200年後の日本は、ゾンビで溢れていました。

月見酒

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ぶらり旅

下手な指導者

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 カーテンの隙間から入り込む日差しで目が覚めた。

「おはよう弘毅」
 零奈の声が聞こえてくる。ああ、やっぱりいいな。誰かと過ごすって。

 そんなことを思いながら零奈を見ると煙草を吸いながらUSPを拭いていた。なんか、凄い光景だな。絶対に200年前だったらあり得ない光景だぞ。
 ま、あれだな。性格は違うけど。完全にブラッ◯・ラグーンの◯ヴィーだな。


 俺は立ち上がると軽くストレッチをする。
 首回し、腰捻り。
 ポキッ、ポキポキッ、ポキッ。
 うん。相変わらずだな。俺の体が固いのかいろんな箇所が鳴る。今回は特に凄かったのか零奈が目を見開けて驚いていた。

「弘毅あなたどれだけ骨をならしてるのよ。不気味よ」

 酷い!

 声には出したら反論されそうなので口にしないがかなりの精神的ダメージを朝から受けてしまった。


「それじゃ朝飯にしようか。今日は洋風にするね」
「へえー、洋風とかあるのね?」
「うん。いっぱいあるよ。ま、入れ物が缶だから見た目は悪いけど……」
「食事が出来るだけで有難いのにそこまで求めるのは愚か者よ」
「すいません………」
 はい、弘毅君! 朝から精神のHPゼロになりました! 後は………頼んだ。

「別に弘毅を責めてる訳じゃないわよ? 食事をさせて貰ってる私が言えないだけで弘毅は別に良いと思うよ」

 ……………復活!! 

 ヤバイ! 零奈さんマジ天使! 
 この子、男子だったら沢山の女子が惚れてるよ!いや、マジで! 男の俺でも一瞬、ドキッとしたよ!
 もしや、わざとそうしてるのか!? 
 零奈、なんて恐ろしい子!

 ま、そんなわけ無いよね。俺はお礼を言うと朝食である洋風セットを渡した。
 それぞれの缶の中を開けてみると、コンポタージユ、ハムエッグ、サラダ、クロワッサンが入っていた。うまそうだけど、やっぱりなんで缶なんだ。食欲を少し減らすだけだぞ、これ。
 俺はそんなことを思いながらハムエッグを食べる。うん、美味い。





 食事を終えた俺達は食後の煙草を吸いながらこれからの事を話す。
「互いに目的地が無いからどこに向かっても良いけど安全性を考えるなら動かない方が妥当だよね?」
「そうね。でもダメよね」
「そうだね。でも、動くにしても俺的にはまだ動くつもりはないよ」
 俺の言葉に首をかしげる。
「どうして?」
「まず、移動手段がない。バイクはあるけど長距離を二人乗りするのは危険だから。あと零奈には色んな銃を試してもらうため」
「ま、確かにバイクだと危ないわね。車は無いの?」
「あるには有るけど買わないとダメだから」
「お金は無限にあるんでしょ?」
 その言葉に俺は右手で後頭部をかく。

「確かにそうなんだけど何故か車両や特殊武器、支援なんかはポイントで買わないとダメなんだ。車なんかは一度買えば買い直さなくて良いけど……」
「便利かと思ったけど以外と面倒なのね」
「うん」
 否定できないのがなんか悔しい!

「で、そのポイントをためる方法は?」
「奴等をたくさん殺すこと」
「なるほどね」
 なんとなく理解したようです。
 零奈はタバコの火を消すと口を開いた。

「それで、なんで私に他の武器を試してもらいたいの?」
「理由は二つ」
 俺は右手の人差し指と中指を立てて説明する。「まず、1つ目はその銃だけでは心配だから。持つな。とは言わないけどバンドガンは大抵がサブ武器だ。メインになることはそうない」
「成る程ね。確かにこの銃はお父さんの形見だけど。もう一丁持った方が確かに良いわね」
 それを聞いて内心ホッとする。いや、父親を亡くしたショックで嫌がったらどうしようかと思ったよ。
「それで、二つ目は?」
「二つ目は、俺が渡した武器で奴等を殺したときにポイントが入るか試したいから」
「確かに出来るのならポイントも直ぐに貯まるし、武器の種類が増えるのは良いわね。荷物が増えるわけでもないから良いと思うわ」
「ほんと! それならーー」
「ーーただし、武器は私が選ぶのと扱いかとを教えて」
「別に良いけど。なんで聞いたの?」
「いや、だって………嫌がると思ったから!」
 身を乗り出して言ってきた。ち、近い!あ、胸がみえゴホンゴホン!

「確かに人に自分の武器を持たせるのを嫌がる人もいるし教えるのが面倒だって言う人も居るけど俺はそんなことないよ」
「ありがとう」
 ま、確かに教え方の問題で嫌がる人もいるから気を付けないとな。

「それじゃ武器を選んでいこうか」
「分かったわ!」
 何だか嬉しそうだな。それにしても…………………可愛いな! はい、すいません! 真面目に武器選びと指導をさせて頂きます!


 サブきであるUSPにあわせてバランスのよい銃を選ぶことにした。
 二人で話しあった結果その場の状況にあわせて武器を変える事になった。

 そして、メイン武器は3つに絞った。この3丁を状況にあわせて変えるのだ。

 まず、1丁目はスナイパーライフル。
 名は『M24SWS』である。
 アメリカで製造され軍用狙撃銃として使われている。
 ボルトアクション方式で7.62×51mmNATO弾を使用している。装弾数は5発(固定式)だが、他のスナイパーライフルに比べ肩にくる衝撃が弱いため女にも扱いやすい銃である。
 だが、ボルトアクション方式であり、装弾数が少ないため市街戦には向かないとされている。ま、確かにそうなんだけど。たった数体の相手には向いてるだろ。それに大量に出た時にスナイパーライフルは使わないから大丈夫。


 2丁目は、アサルトライフルで。
 名は『ステアーAUG』オーストリア製の軍用アサルトライフルで、内蔵部品にまでプラスチックを多用した、ハイテクライフルの走りになった銃だ。全長は790mmと短いがバレルがグリップの後ろにあることにより銃身長が508mmある。これはG3やカラシニコフよりも長いのだ。
 弾は5.56×45mmNATO弾で装弾数は30発。箱形弾倉は42発と使い分けが可能なのだ。また、プラスチックを使っていることにより計量にも成功してるため女性にも扱えるのだ。


 3丁目はサブマシンガン。
 名は『UZI(SMG)』だ。イスライル製の軍用短機関銃で、9×19mmパラベラム弾をしようし装弾数は20・25・32・40・50発と選べるのがメリットだ。またストックが折り畳み式なためその場の状況で肩止めするか、しないかを選べるのだ。


「こんなところかな」
「ほんと、弘毅って色んな物持ってるのね。生活費んだけじゃなくて武器まで」
「気がついたら備わった能力だからね。使わない手はないよ」
「確かにそうね」

「それじゃ射撃訓練しようか」
「は、なに考えてるの。的なんか無いし、それに撃ったら音であいつらがよってくるじゃない」
「的なら他の窓ガラスを的がわりにするとかしたらいいし。それに奴等が来てくれないと俺が困る」
「困るって、奴等になりたいの、弘毅!」
「違う違う、旅をするにもバイクより車が良いだろ。でも車を買うには奴等を倒してポイントを貯めないといけないから」
「……分かったわよ」
 なんとか分かってくれたか。

「それじゃ、最初はどれにする?」
「M24SWSにするわ」
「分かった」
 俺はアイテムボックスからM24SWSを取りだし玲奈に渡す。
「思ったより少し重たいのね」
「ま、これは筋トレでもして馴れないとだめだからね」
 こうして玲奈の射撃訓練が始まった。




 射撃訓練を始めて数日。俺は疲れていた。特に精神的に。

バンッ!バンッ!バンッ!
「んもう!どうして当たらないのよ!」
「そんな事言われても。ただ狙うだけじゃダメだって言ったよね」
「分かってるわよ!弘毅が教えるのが下手なのよ!」
「ごめんなさい」
 俺の体は長年銃を扱ってきた自衛隊の人のように感覚的に狙うだけで命中するのだ。そのためまともに練習したわけでもない俺は教えるのが下手なのだ。ま、口下手ってのもあるけど。
 それでも少しずつ当たるようになり、今では10発中6発は的の中心辺りに命中するようになった。いや、ほんと疲れたよ。

「ねぇ、今さらだけど弘毅は私といて楽しい?迷惑じゃない?」
「どうして?俺は楽しいよ。ずっと一人だったから誰かと話したいって思ってたのもあるけどそれでも零奈と話したり出来て、会えて、嬉しかったし楽しいよ」
「そ、そう……」
「でも、教えるのが下手だから怒らせてばかっりだけど」
「そうね、弘毅は口下手だもんね」
「面目ない」
 俺たちは笑う。どうでもいい、下らないことで笑う。正確にはここ最近笑い合うようになった。
「それじゃ続けようか」
「ええ」
 零奈はM24SWSを構えスコープを覗く。

「弘毅。奴等よ」
 玲奈は低い声音で伝えてくる。俺もすぐさまL96A1を取りだしスコープを覗く。
「何時の方向?」
「2時の方向。数6……8……9……11どんどん増えてる」
「本当だな。きっとそれなりに離れたやつが来たんだ」
 確かに建物のかげから奴等がうようよと出てきている。

「でも、どうして? そんなに離れてたら」
「音がするものなんて風やそれによって物同士のぶつかり合う音ぐらいさ。最近は風も出てないから銃声が響いたんだと思う」
「なるほどね。どうするの?」
「なるべく手前の奴の頭を狙って。そしたら一発で死ぬから。無理なら胴体でもいいから」
「分かった。でもあまり私をなめないでよね!」

 バンッ!


 零奈はトリガーを引いた。すると吸い込まれるように7.62×51mmNATOU弾が手前のゾンビの頭を撃ち抜く。す、すげ~。

 その時、脳内でなにかが鳴った気がした。俺はすぐさまステータスパネルを開くとそこには、

      ──────────────────

 スキル獲得
スキル名 連携プレイ
詳細
 自分の武器を相手に渡しその武器でヘッドショトを決めることにより獲得するスキル。
 なお、仲間との信頼を強めていけば効果が増えたり新しいスキルを獲得が可能になる。また、相手にもアイテムボックスなどの力が付与されることもある。
効果
 ・仲間が殺したポイントが入る。
 ・仲間も「リロード」と言えばリロードが短縮可能

 
        ─────────────────


 マジかよ。でも、ありがたい。
「零奈、気にせず撃ち殺せ」
「分かってるわよ!」
「あと、弾が無くなったら俺みたいにリロードって叫べ!」
「分かってるわよ!って本当に?」
「ああ、新しい力がてに入った。その力が仲間にも使用可能なスキルだ」
「わかった。弘毅を信じる!」
 こうして俺たちは奴等を撃ち殺していく。

「リロード!」(俺)

「リロード!」(玲奈)
「リロード!」(俺)

「リロード!」(俺)

「リロード!」(玲奈)

「リロード!」(俺)

「「リロード!」」

 やはり、俺の方が正確性、スピードは早い。それでも一人よりかは遥かに楽だ。


 そして、約40分にもなるホテル防衛戦(?)は終わった。

「疲れた」
「ほんとね。流石にあれだけの数を連射したから肩が痛いわ」
 肩を回しながら片手でタバコを吸う。こういう時の零奈ってかっこ良くて、クールだよな。性格はどちらかと言えば天真爛漫だけど。

「今失礼なこと考えてなかった?」
 鋭い視線で睨んでくる。こ、怖い。


「イエ、カンガエテマセン」


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