鬼に連れられ異世界へ〜基本俺はついでです〜

流れ華

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プロローグ

契約

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「なっ、紅月てめぇ・・・月読命つくよみのみことのところにいってたんじゃ
ゲフォぁッ!!」

拘束が解け、のしかかっていた重みが消える。
蓮也を組み敷いていた鬼が、蹴り飛ばされたのだ。

「ゲホッ、ゴホッ・・・こうげつさ・・・」

月を背に紅月が立っている。軽く肩が上下していて、急いできてくれたことが分かる。

「あぁ、大体のことはわかっているから無理して話さなくていい。
私は、あの鬼に用がある。」

飛んで行った鬼の方に目をやると、木に強かに頭を打ち付けたらしく伸びていた。
(あれほど怖かったアレがいとも簡単に・・・)

「・・・気絶してませんか?」

「おや、ホントだ。この程度なのに私に喧嘩を売ろうとした、と。浅はかだな、私に喧嘩を売ろうなんぞ、千年早い。」

嘲りや蔑みよりも呆れが強いため息をつくと、ズルズルと神社の裏の方へ引きずっていく。

「蓮也、ちょっと待っててくれ。コレをちょっと懲らしめてくる。」

そのまま引きずりながら、神社の裏手へ消えていく。
(掴んでたの足だし、頭を石にぶつけてたな・・・痛そうだったけど、鬼だし大丈夫だよね。)

何故か、怖い目に遭わされたはずの鬼を心配したことに気がついた。

「まぁ、あれだけ圧倒的だとね・・・。」


かすかに聞こえた断末魔は聞こえないふりをして、手首を回したり、背筋を伸ばしたりして、痛みが残っていないか確認する。無駄な抵抗をしなかったおかげか、痛めた場所はないらしい。ただ、掴まれていた手首が赤黒く変色してしまった。
(母さんや父さんに見つかったら面倒だな・・・七実はもっと面倒だ・・・。)
どうも蓮也の家族は、蓮也に対して過保護すぎるところがある。少し帰りが遅くなっただけで異常に心配された。きっと、夜中にこっそり抜け出したことがバレたら、両親は卒倒するんじゃないか?

ため息をついて、重い体を鳥居にあずける。
見上げれば、満月に近い月が煌々と輝いている。
(誰にもバレないわけないよな。だって、お月様が見てんだから。)
幼い頃に、昼間の悪いことはお天道様が、夜の悪いことはお月様が見てるんだよと言われたことを思い出す。
幼い頃の戒めは、まだ蓮也の中で活きている。
(お天道様もお月様も、誰かに言ったりしないけど絶対に見てるんだ、悪いことをすると神様に見捨てられるんだ、だっけ。今考えると深いよなぁ・・・)

「お待たせ。隣、失礼するよ。」

戻ってきた紅月が、蓮也の近くの石段に腰かける。

「あの、紅月さん。助けてくださってありがとうございました。」

きっとあのままだと死んでいた。
納得出来ないまま、後悔を抱えたまま、死ぬことになったかもしれなかった。

「いや、お礼を言うのはこちらの方だ。よく私が来るまでの間、あの鬼の誘いに乗らないでくれたね。遅くなってすまなかった。」

紅月の目は、赤黒くなってしまった手首に向けられている。

「もう痛くはないから大丈夫ですよ。」
「怖かっただろう?」

思わず口を閉じる。
怖かった、と口にするのは簡単だが、紅月を責めることになるような気がして、何より、自分が屈しそうになったことを認めることになる気がして、何も言えなくなる。

嘘は言えないたちだ。

その無言を肯定と捉えた紅月は、申し訳なさそうに頬をかく。

「・・・ごめんよ。言い訳にしかならないだろうけれど、用事があって全く気が付かなかったんだ。」

「神様の所に行っていたんですか?」

紅月が目を見開く。

「そうだけど・・・なんでそう思ったんだい?」

「さっきの鬼が、《月読命の所に行ったんじゃ・・・》って言っていたので・・・。月読命って、神様ですよね。」

納得したように手を打つ。

「聞こえてたんだ。

うん、呼ばれてたんだよ。用がなくても定期的に呼ばれるから参っちゃうよ。」

朗らかに笑う横顔は、少し疲れが滲んでいるものの嫌そうな感情は見えず、月読命を慕っていることがよく分かる。

「じゃあ、なんで俺のことを助けれたんですか?


あっ、いや、迷惑とかそういう訳じゃなくてですね・・・」

「分かってるよ、大丈夫。

それは蓮也の守護霊・・・蓮也の御先祖様が私のことを呼びに来たんだよ。《お前の契約者が大変だ。私の子孫でもあるからさっさと助けろ》ってね。」

(俺の御先祖様不遜すぎない!?《助けろ》って・・・いや、助かりましたけどね!?)
何かが蓮也の近くでエッヘンと胸を張った気がする。解せぬ・・・。

「そんな顔しなくても・・・
そもそも、私がいたのは月読命の神域だったから、来れるだけですごいんだよ。普通は消滅しちゃうからね。」

「あ、すごかったんですか。」

「ちなみに安倍晴明っていう、私の古い知り合いなんだけどね。いやーこれも縁だよね、昔の知り合いの子孫の願いを叶えるなんてさ。」

・・・ん?

「安倍晴明?」

「?そうだよ。陰陽師の中でも実力者だったのに、鬼にも理解があった変わり者だよ。芦屋あしや道満どうまんも面白いやつだったけど、あったばかりの頃は頭が固いやつだったな。」

(やっぱりあの安倍晴明か!)

まさかそんな偉人が先祖で、ましてや守護霊に・・・。

「蓮也の家系は父親が芦屋の分家、母親が安倍の分家で、さらに先祖返りで霊感は強いし霊力はあやかしが好んで寄ってくるようなものだから心配だったんだって。」

(もっとすごいことを聞いてしまった・・・通りで帰省する時に大きな家に帰ると思ったよ。)

「まぁ、結局私と契約してしまったんだけどね。」

その言葉にやはり、と確信をする。
少し難しい顔をした蓮也に何を思ったのか、紅月は安心させるように言う。

「蓮也との契約は対等なものだから大丈夫だよ。不当な対価は請求しないから安心していい。」

やはりあの鬼と契約しなくて正解だった。

「契約したのが紅月さんで良かったです。」


紅月の目が、細められる。

「どうして?私も鬼かもしれないよ?」
「紅月さんが人間じゃないってことは気づいてましたけど、もし鬼だったとしても紅月さんは悪いやつじゃないなって。」
「契約を誤魔化しているかもしれない。」
「紅月さんは嘘をついてませんでしたし、声かはっきりしていて、何も隠していませんでしたもしこれで誤魔化されたとしたら、それは俺の信じた直感が外れたってことです。」
「直感?」
「直感です。
俺の直感は外れたことがないんですよ。だから信じるんです。」

紅月は目をしばたかせ、それからクシャッと笑う。
「はは・・・、参ったなぁ。随分私は信用されたものだね。」

スっと姿勢を正して、蓮也と面と向かう。

「蓮也の気づいたとおり、私は人間じゃない。」

髪をかきあげ、額を出す。

「よく見ているといい。」


月に照らされ影から炙りだされるように、二本の角が現れる。
紅月の額に先程の鬼とおなじ、いやそれよりも太く大きい角が二本生えていた。




To Be Continued・・・・・・
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