息吹アシスタント(息吹という名の援護人)

jun( ̄▽ ̄)ノ

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177・ホレた女のため戦え2

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177・ホレた女のため戦え2


「ふわぁ……ヒマ、ぶっちゃけ死にそうにヒマ」

 こんな事をぶつぶつ言いながら繁華街をほっつき歩いているのはサキュバスだったりする。

「最近はセックスしまくりのせいで色々つまらない気がする。あたらしい刺激のために女同士の交わりとか思っても、あの子ども巨乳ことビューティーかすみが応じない。だからしてこんないい女であるわたしがとても退屈って状態に陥ってしまう」

 午前10時過ぎのいい天気の下において、不健康丸出しなぼやきをやりながらブラブラっと歩く。しかしそんなサキュバスは突然に足を止め、この繁華街で一番デカいマックへ向かっていく一人って姿に目をやる。

「え、え、え、え、え、あれって……閻美?」

 サキュバスがやや大げさって感じに驚くのは決してウソではなかった。白い着物で身を固めるグラマー美人という閻美が、ただいまは黒いスーツにスカートというOLみたいな格好をしているのだから。

「閻美!」

 これはだまって見過ごせないとばかりすぐさま声をかけて歩み寄るサキュバスだった。

「げっ……おまえか……」

 会いたくなかったぜ……って感情を素直に隠さない閻美、なんて格好をしているわけ? と相手に言われたら仕方なくちょっと付き合えと命令調で言い、すぐそこにあるマックに向かってクイっと顔を動かす。

「閻美って服装が変わっても中身はエラそうだねぇ……」

「いいから来い」

 こうして2人は中に入って、双方とりあえずドリンクだけという注文をして2階に上がり向き合いの着席。

「で、おまえは聞きたいんだろう? わたしがなんでこんな格好をしているのか? って」

 熱いコーヒーの中に白いフレッシュとシュガーを入れグルグルかき混ぜる閻美を見ながらサキュバスはさっそく言う。

「いやぁ、閻美のIカップって爆乳でも着れるスーツがよくあったなぁと思っちゃってさ」

「はぁ? なんだって?」

「あ、いや、おほん! なんでそんなダサい格好? いつもの白い着物の方がさ、あんたのかっこういい感じにぴったり合っていると思うけど」

「今日はだな……こういうダサい格好の方が向いているキブンなんだよ」

「自分がダサい女と認めたってこと?」

「おまえ……あ、いや、そうかもな、ある意味ではそうかもしれない」

「なに、閻美がそんな風に素直とかめっちゃキモいんだけど」

 ここでチッと舌打ちした閻美、今日はデートなんだよと口にする。しかしもっとも肝心なデートという言葉が、サキュバスには相当な意外だったゆえ、すぐさま脳やら感情に浸透しない。

「デート? そんなスポーツあったっけ?」

「アホか! デートだデート、誰かといっしょに過ごすという……」

「お、もしかして閻美と息吹がデート? そうかそうか、ついに来るべき時が来たか。後は閻美が妊娠するのを待つだけだね」

「相手は息吹じゃない……」

「へ? じゃぁ誰とデートするわけ?」

「佐藤グラディアートルだ……って、おまえは知らなかったな」

「佐藤グラディアートル? 誰それ」

「はぁ……」

 ここまで話した以上は仕方ないとして、閻美は出来るだけコンパクトに話をまとめて説明した。

「以前にだな、地獄にやってきた亡者の一人、男がわたしにホレたとか言い出した。かねてよりわたしに早く彼氏を作れとうるさかった父は、息吹だけじゃなくその男も恋人候補にしておいた方がいいとかなんとかいって蘇らせたあげく、息吹みたいな特殊能力の持ち主にした。で、今日はその父が勝手に決めたデートって話に乗っからねばならなくなったというわけだ」

「いいじゃん!」

「よくない! どこがいいんだこんな話……ったく、わたしは自分の父親がうざったくてたまらない」

「いやいや、閻美ってプライドが高いからさぁ、強制でもされないと扉が開かないわけよ。わたしは閻美の父上にザブトンを進呈したいわ」

「チッ……」

 閻美曰く、デートまでまだ少しは時間はあるが、とても落ち着いていられないからやや早くからウロウロしたりコーヒーを飲んだりしているとのこと。

「それでその……サキュバス……」

「なによ顔を赤くして……まさかわたしにホレたとか? わたしと爆乳同士のレズをやりたいとか?」

「アホか……頼むからマジメに聞いて欲しい」

「なに?」

「その、一応デートする以上は知っておきたい。ぶっちゃけデートって何をすればいいんだ?」

「何って……いっしょに歩いて話をするだけでもいいじゃん。デートっていうのは2人でいることに意義があるんだから」

「おまえにしてはとてもマトモなアドバイスだな」

「ま、最終目的地はラブホテルになるけどね」

「ラブホテルは横に置いておいて、デートではどんな話をすればいいんだ?」

「ふつうでいいじゃん」

「そのふつうがわからないんだよ」

「いや、閻美……飾った会話などよくない。それは本心と離れていく上にたのしめないもんね。それにいい格好しようとする自分は相手に誤解だの悪い印象を与えるだけ。素直になるしかない、素の状態で突撃するだけだよ」

「そんな事を言われても……わたしはつまらない女だからなぁ」

「だったら面白くなっていけばいいじゃん。そうやって悲劇ぶるだけで努力しない女に明るい物語は来ないぞ、閻美」

「く……おまえに良い事を言われて詰まってしまうなんて考えもしなかった」

「で、閻美、その佐藤グラディアートルってどんな奴よ」

 閻美がデートするという相手がどんな男か興味津々なサキュバス、ハイテンションで生きる女子高生みたいなノリで両目をきらきらさせる。
 
「まぁ……一言で言えば思いっきりマジメなやつだな。そして生前の職業は格闘家だ」

「格闘家でマジメ……だったらそいつ童貞じゃない?」

「ぅ、そ、それはわからないが……でもそんな気もする。おまえ、すごいな。物事をよく知っているんだな」

「えっへん! で、わたしは話を聞いて確信しちゃうね。そいつ、まちがいなく閻美にお似合い。プライドの高い女と筋肉バカでマジメな男って抜群の食い合わせだよ」

「食い合わせとか言うな……」

「いやいや、恋愛なんてもんは乗っかれる時に乗っからないとダメだよ。閻美と佐藤グラディアートルは絶対お似合い。だから息吹なんか、かすみって子ども巨乳にくれてやればいいじゃん。わたしがもらってもいいぞ」

「く……正直……イヤだ……」

「ま、とりあえず要らぬプライドを捨てて、素直な自分でデートしてくればいいじゃん」

「サキュバス……おまえが横にいてわたしたち2人を引っ張ってくれるとかいうのはダメか?」

「アホか、小学生女子じゃあるまいに。そんな腑抜けだからいつまで経っても相手のいない処女爆乳なんだよ、閻美は」

「ぅ……し、しかし……」

「まだ何かあるわけ?」

「い、いやその……わたしは息吹に気があるわけで、それなのにデートをするのは佐藤グラディアートルに悪いという気が」

「デートするだけなんでしょう? 結ばれなきゃペナルティーがあるって話ではないんでしょう?」

「当たり前だ。ただデートするだけだ」

「だったらいいじゃん。イチイチあれこれ考えるな。セックスと同じで、やってしまえば後はどうとでもなるから」

「いちいちセックスを引き合いに出さないでくれ……」

 こんな会話を2人はやっていたが、そろそろ行くと言って閻美がスクっと立ち上がる。まったく気が乗らないというテンションの低さは後姿より生々しいオーラとして放たれている。

「ま、閻美が女として一皮剥けるにはいい話だね。で、こうなると2人がどんな感じでデートするとか拝んでみたいねぇ。いや、これはもうバッチリこっそり拝むしかないでしょう」

 クククっといやらしい笑いを小さく浮かべたサキュバス、少し遅れてから立ち上がり、悪い女という心いっぱいに閻美の尾行を開始する。
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