200年後の日本は、ゾンビで溢れていました。

月見酒

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ぶらり旅

女は恐い!

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「あ、あの零奈さん……」
「……………」
「食事の準備が出来ましたが……」
「……………」
「聞いておられるでしょうか?」
「……………」
 どうやら零奈さんはいまだに機嫌が優れないようです。ま、その原因を作ったのは俺なんですけどね。でも言わせてくれ! 不可抗力なんだ! 誰も気絶させるつもりなんて無かった。それに零奈を助けるためでもあったんだからそこまで怒らなくても良いような気がする。

「はい、ご飯」
「……………」
「はぁ……」
(なんで私を押し倒さないのよ!)
 そんな事を零奈が考えているなど俺は知るよしもなかった。
 重たい空気のなか俺たちは食事をした。ここまで食事が喉を通らないのも稀だった。
 それから教会の一室でランプを眺めながら一服していると。

「……んん…………んん……ん!」
 シスターが目を覚ました。けど……。

「お目覚めのようね。イカれシスターさん」
 相手を見下すように言う零奈。うん、なんかドSが滲み出てるな。さっきに言っておくが俺にそっちの趣味はないから!………ほんとだからな!
 正直俺的にはシスターに同情してしまう。なぜなら、

「んんんんっ!!」
 両手両足を拘束され、口にはガムテープが貼られているからだ。

「あの……零奈さんそろそろ口のテープだけでも剥がしてあげても良いと思うんですが」
「は?」
「いえ、あのですね。このままだと会話も出来ないし、先に進まないと思うので」
「別に良いわよ。どうせこのままここに放置すればいいだけなんだし」
 恐い! 恐いよ零奈さん!

「いや、流石にそれは可哀想だと思うのですが」
「なに、弘毅はこのシスターの味方なの?」
「いや、そういう訳ではなくて。話し合いは大事だと思うんですよ。はい」
「最初にガン無視したのはこのイカれシスターなのよ!」
 その通りです。

「でもね。相手にだって何か事情があるのかも知れないし、それに初対面の人間を警戒するのは当たり前だよね。零奈だって俺に銃を向けてきた訳だし」
「うっ! 確かにそうだけど! でも、私はこの女みたいに、いきなりぶっ放したりしてないじゃない」
 うわ、女の人の口からぶっ放す、なんて初めて聞いた。なんか良いな。はい、話を進めます!

「そうだけど。お祈りの邪魔をしたのは俺たちなんだし、驚いて発砲したのかもしれないし。手と足の拘束は解くわけじゃないから話するだけなら良いよね」
「……………分かったわ」
 ふう、なんとか解ってくれたようだ。
 さてと、俺はシスターに近づきガムテープを剥がす。うん、めっちゃ睨んでる。安心してなにもしないから。って無理か。

「さてと、それじゃ話そうか。あ、俺の名前は烏羽弘毅からすばこうき宜しく。それで、君の名前は?」
「………………」
 うん、まだ睨んでる。お願いだからなんか喋って!

「あ、あの聞こえてる?」
「………………」(コクリ)
 あ、頷いた。聞こえてはいるみたいだな。

「なら、喋れないの?」
「………………」
 無反応! え、なんで? 聞こえてはいるんだのね!

「あ、あの……」
「………………」
 うわ、睨みが強くなってるよ! 恐いよ。
 ぐるぎゅるるるる。

「ん?」
「なに、今の音?」
 突然、擬音が教会の一室に響き渡る。
 ん? シスターさんの顔が赤い。まさか。

「もしかしてお腹が空いたの?」
「……………………………」(コクリ)
 そうみたいです。

「それじゃなにか食べる?」
「ちょ、弘毅! なに馬鹿な事言ってるのよ!」
「え、だってお腹が空いてたら脳も働かないし。まともに話すなら食事の後の方が良いかなって」
「だからってあげる必要は無いわよ!」
「別に減るわけじゃないし」
「そ、それはそうだけど……」
 一度アイテムボックスから取りだし食べれば減るが、食料は無限にあるので減るという概念は存在しないのだ! 凄いだろ! はい、俺が威張る事ではないですね。すいません。

「なら、良いよね。それで何が食べたい? 白ご飯? パン?」
「……………」
「あ、あの……」
「……………」
「白ご飯?」
「……………」
「パン?」
「……………」(コクリ)
 パンか。なら、今日は寒いしコンソメスープとハムエッグ、サラダで良いかな。
 俺はメニュー画面から料理を選ぶ。あ、疑問符浮かべてる。ま、端から見たら確かに何してるんだって思うよな。
 俺は料理を選び取り出すと彼女の前に置く。

「はい、どうぞってそのままじゃ食べれないよね」
「弘毅!」
「な、なに?」
「ダメよ」
「え?」
「絶対拘束を解くのはダメ」
「でもこのままじゃ食べられないし」
「犬みたいに食べれば良いわよ」
「鬼か!」
「ん、なに?」
「いえ、なんでもありません」
 恐いよ! 今日の零奈さん超機嫌が悪いよ!

「分かったよ。でも流石に犬みたいに食べさすのは気が引けるし………あ、そうだ!」
 俺は料理が乗ったお盆を膝の上に置き、パンを一口サイズに千切り彼女の口の前まで差し出す。

「はい、あ~ん」
「……………」
 うん、流石に困ってるのかな。目をパチクリさせてるよ。

「弘毅!」
「は、はい!」
「食べさせてあげるなんてなに考えてるのよ!」
「え、だってこれしか方法がないし」
「そうじゃないわよ!(私だってそんなことされたことないのに)」
「ん? 最後なんて言ったの?」
「なんでも無いわよ!」
 あ、どっか行っちゃった。ま、この教会の周りには監視カメラやトラップをしかけてるから出なければ安心だけど。
 それより、今は。

「はい、あ~ん」
 早くこの子と話さないと零奈さんに殺されるからな。
 女心の分からない弘毅であった。
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