息吹アシスタント(息吹という名の援護人)

jun( ̄▽ ̄)ノ

文字の大きさ
68 / 223

68・実はずっと前から息吹くんが好きだったんだよ1

しおりを挟む
68・実はずっと前から息吹くんが好きだったんだよ1
 

「死んでよみがえったとかなれば、やっぱり定期的に行きたくなる……マックってすごいわ、ほんとうに」

 息吹、晴天の午前11時くらいにマックに立ち寄ろうと思った。今日は何事もない平和な一日だろうとか思いながら、〇〇駅の近くにある御馴染みの看板へと向かっていく。するとまったく予想していなかった事だが、突然に後ろから声をかけられた。

「息吹くん?」

 そのかわいい声は若い女であり、息吹? ではなく息吹くん? なんて少量のカンゲキ交じりな音色。

「うん?」

 は? いったい誰だ? と思う息吹は立ち止まると、声のした方向へと振り返った。

「家満登息吹くん……でしょう?」

 立っている若い女がマシュマロみたいにやわらかい笑みを浮かべた。ちょっとばかり赤らめている頬を兼ね合わせれば、息吹に恋する女子って感じでしかない。

「え……誰だっけ?」

 息吹は向かい合う女を見て大急ぎで脳の記憶箱を開ける。そして、眼前の女と一致するのは誰だっけ? と思うが答えが出て来ない。

 女、見た感じの年齢は息吹と同じくらいか。フワッとやわらかそうなブラウンのショートレイヤーって髪型が大変よく似合っている。白のバックスリットスキッパーブラウスを纏い、その上にはピンクのカーディガン。そして下は黒ロングスカート。色白ふっくらなスィーツ系女子みたいなイメージが空気に流れており、多くの者の目をグイグイひっぱるすごい巨乳ってふくらみの持ち主でもある。

「悪い……誰だっけ?」

 息吹は思い出せない自分を素直に出し謝った。すると相手はにっこり微笑みながら、わからなくても仕方ないよとつぶやく。

「高1のとき同じクラスにいた田村かな子って言ったら思い出す?」

「田村かな子?」

 ここで息吹は再び記憶箱をかき分けるようにしてあさる。23歳という年齢にしてみれば、高校1年生はまだ近い過去。数多くの女を食って泣かせた自分にしてみれば思い出せないはずがないとする。だがあれだけたくさんの女と日々やりまくっていた割には、どうしても田村かな子って名前と顔が出て来ないのだった。

「ま、せっかく再会したんだし、ちょっと言いたい事もあるからさ、マックでもいかない?」

 言ったかな子の顔がより一段と赤らむ。その顔は誰がどう見ても恋という一文字の貼りつきそのもの。

「いいけど……」

「やった!」

 こうして2人は傍から見ればカップル以外でしかないという感じで並んで歩き、まだ混雑する前のマックに入った。

「息吹くんが好きなのは……変わっていないとすればエビフィレオだよね?」

 並んでいる時にふっとかな子がつぶやく。なぜわかる? と驚いたと息吹が顔を向けると、かな子はこう説明した。

「他の女の子と会話している声を聞いたことがあるんだ。マックのメニューなら何がいいって、そこで息吹くんはエビフィレオだなぁって言っていた」

「そ、そうだっけ? それっていつ?」

「高1の……たしか9月20日、昼休みが終わるちょっと手前くらい、教室前の廊下で話をしていたよね」

「ちょ、ちょっと……日付とか時間まで覚えているのかよ」

「だって……」

「だって? なんだよ」

「好きだったんだもん、息吹くんの事が」

 うふってかわいくテレた顔を見せられると、ウソを言っているようには見えず感じもしない。だから息吹は不思議なキモチになる。確かに昔の自分は近くにいるすべての女を食っていたわけではない。だがそれに近いくらいの事はしていたので、なぜここまで思い出せない女がいるのだろうかと。

「とりあえず、話は席に座ってからにしよう、ね?」

「わかった」

 息吹、今すぐにでもあれこれ言いたいのを抑える。注文した品がのっかるトレーを両手に持って階段を上がったら、ちょっとばっかり落ち着いて会話がしやすいであろう奥のテーブルに腰掛ける。そうしたら向かいにかな子も座る。そのときフルって豊満なふくらみが揺れ動いたりする。

「ねぇ、息吹くん……あのさぁ、聞いてもいい?」

 Wチーズバーガーの包みを開きながらかな子はさっそく話を切り出した。死んだとかいう風の噂はなんなのかと。

「ものすごく心配していたんだよ。だって刺されて死んだらしいとか聞くけど、ニュースに出ないし」

「まぁ、ホストが刺されて死んだなんて別に大きなニュースにならないって事だろう」

 息吹は今さら未練も怒りもなしとばかり、ホストだった自分が客の女に刺されて死んだ話を聞かせてやる。そして一度死んだにも関わらず舞い戻ってあれこれ悩める人間の手助けみたいな事をしているのだと説明する。

「ウソじゃない。まぁ、アタマがおかしいと思われても別に気にしないけどな」

「そ、そんな事ない、信じるよ……驚きだけど信じる。だって……わたしは息吹くんの事がずっと好きだったから」

「それだよそれ、おれ……どうしてもおまえが思い出せない。ひどい罪悪感をおぼえるけど、どうしても思い出せない」

 息吹が所有する生前の記憶によれば、高校生になったらあれやこれやと多くの女を食いまくった。クラスメートという女で見た場合、全員ではなかったがそれに近いくらいは食いまくった。それで思い出せないのはどうして? とかな子を見ながら逆に問いかけてしまう。

「仕方ないんだと思う……」

「なにが?」

「だってあの頃……わたしはすごく地味だったから。たしかにあの頃から巨乳ではあったよ、おっぱい95cmのGカップとかだったから。でもメガネをかけていたし、髪の毛も黒の重々しいロングヘアだったし、恥ずかしいから巨乳を控えめに見せるようなあざとい演出もしていたし、みんなからはマジメで何の面白みもない委員長みたいなイメージだとか言われていたし」

「委員長みたいなイメージ?」

 ここで息吹の脳がビリっとした。そう言えば……的な表情で固まったまま、向かいの巨乳女子を見ながら、やっとこさ記憶から該当する存在を引っ張り出す事に成功。

「そ、そういえば……」

「思い出してくれた?」

「あぁ……そう言えばものすごく地味で存在感がゼロみたいな女子がいたなぁって、たしか名前は田村だったかなぁっていま思い出した」

「そうそう、それがわたし。今みたいにかわいくなかったけど、でも同じだよ、それがいまここにいるわたしと同じ田村かな子だよ」

「なかなか思い出せなくて悪かった……」

 息吹はエビフィレオを食いながら、見事な変わり具合だと感心した。あの頃の田村かな子と同一人物だなんて言われないと気づかない。それはまさしく、女という生き物だけが成し得る魅力的な成長というモノ。

「し、しかしだな……」

「どうしたの?」

「おまえがおれを好きだったってほんとうに? だっておれ、自分で言うのはなんだが……相性が合いそうは言うまでもなく、自分に気があるって女を感じ取る能力も高かったんだ。そういう女をひたすら食っていたんだけどな」

「仕方ないよ、あの頃のわたしは一皮むけていなかったし、ただ憧れの目線を向けるしかできなかったから」

「あこがれ? ウソだろう、おれのどこにあこがれていたんだよ、だっておれ名うての女好きだったし、それだけで生きていたようなゲスだったんぞ」

「だからだよ、かっこういいなぁって思っていた」

「えぇ……」

「ほんとうだよ、ウソじゃないよ、いつも思っていたんだ。息吹くんになら抱かれてもいいなって。わたしに声をかけてきたら、いつでも応じるのになぁって。ずっと待っていたけど、結局わたしは声をかけてもらえなかった」

 まったく突然にして意外な話に息吹のアタマは正直ついていけない。女を食うのがおれの人生と思い突き進んできたのに、まさか女から憧れの目線を向けられるとは考えたことすらなかったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

​『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』

月神世一
SF
​【あらすじ】 ​「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」 ​ 坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。  かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。  背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。 ​ 目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。  鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。 ​ しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。  部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。 ​ (……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?) ​ 現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。  すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。  精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。 ​ これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。

「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」と言われたので別れたのですが、呪われた上に子供まで出来てて一大事です!?

綾織季蝶
恋愛
「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」そう告げられたのは孤児から魔法省の自然管理科の大臣にまで上り詰めたカナリア・スタインベック。 相手はとある貴族のご令嬢。 確かに公爵の彼とは釣り合うだろう、そう諦めきった心で承諾してしまう。 別れる際に大臣も辞め、実家の誰も寄り付かない禁断の森に身を潜めたが…。 何故か呪われた上に子供まで出来てしまった事が発覚して…!?

愛のかたち

凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。 ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は…… 情けない男の不器用な愛。

俺様御曹司に飼われました

馬村 はくあ
恋愛
新入社員の心海が、与えられた社宅に行くと先住民が!? 「俺に飼われてみる?」 自分の家だと言い張る先住民に出された条件は、カノジョになること。 しぶしぶ受け入れてみるけど、俺様だけど優しいそんな彼にいつしか惹かれていって……

【完結/番外追加】サリシャの光 〜憧れの先へ〜

ねるねわかば
恋愛
彼女は進む。過去に囚われた者たちを残して── 大商会の娘サーシャ。 子どもの頃から家業に関わる彼女は、従妹のメリンダと共に商会の看板娘として注目を集めていた。 華々しい活躍の裏で、着実に努力を重ねて夢へと向かうサーシャ。しかし時には心ないことを言う者もいた。 そんな彼女が初めて抱いた淡い恋。 けれどその想いは、メリンダの涙と少年の軽率な一言であっさり踏みにじられてしまう。 サーシャはメリンダたちとは距離をおき、商会の仕事からも離れる。 新たな場所で任される仕事、そして新たな出会い。どこにあっても、彼女が夢を諦めることはない。 一方、光に囚われた者たちは後悔と執着を募らせていき── 夢を諦めない少女が、もがきながら光を紡いでいく軌跡。 ※前作「ルースの祈り」と同じ世界観で登場人物も一部かぶりますが、単体でお読みいただけます。 ※作中の仕事や制作物、小物の知識などは全てフィクションです。史実や事実に基づいていないことをご理解ください。

皆さんは呪われました

禰津エソラ
ホラー
あなたは呪いたい相手はいますか? お勧めの呪いがありますよ。 効果は絶大です。 ぜひ、試してみてください…… その呪いの因果は果てしなく絡みつく。呪いは誰のものになるのか。 最後に残るのは誰だ……

ドリンクバーさえあれば、私たちは無限に語れるのです。

藍沢咲良
恋愛
同じ中学校だった澄麗、英、碧、梨愛はあることがきっかけで再会し、定期的に集まって近況報告をしている。 集まるときには常にドリンクバーがある。飲み物とつまむ物さえあれば、私達は無限に語り合える。 器用に見えて器用じゃない、仕事や恋愛に人付き合いに苦労する私達。 転んでも擦りむいても前を向いて歩けるのは、この時間があるから。 〜main cast〜 ・如月 澄麗(Kisaragi Sumire) 表紙右から二番目 age.26 ・山吹 英(Yamabuki Hana) 表紙左から二番目 age.26 ・葉月 碧(Haduki Midori) 表紙一番右 age.26 ・早乙女 梨愛(Saotome Ria) 表紙一番左 age.26 ※作中の地名、団体名は架空のものです。 ※この作品はエブリスタ、小説家になろうでも連載しています。

処理中です...