愛の鎖が解ける先に

赤井ちひろ

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第五章

2 月下香の夜花

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   ――怖い。
 ――体がすくむ。
 ――ばれちゃいけない。
 ――鉄壁のポーカーフェイス、ここで使わなくていつ使う!
 ――笑え、三渕葵。
 僕は自分に催眠をかけるように、大和さんの首に手を回した。
 目元にキスをするようにべろりと舐められ、怖くて目を瞑りそうになるのを一生懸命我慢し笑ってみせた。
 猛るペニスの先端に催淫剤が塗り込まれ、すでに堪えきれない程に痒く……腰を振らずにはいられない。
 怖さと気持ちよさが同居する。
 振り下ろされた鞭の痕から滲む血に、目の前の男は舌舐めずりをして目がギラリと妖しくひかる。
 ――僕はこの顔を知っている。
 幾度も出そうになって、いつもすんでの所で我慢する大和さんも、よく知っている。
 自分の性癖を知りつくし、それが恋人を追い詰めると彼は思っている。
 でも実際はただの相性だ。紬君と僕じゃフィジカルの強さも違う。
 紬君の心臓には耐えられなくても、だから二度と恋人を作らないは短絡的だ。
 何度言ってもわからないバカな男が、僕は死ぬほど好きみたいだ。
 僕はただの声フェチで、性癖は至って普通だった。
 バリネコでもなきゃドマゾでもない。だから痛いのが好きだとかデカキャ嬉しいとか全然ない!なるべく優しく普通がいい。僕を愛してくれて優しく愛撫されて、体を気遣いながら初夜だって迎えたい。
 そもそも東條さんとするまで28迄童貞でバージンでって天然記念物級だと思ってる。葵はまさかこんなにも自分が相手に執着するなんて知らなかった。唯一無二の譲れない声が、葵の脳内を侵食する。
『アイツはお前の物だ。誰にも渡すな……』
 ――まただ。脳内に声がする。
 
 だから今僕が一生懸命我慢するのは、大和さんだから……。こんなにカッコ良くて仕事も出来て、出世頭で、イケボで、モテモテで……それなのに自信の欠片すらない男。僕を大切にするあまり他の男で欲を解消しようとか……意味がわからないバカな人が、僕は心底欲しいって思う。
「血を見てゾワゾワってするのは細胞レベルで相手を望んでいるからなんだって、知っていた?」
 葵は東條に聞いた。
「そうなのか?」 
「そうなら良いなって、なんかで読んだのを信じているんだ」
 葵は東條にしがみつき、ペニスを東條の太腿に擦り付けながら息をはぁはぁさせていた。

「気持ちいいか?」
 オモチャの先端が鈴口を苛め続ける。
 こくこくと頷く葵の口に指をネジ込み東條はどう気持ち良いのか言えと言う。涙を浮かべた葵はご主人様の命令のまま声をだした。
「あん、あはん、先端のおしっこ出るとこが、痒くて、でも逝きそうで逝けないからちょっと……辛い……」
「後ろの穴にも入れるぞ」

 
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