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3『唯野と塩田』
4 想いが通じ合うとき
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****side■唯野
納得いかないなと思いながらも、唯野は一旦、それについて板井に追求することはやめた。
──板井は塩田とつきあってはいるけれど、なんでもない……って、どういうことだよ!
「課長?」
気まずそうにこちらを伺う、板井。やはり納得いかない。板井と塩田は仲が良いと思う。笑談するような感じではないが、言いたいことを言える仲。それを日々、羨ましいと思ってきた。
他所の部署からすれば、苦情係はアットホーム。仲が良いという評価を受けている。しかし自分は立場上、どんなに仲良くなろうとしても壁があるのだ。
──年齢のせいかも知れないが、な。
「板井は、俺とどうなりたいんだ?」
ケジメをつけ、ここに来た。そして想いを告げたが、少しややこしいことになっている。
「俺は課長のことが、好きです。できることなら、おつきあいしたい」
唯野の左手を掴む板井。彼は唯野の手を口元にもってゆくと、ちゅっと薬指の根本に口づける。唯野は、ロマンチックなことをするんだなと思いながら、その仕草を眺めていた。
「塩田のことは?」
と問えば、
「つき合っているのを、互いに忘れていた関係ですよ?」
と言われる。
「仲、良いじゃないか」
唯野の言葉に彼が一瞬、驚いた顔をした。そして悪戯っぽく笑うと、
「課長、妬いてます?」
と、問われる。唯野はたじろいた。
「あ、当たり前だろ」
嘘をついても無駄だと思う。相手は、十以上も年下。駆け引きなどせず素直でいるべき。唯野はそう思った。
だが、板井には意外だったようだ。
「可愛過ぎるんですが」
と、言われてしまう。
「板井、あのさ」
「はい」
唯野はドキドキしながら彼を見つめた。これから口にすることは、まだ若い彼には重いかも知れない。しかし真剣なおつき合いがしたいと思った。
「残りの人生はお前にやるから。だから、ずっと側にいてほしい」
それは懇願。一緒に朝食をできなかったあの朝。行かないでと言えなかったあの時。
自分はただ、板井に側に居てほしかったのだ。
「俺の全てはお前にやるから」
縋るように言ってうつむくと、抱きしめられた。
「そんなこと言って、別れたいなんて言っても別れてあげませんよ?」
「言わないよ」
そっと彼の背中に腕を回すと、緊張で身体が強張る。これだけではないのだ、自分の覚悟は。
「ねえ、課長」
「プライベートで、課長はやめろよ」
ムード台無しだぞと思ってると、
「修二さん」
と耳元で呼ばれ、固まる。
──お前なんなの?!
見かけによらず、ロマンチストなのか?!
ドキドキしすぎて、死にそう。
「下の名前で呼ばれるの、嫌ですか?」
「嫌じゃない」
「それは良かった。ところで、わざわざ風呂入ってから来たってことは、そういう意味と受け取っていいんですよね?」
唯野のもう一つの覚悟。察しのいいの彼は、気づいている。
「いらないかも知れないけど、俺の初めてお前にやるよ」
「俺のために、修二さんが足開いてくれるんですか?」
唯野は黙って頷く。
「あなた、タチじゃないですか」
と、板井。
「なにもやれるものないけど。お前になら、いい。何されても」
「すごい殺し文句。唆りますね」
板井は抱きしめていた腕を解くと、唯野の顎を掴み軽く口づけた。
「簡単には、寝かせてあげませんからね」
「痛くしないで……」
「何なんですか?! クソ可愛いんですが」
興奮した板井に唯野は押し倒されたのだった。
納得いかないなと思いながらも、唯野は一旦、それについて板井に追求することはやめた。
──板井は塩田とつきあってはいるけれど、なんでもない……って、どういうことだよ!
「課長?」
気まずそうにこちらを伺う、板井。やはり納得いかない。板井と塩田は仲が良いと思う。笑談するような感じではないが、言いたいことを言える仲。それを日々、羨ましいと思ってきた。
他所の部署からすれば、苦情係はアットホーム。仲が良いという評価を受けている。しかし自分は立場上、どんなに仲良くなろうとしても壁があるのだ。
──年齢のせいかも知れないが、な。
「板井は、俺とどうなりたいんだ?」
ケジメをつけ、ここに来た。そして想いを告げたが、少しややこしいことになっている。
「俺は課長のことが、好きです。できることなら、おつきあいしたい」
唯野の左手を掴む板井。彼は唯野の手を口元にもってゆくと、ちゅっと薬指の根本に口づける。唯野は、ロマンチックなことをするんだなと思いながら、その仕草を眺めていた。
「塩田のことは?」
と問えば、
「つき合っているのを、互いに忘れていた関係ですよ?」
と言われる。
「仲、良いじゃないか」
唯野の言葉に彼が一瞬、驚いた顔をした。そして悪戯っぽく笑うと、
「課長、妬いてます?」
と、問われる。唯野はたじろいた。
「あ、当たり前だろ」
嘘をついても無駄だと思う。相手は、十以上も年下。駆け引きなどせず素直でいるべき。唯野はそう思った。
だが、板井には意外だったようだ。
「可愛過ぎるんですが」
と、言われてしまう。
「板井、あのさ」
「はい」
唯野はドキドキしながら彼を見つめた。これから口にすることは、まだ若い彼には重いかも知れない。しかし真剣なおつき合いがしたいと思った。
「残りの人生はお前にやるから。だから、ずっと側にいてほしい」
それは懇願。一緒に朝食をできなかったあの朝。行かないでと言えなかったあの時。
自分はただ、板井に側に居てほしかったのだ。
「俺の全てはお前にやるから」
縋るように言ってうつむくと、抱きしめられた。
「そんなこと言って、別れたいなんて言っても別れてあげませんよ?」
「言わないよ」
そっと彼の背中に腕を回すと、緊張で身体が強張る。これだけではないのだ、自分の覚悟は。
「ねえ、課長」
「プライベートで、課長はやめろよ」
ムード台無しだぞと思ってると、
「修二さん」
と耳元で呼ばれ、固まる。
──お前なんなの?!
見かけによらず、ロマンチストなのか?!
ドキドキしすぎて、死にそう。
「下の名前で呼ばれるの、嫌ですか?」
「嫌じゃない」
「それは良かった。ところで、わざわざ風呂入ってから来たってことは、そういう意味と受け取っていいんですよね?」
唯野のもう一つの覚悟。察しのいいの彼は、気づいている。
「いらないかも知れないけど、俺の初めてお前にやるよ」
「俺のために、修二さんが足開いてくれるんですか?」
唯野は黙って頷く。
「あなた、タチじゃないですか」
と、板井。
「なにもやれるものないけど。お前になら、いい。何されても」
「すごい殺し文句。唆りますね」
板井は抱きしめていた腕を解くと、唯野の顎を掴み軽く口づけた。
「簡単には、寝かせてあげませんからね」
「痛くしないで……」
「何なんですか?! クソ可愛いんですが」
興奮した板井に唯野は押し倒されたのだった。
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