R18【同性恋愛】リーマン物語if5『塩田と板井と苦情係』

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6『恋愛経験者と未経験者たち』

9【R】電車の不安

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****side■電車でんま

 大好きだった相手が自分に身を任せる姿を見ながら、電車は幸せだなと感じていた。ロマンチックとは程遠いが、彼に求められることが何よりも嬉しい。
「はあ……ッ」
 ゆっくりと腰を進めては引く。言葉にしなくても良いのは見ていれば分かる。閉じた瞳がわずかに震えていた。その頬を撫でれば、不思議そうにこちらを見つめる瞳。
「大好きだよ」
 自分がどれほど彼を好きなのか伝わればいいなと思いながら囁けば、キスを強請られる。こんな姿を見られるのは自分だけなのだと思うと、優越感が襲う。
 塩田が副社長、皇から求愛されていたことは知っていた。奪われたくなくて、しょっちゅう彼の家に入り浸っていたのだ。なんだかんだと理由をつけて。

「……ッ」
 何度目か分からない快感の波が彼を襲う。塩田は感じるままに身を任せる人だった。強がらない、自分を偽らない性格から予想はできたものの。
 二人の間を汚す愛しい熱を電車でんまが彼の身体からふき取ってやると、ぎゅっと抱き着かれた。
「気持ちいいの?」
と問えば、あんなに抗議していたのがウソのように素直にコクリと頷く。
 電車はそんな彼の背中に腕を回すと、優しくその背を撫でた。

──可愛いなあ。

 電車でんまは長男な為、甘えられることには慣れている。彼は甘えるようなタイプではないと思っていたが、意外とそうではないことを知り心地よさを感じてた。

──そういえば、恋人間でも兄弟と同じような役割を果たすというのを何かでやっていたなあ。

 塩田は一人っ子。何に対しても反対する両親の元で、ひたすら我が道を独走していたらしい。厳しい両親なのだろうかと思ったが、どうやらそうではないようだ。以前、苦情係の課長である唯野が、塩田の母を”魔王”と言い間違ったのが非常に気になるところではあるが。
 お付き合いをして、こういう関係になったからには近いうちに挨拶に行かなければならないだろう。自分は少なくとも結婚を前提に真剣な付き合いをしているつもりだ。親に気に入られることに越したことはない。

──塩田の両親に挨拶に行くということは……。

 そこで自分の家のことを思い出し、少し気の重くなる電車。電車の家庭は少し特殊な家族構成である。
 電車の父は最初の妻、電車の実母を病気で失ってから五回再婚をしていた。その為、腹違いの弟妹が五人いる。子供は全員父が引き取ったので、一緒に暮らしており、電車は今でも義母たちと交流があった。実母を喪っている電車のことを心配してくれる、優しい義母たち。

──義母に紹介するのはいいけれど、問題は父だよなあ。

 呑むと女性に手を出してしまう、下半身の緩い父は電車にとって恥以外の何物でもなかった。
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