間から外れているのである。人の流動が戻り始めた時期。羽目を外していた者がいても不思議はないだろう。
「中、入りましょうか」
「うん」
頷く戀の背中を軽くさする叔母の手。”大丈夫よ”とでも言うように。
「戀が信じてあげなきゃ」
「そうだね」
まだ最悪の事態と決まったわけではない。今からお通夜のような気分になっていては駄目だと自分を奮い立たせる。
戀がカウンターに腰かけると、心配そうにこちらに視線を向ける陽菜。彼女の隣には父が座っていた。
「待たせてごめん。簡単に状況を説明してた」
無理に笑顔を作ると何かを察した彼女も笑顔を作る。
「今日はね、鍋を用意してあるのよ」
「へえ、それは楽しみ」
叔母の言葉に顔を見合わせた戀と陽菜。
「お父さんの分もあるわ」
陽菜の父は、帰りの遅い娘と捜索状況が気になって夕飯どころではなかったらしい。叔母の言葉にガッツポーズをきめる彼女の父。そんな様子を見ながら戀は、彼の息子が生きていることを心から願った。
叔母が準備をしてくれている間、当然話は捜索状況のことへと移る。
「図書館へ?」
今日までの状況と推理を述べたのち、次なる目的地を告げれば陽菜の父は不思議そうに聞き返す。
「ネットにその記事がないとは言えないけれど、やはり地域のことはその地域で発行している新聞の方が載っている確率は高いと思うのです」
「それなら私も手伝おう」
「お店の方はよろしいので?」
一日くらい弟子たちに任せても問題はないと言う彼。それならばと彼にお願いすることにした戀であった。
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