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14 抱き竦められて
しおりを挟む――二人を背に乗せた馬は、ゆっくりとではあるが道をそれることもなく城へと進んでいった。
ゆるやかな丘を登り、城の門をくぐり中庭へと入る。城の門を潜って到着した殺風景な中庭で、馬はその歩みを静かに止める。陽が暮れ始めて薄闇に包まれたなかで、領主がシタンの体を両手で深く抱きすくめてきた。
「な、なにすんだよ」
背中に当たる胸板からとくとくと、強く速い鼓動が伝わってくる。抱きすくめる腕の力は弱く、振り払えばきっと簡単に逃れられるだろう。
「私がまだ怖いか?」
か細いほどに静かな声だった。
今まで確かに、領主を怖いと思っていたはずだった。だが、こうして柔らかく抱きすくめられながら脈動を感じていると、自分でもおかしいとは思うが怖いとは全く思えなかった。
「今日は……、なんか、怖くないな。アンタ、どうしたんだよ……」
それどころか、不安気に縋り付いてくる子供のような、どこか頼りなさ気な印象すら受ける。他人に刃を向けて脅す恐ろしい領主にそういう例えは無い気もするが、そう思えてしまったのだから仕方がない。
「……怖くはないなら良い」
「良いって、何が、あっ……!」
するりと下腹に忍ばされた指先が、やんわりと肌を押してきた。腹の奥がじんと熱くなって尻の辺りが疼いた。
「ん、あ……」と、口から淫らな声が漏れて、腰を小さく前後させ尻を鞍に擦り付けてしまう。
「今夜は、手荒な真似などしない」
甘さを含んだ艶っぽい声で囁かれた。耳元に感じる息が熱い。
「ひいっ! あっ、う、や、やめろよ……っ! あうっ……!」
淫らな刺激から逃れようと身を捩るシタンを咎めるように、下腹に触れた指先に力が込められてぐんと熱があがっていく。強引に犯されたときに腹の中に感じた、あの熱だ。あのときほどの熱量ではないが、確かに同じ……。
「あ、あっ……」
またあんな酷い快楽に突き落とされるのか。
怖い!
嫌だ!
そう叫びたいはずが、口から出るのは喘ぎに近い吐息ばかり。やたらと気持ち良くて、ぐっと腰が重くなってくる。
「私の注いだ熱は、ここにまだ燻っている」
「ん……っ! あぅ、はぁっ……」
指先で腹を押されただけで深く感じてしまい、腰が勝手に大きくはねて体が傾いた。そのまま鞍から落ちそうな恐怖に襲われて、必死に馬の首筋にしがみ付く。
「うぅ……っ、こ、こんなとこで、変な真似するなよぉっ……!……お、落ちるっ!」
「降ろすぞ。私に掴まれ」
いつの間にか馬を降りていた領主の腕の中へと、熱く火照った体を引きずり下ろされた。
「うわああっ!」
首筋になんとかしがみついたが、足に力が入らない。歩きたくても歩けず、情けないことに領主に抱えられ城の中へと運ばれてしまったのだった。
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