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ぶらり旅
理不尽だ
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教会防衛線が終わる頃には割れたステンドグラスから日差しが差し込んでいた。
壊れているとはいえ、日光によって煌くステンドグラスはとても神秘的で美しく思えた。もしもこの世に神が居るのならきっと祝福してくれているに違いない。
戦いが終わったせいか張り詰めていた気がいっきに抜け落ち疲労と徹夜で急激な睡魔に襲われる。が、まだ寝るわけにはいかない。
夜の戦いだった事もあり、澄んだ空気のせいで銃声は途轍もなく響いた筈だ。もしも近くに奴らが居れば間違いなくこっちに向かってくる筈だ。倒したゾンビたちを放置したまま寝るわけにもいかない。血や脳漿、蛆なんかがそこら中に付着しているし、死臭が漂っていて寝れたものじゃない。臭ぇ。
まずは、死体を裏庭に集める。零奈もサラ嫌なのは分かるが、俺一人にやらせようとしないでくれ。
「こういうのは男の仕事でしょ」
「力仕事は男がするもの」
都合悪いときだけ意気投合しないで貰いたい。
「なら、血や脳漿の掃除は任せた。掃除は女がするものだろ」
「何言ってるの。掃除は男でもするでしょ。そういう偏見は捨てたほうが良いわよ」
「うん」
理不尽だ。
「分かった。死体片付けたらこっちも手伝うから掃除していてくれ。用具室にモップとかあった筈だから」
「分かった」
「まったく徹夜なんて肌に悪いんだからね」
アバウトな世界になるとどうやら人間は自己中になるらしい。俺は心のメモ帳に書き込むのだった。
「ほら、早くしなさい」
「分かりました」
先ほどまでのチームワークが嘘みたいに奴隷扱いされる。ほんと理不尽だ。
疲労と睡魔と闘いながら俺は死体を一箇所に集めてガゾリンをぶっ掛けて火葬する。大量の死体を燃やすのに長時間掛かり、結局終わったのは日が傾き、空が茜色になったときだった。今後死体処理する事を考えて火炎放射機を手に入れていたほうが良いかもしれないな。でもあれ特殊武器だからな。
項垂れながら教会内に戻ると。
「遅い! 私達だけで掃除しちゃったわよ。あとお腹すいたわ」
「私も」
「今すぐご飯出しますね」
お疲れ様の一言もなく缶飯をアイテムボックスからとりだす。最初に会う人間違えたかな。今になって後悔する俺だった。
結局この後美味しく缶詰をためた後、熟睡しました。いや、疲労と睡魔と満腹感の3コンボ凄いや。目を瞑って数秒もしない内に意識が無くなったからな。
次の日になり、この町の探索しようかと零奈と話し合っていると、
「この街には何も無い」
サラが突如話しに入ってきた。
「どういう事?」
「弘毅が火葬した人たち私の仲間だった人たち」
「…………」
あまり表に表情を出さないサラだが、この時だけは涙が溢れ出ていた。そんな彼女の気持ちが分かるのか零奈は何も言わず、抱きしめる。すると呻き声にも似た嗚咽が教会内に響き渡る。
何故かは分からないが俺はこの時彼女達を見ないように背を向けて煙草に火と点す。殺風景だがどこか神秘的な教会内に悲しみと煙草の煙だけが広がる。
どれだけ時間が経ったのか分からない。10分やそこらじゃ無いのは確かだが、ようやく収まってから話を再開する。
「私達はここから北北西にある避難所に向かおうとしていたの。だけどその途中で一人が急にゾンビになったの。倒したけど、まだ噛まれた奴が居るかもって皆擬人暗記になって、そしたら………」
「仲間割れによる殺し合いか」
「………うん」
ま、よくある話だ。これまでそうならなかったのが不思議なくらいだ。
「私は物陰に隠れてたから全て見たわけじゃない。でも、最後は同士撃ちでリーダーと親友が死んだ。で、私は一人になった」
「なるほどね。ならこれからの事も考えて私達にも決め事作っていた方が良いかもね」
「え? 私も一緒に言っていいの?」
「当たり前でしょ。死地を切り抜けた仲間なんだから」
「ありがとう………」
こういう時の零奈の性格は助かる。俺には無理だ。それにしてもサラは大分喋れるようになってるな。この調子で笑顔が増えれば良いけど。ま、それは気長に待つとしよう。
で、その後話し合いの結果、決まった事はリーダーは俺。何故俺と最初は思った。その理由は戦闘経験が豊富だからだそうだ。そんな簡単に決めていいのか?ま、いいや。
安全が確認できない野営は交代制で最初は零奈、サラ、俺の順に決まった。特殊武器が手に入ればそれも必要なくなるけど。
で、一番大切な事が、もしも噛まれた場合どうするのか。その結果、サラと零奈が噛まれた場合は俺が撃ち、俺が噛まれた場合は零奈が撃つらしい。俺だけ憎まれそうな感じがするが、これは俺が率先して決めた。正直この二人にはさせたくない。って思ったからだ。ま、この程度で憎まれるぐらいどうってことない。女の子にトラウマを残すほうが問題だからな。だから俺はけしてゾンビどもに噛まれて遣るものか!
俺は心に刻むのだった。
「本当にあるか分からないけど、次の目的地は北北西にある避難所、西日本第28避難所って事で」
「ええ、それで良いと思うわ」
「うん、私もそれで良い」
こうして一時間が俺達は新たな目的地に向けて出発した。リーダーなのにどうして俺が運転なんだろう。二人は後部座席で寝てるし。はぁリーダーって大変だな~。
壊れているとはいえ、日光によって煌くステンドグラスはとても神秘的で美しく思えた。もしもこの世に神が居るのならきっと祝福してくれているに違いない。
戦いが終わったせいか張り詰めていた気がいっきに抜け落ち疲労と徹夜で急激な睡魔に襲われる。が、まだ寝るわけにはいかない。
夜の戦いだった事もあり、澄んだ空気のせいで銃声は途轍もなく響いた筈だ。もしも近くに奴らが居れば間違いなくこっちに向かってくる筈だ。倒したゾンビたちを放置したまま寝るわけにもいかない。血や脳漿、蛆なんかがそこら中に付着しているし、死臭が漂っていて寝れたものじゃない。臭ぇ。
まずは、死体を裏庭に集める。零奈もサラ嫌なのは分かるが、俺一人にやらせようとしないでくれ。
「こういうのは男の仕事でしょ」
「力仕事は男がするもの」
都合悪いときだけ意気投合しないで貰いたい。
「なら、血や脳漿の掃除は任せた。掃除は女がするものだろ」
「何言ってるの。掃除は男でもするでしょ。そういう偏見は捨てたほうが良いわよ」
「うん」
理不尽だ。
「分かった。死体片付けたらこっちも手伝うから掃除していてくれ。用具室にモップとかあった筈だから」
「分かった」
「まったく徹夜なんて肌に悪いんだからね」
アバウトな世界になるとどうやら人間は自己中になるらしい。俺は心のメモ帳に書き込むのだった。
「ほら、早くしなさい」
「分かりました」
先ほどまでのチームワークが嘘みたいに奴隷扱いされる。ほんと理不尽だ。
疲労と睡魔と闘いながら俺は死体を一箇所に集めてガゾリンをぶっ掛けて火葬する。大量の死体を燃やすのに長時間掛かり、結局終わったのは日が傾き、空が茜色になったときだった。今後死体処理する事を考えて火炎放射機を手に入れていたほうが良いかもしれないな。でもあれ特殊武器だからな。
項垂れながら教会内に戻ると。
「遅い! 私達だけで掃除しちゃったわよ。あとお腹すいたわ」
「私も」
「今すぐご飯出しますね」
お疲れ様の一言もなく缶飯をアイテムボックスからとりだす。最初に会う人間違えたかな。今になって後悔する俺だった。
結局この後美味しく缶詰をためた後、熟睡しました。いや、疲労と睡魔と満腹感の3コンボ凄いや。目を瞑って数秒もしない内に意識が無くなったからな。
次の日になり、この町の探索しようかと零奈と話し合っていると、
「この街には何も無い」
サラが突如話しに入ってきた。
「どういう事?」
「弘毅が火葬した人たち私の仲間だった人たち」
「…………」
あまり表に表情を出さないサラだが、この時だけは涙が溢れ出ていた。そんな彼女の気持ちが分かるのか零奈は何も言わず、抱きしめる。すると呻き声にも似た嗚咽が教会内に響き渡る。
何故かは分からないが俺はこの時彼女達を見ないように背を向けて煙草に火と点す。殺風景だがどこか神秘的な教会内に悲しみと煙草の煙だけが広がる。
どれだけ時間が経ったのか分からない。10分やそこらじゃ無いのは確かだが、ようやく収まってから話を再開する。
「私達はここから北北西にある避難所に向かおうとしていたの。だけどその途中で一人が急にゾンビになったの。倒したけど、まだ噛まれた奴が居るかもって皆擬人暗記になって、そしたら………」
「仲間割れによる殺し合いか」
「………うん」
ま、よくある話だ。これまでそうならなかったのが不思議なくらいだ。
「私は物陰に隠れてたから全て見たわけじゃない。でも、最後は同士撃ちでリーダーと親友が死んだ。で、私は一人になった」
「なるほどね。ならこれからの事も考えて私達にも決め事作っていた方が良いかもね」
「え? 私も一緒に言っていいの?」
「当たり前でしょ。死地を切り抜けた仲間なんだから」
「ありがとう………」
こういう時の零奈の性格は助かる。俺には無理だ。それにしてもサラは大分喋れるようになってるな。この調子で笑顔が増えれば良いけど。ま、それは気長に待つとしよう。
で、その後話し合いの結果、決まった事はリーダーは俺。何故俺と最初は思った。その理由は戦闘経験が豊富だからだそうだ。そんな簡単に決めていいのか?ま、いいや。
安全が確認できない野営は交代制で最初は零奈、サラ、俺の順に決まった。特殊武器が手に入ればそれも必要なくなるけど。
で、一番大切な事が、もしも噛まれた場合どうするのか。その結果、サラと零奈が噛まれた場合は俺が撃ち、俺が噛まれた場合は零奈が撃つらしい。俺だけ憎まれそうな感じがするが、これは俺が率先して決めた。正直この二人にはさせたくない。って思ったからだ。ま、この程度で憎まれるぐらいどうってことない。女の子にトラウマを残すほうが問題だからな。だから俺はけしてゾンビどもに噛まれて遣るものか!
俺は心に刻むのだった。
「本当にあるか分からないけど、次の目的地は北北西にある避難所、西日本第28避難所って事で」
「ええ、それで良いと思うわ」
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