息吹アシスタント(息吹という名の援護人)

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62・いじめられっ子、フュージョンで逆襲せよ6

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62・いじめられっ子、フュージョンで逆襲せよ6


 すさまじい恐怖、荒波のように起こるはげしい後悔、それらを胸にしたとき、悲思惟勤はもっともやってはいけない姿勢に出てしまう。

(う……)

 地面に転がったままうずくまる。ギュッと包まるように、赤ん坊のように、いかなる暴力もすべて受けて流す代わり、体の部位であまりダメージを食らいたくない所だけは守る。そしてただジッと不幸な時間が過ぎるのを、いたぶられる子羊みたいな姿で待つ。

「バカかテメェ、向かってこられないくせに人を呼びつけやがって」

 垂矢、うずくまりおびえる勤の尻に靴の先を押し当て突っ込むようにグリグリやる。

「おい悲思惟よぉ、おまえどんな風に育ったんだよ。最初に一目見て思ったぜ、弱いくせに自分は大丈夫ってツルツルな自信だけが頼りな奴って。弱いくせに自分の居場所はしっかり確保されているってカン違いが多そうなやつって。おれからすればイジメてくださいって言われているようにしか見えないから、だから望み通りにしてやっている。悲思惟よぉ、おまえの父親って腑抜けだろう? 弱くて隅っこでビクビクして、いいように使われ残業だらけで、それでもまったく出世できませんって人間のクズなんだろう? あぁ、ちがうか?」

 蹴られたりケツの穴を足でグリグリされる中、父親をバカにされ胸が痛んだ。勤の胸にかなりの痛みが生じた。

 親の悪口を言われる。情けない自分に話を結びつけるため、そのために親が悪く言われる。それを経験する今、勤は初めて知った。なんと胸が痛い、なんと申し訳ない、そしてとても耐え難い。

(く……)

 怒りよ、正当なる戦闘意識よ沸き上がりたまえ! と思う。父をバカにされて涙が出そうにすらなる。だがそれでも、身についてしまった事なかれ主義と臆病さが邪魔をする。そんなおそろしい事をやってはダメだ! とか、相手もいつかわかってくれるとか、ありえない思考で自分の立ち上がりを抑え込む。

「ふん!」

 ガン! と思いっきり勤の頭を踏みつける垂矢、また唾を吹きかけると、汚物をつぶさんという感じでグリグリ踏む。

「悲思惟よぉ、おまえの親っていうのは父もダメなら母親もダメなんだろう、母親もクソでマヌケなんだろう?」

 この時、さっきの数倍ほど痛いという感覚が胸を貫く。悪口が母親に及んできたとき、勤の脳がビリビリっとショートを起こす。そんな事を知らない垂矢は本格的に勤の母を馬頭し始めた。

「だってあれだもんなぁ、父親のサイフからごっそり金を抜くなんて中々できないよな。だからあれだろう? いつもおまえは母親のサイフから金を抜いてきたわけだろう? 500円玉1枚ならいざしらず、あれだけ抜かれて気づかないんだろう? 絶対そうだ、おまえの母親は息子にたくさん金を盗まれても気づかずのほほんとして息子はいい子と信じるマヌケだろう? だからおまえみたいなバカが生まれるんだろう?」

 その声は勤の心のかなり奥、そして小さいながら聖域みたいに守られている場所に届いた。要するに立ち入り禁止って領域に土足で入り込んだわけであり、さすがの勤も一線を超えないわけがないとなる。

「ん?」

 へらへら笑っていた垂矢の足が突然につかまれた。

「なんだテメェ、力比べでもやる気か?」
 
 垂矢は冷ややかな目で踏みつけようとするが、なぜか踏み込めない。突然に力が逆転したようになり、踏めないどころか体をひっくり返されそうになる。

「な……」

 ドン! と音がした。相手を踏みつけようとしていた者がひっくり返り、踏まれようとしていた者がついに立ち上がる。そう、ついに、ついに、悲思惟勤が真っ向勝負にと立ち上がった。

「今からおまえら全員病院送りにする、ひとりも逃がさないし、絶対に許さない。だがその前に一つ聞こう。ヤンキーみたいなバカはすぐ言う事を変えたりするだろうかなら、あらかじめ聞く。これはおまえらのせいで発生した流れだからな、おれに病院送りにされたって文句はないよな? なぁ? なんとか言えよ」

 言われて立ち上がる垂矢、首をコキコキやりながら大きな声で言った。やれるものならやってみろ、こっちは何一つ文句はないと。

「そうか、それで安心して半殺しにできる」

 ポケットからスマホを取り出した勤、これで録音はOKだとか言ってからまたポケットにしまう。それから両手を合わせ、指を鳴らしながら表情を険しいモノに変えていく。

「おまえらは人の名誉を散々に傷つけたあげく、人の親までをも侮辱した。この何とも言い難い怒り、おまえらを半殺しにすることで清算させてもらう」

「悲思惟よぉ、今のは殺されてもいいって覚悟の発言だな?」

 垂矢の目がド腐れモードに移行。苦しさをやり過ごすために無感情となるのではなく、人をいたぶる事に全力でよろこびを感じるという、ヤンキーという人種に備わっている外道フィーリングを最大解放。

 このとき、垂矢の後ろにいた一人が前に出た。どうせハッタリ、ほんとうは怖くてたまらないんだろう? と笑いながら勤に近寄っていく。

「ムリするなよ悲思惟ちゃんさぁ」

 そう言って手を伸ばした時だった。ググっと握られていた右手が神速のスピードでストレートを放つ。その速さに重みが乗っかると、ましてや顔面のど真ん中に入ると、相手は鼻血を噴水にして吹き飛ばされそうになる。

「おっとまだまだ、そんなかんたんに倒れるな、ヤンキーなんて体力以外に何の取り柄もない人間以下の生物なんだからさぁ」

 左手で相手の胸倉をつかんだ勤、相手の背中を校舎の壁に向けさせると、グッと押して右腕を振りかぶる。

「う、うあ……」

 ほんの一瞬、殴られる側がおびえた。それは0.3秒くらいのモノかもしれない。だがそこにはかなりぶっ太い怖さがあった。

 ガン! どぎつい右ストレートがもう一発、さっきより重く入た。すると殴られた側が哀れな声を出す、アワアワとか言う。なぜなら上も下も前歯というモノがすべて砕け散ったせいだ。ボロボロっと口から出て地面に落ちていく。

「言ったろう、絶対許さないって!」

 殴る、殴る、今まで受けた屈辱やら痛みを100倍にして返さんと勤が相手を殴る。顔面を殴ると残っていた歯がどんどん砕け散っていく。そしてボディーにパンチを入れるとブワ! っと血を噴き出すが、そこには砕けた白い歯の破片も交じる。

「は、は、はぅわあぁ……」

 相手の顔面はケチャップ塗りの大出血。そしてすべての歯がなくなって人間の言葉をしゃべれなくなった。泣きながら何かを言って転がりまわっているが、もはや人間として会話する事は不可能。

「さて……」

 転がり回る者の頭をグリグリ踏みつけてから勤が振り返ると、その一瞬って出来事に声を出せない面々がいる。なんだ、いったい何事だ? と、起こった出来事を目の当たりにしてなお理解ができないって顔をしている。

「井時目以外の2人、おまえら雑魚だから先にかかって来いよ。井時目だって、大物とか思う自分の出番は最後がいいだろう?」

「悲思惟……てめぇ……」

 垂矢、なんとなく怖いからこの場から離れようとした2人を引き留める。逃げるんじゃねぇバカ野郎といい、おまえらが先に捨て石になれと命令。

「2人がかりでやれば負けるはずがないだろう!」

 垂矢に一喝され2人は少し勇気づいた。そうだ、2対1なら楽勝だと思い、怖気づいていた顔に安心が戻り始める。それを見て垂矢は2人に忠告しておく。

「おまえらは半殺しまでな。本殺しはおれがやる。だからまちがっても、おれより先に悲思惟を殺したりするなよ」
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