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003*

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「ン――……ッ!!」

 くぐもった声は青年まで届かないのだろうか。本からはみ出している、見た事もない綺麗な銀色の髪が、ただ風になびいている。
 ぴくりとしもしない青年の姿が次第に歪んで、ぐるぐる回り始めた思考回路にあれ? と違和を覚える。

「んん、うぁ、はぁ……っ」

 熱い。
 あつい。

 細い触手が俺の乳首を転がすように上下に揺れている。そこから痺れるような感覚がして、段々下腹部に熱が溜まっていくのがわかる。
 滾った熱を筒形の触手が包み込んできて、あまりの快感に声が漏れた。
 じゅるじゅると得体の知れない液体で包まれて、搾り取るように熱を締め付けられている。
 中は無数の突き出たヒダがあるようで、敏感な部分を狙うようにヒダを押しつけてはゆるく上下に動かれる。
 感じやすい先端とくびれ、裏筋をそのヒダで締め付けられると、もう駄目だった。
 一気に駆け上がる射精感に思いきり腰を振って出したい、と考えて、いやまて、コイツはそもそも人間じゃないんだぞ、と頭のどこかで必死に否定する。
 その思考を邪魔するかのように、いつの間にか増えた無数の触手たちが俺の身体を優しく愛撫するように蠢いて、気が付けば上半身も裸に剥かれ、左右の乳首には無数の触手が群がっていた。
 突起を圧し潰されるようにされたり、上下に転がされたり、小さな筒形の触手がまるで赤ん坊のように吸いついてくる。
 その細かな動きは、まるで誰かの舌で愛撫されているような、そんな感覚だった。
 ……そんなことされたことないから、あくまでも想像だが。
 いつか絶世の美女とこんな濃厚な経験ができたらいいとは思っていた。責めるのも責められるのもどちらでもいい。やわらかくて良い匂いがする豊満な肉体に顔を埋めて、熱く滾った中心を内部に入れて、可愛い声をあげさせるのだと。

「ぅ、ん、ぁぁぁ……っ」

 だから自分のこんな情けない声が聞きたいわけじゃない!
 それなのに、滾ったそこを容赦なく締め付け、ずりゅずりゅと上下に動くぬめった触手が先端部分を執拗にこねくり回しながら早く出せと言わんばかりに吸い上げてくるので、我慢も限界になる。
 あ、もう駄目だ。
 出る。
 イ、く。

「……あっ……」

 びゅるびゅると甘美な放出に背を仰け反らせただ翻弄されていると、触手は一滴たりとも逃さぬというように更に俺自身を吸い上げる。大量に出た白濁はそのまま触手の餌にされたのか。
 ハアハアと脱力していると、俺の熱から一向に離れない触手に嫌な予感がした。
 イッたばかりの敏感なそこを、まだ足りないとでも言うように締め付けてくるのだ。その鋭すぎる快楽に、思わず逃げを打つ。
 鋭利なほど苦しい感覚を覚える熱に触れてほしくなくて未だに放そうとしない触手になりふり構わず腰を揺らし逃れようとしていると、ぐい、と両脚を大きく広げられた。
 その力になんとか逆らおうとしても、触手は俺の抵抗を感じてもいないような素振りで、広げた足から見える窄まりにぴと、と新たな触手を宛ててくる。

「……っ?!」
 
 射精後の賢者タイムで足を広げられた格好に心底焦り、こんな所あそこにいる奴に見られたら、あいつをどうやってでも殺すしかない、と思い顔を上げれば、彼はさっきと全く変わらない状態でまだ眠っていた。
 ほっとした反面、いくらなんでも起きてもいいんじゃないか? と睨み付ける。
 いやいや、さすがに目前でこんな目に遭ってる人間がいるだなんて思いもしないだろうけど、っていうかあいつだけなぜ無事?
 あんな無防備な格好で寝入っているのに、この辺にいたはずの魔物もこの触手も、奴には近づきもしていない。
 なんだか重要な事に気付きかけた時、先端にまだ噛みついている触手が再びヌメヌメの内部で締め付けながら俺の熱を上下に揺すったのであまりのくすぐったさに全身に力が入る。

「ああああっ、だめ、やめろ、やめ……っ!」

 なぜかその瞬間俺の口に入っていた触手が出て行ったので、思わず制止の声を上げてしまった。
 びくびくと手足を動かしなんとか逃れようとするが、容赦ない力にまるで歯が立たない。
 そうこうしていても、触手は俺のそれをじゅるじゅると吸い上げながら一定のスピードで擦りあげてくるのだ。

「やだやだやだやだ……っ、とまって、とまっ……とめろぉっ!」
 
 そこが熱くてくすぐったくて、なのにじんじんと気持ちよくて気が狂いそうだった。背筋がずっとゾクゾクとして、吸われている中心からびりびりと鋭い快楽が全身を覆う。
 なにかがでそうで、でもそれが射精のときとは違う気がして、俺は泣き叫んだ。
 にゅぷにゅぷと卑猥な音がそこからずっと聞こえ、ガクガクと腰が勝手に揺れる。

「ひ、ぃ……っ」

 天を仰ぎながら、先程とはちがう絶頂感に声をなくした。
 びゅうびゅうでてるそれは、本当に白いものなのか。粗相をしたような感覚さえするのに、たしかに俺は感じ入っていた。
 時間にしたら数秒間だったかもしれない。
 だが経験したことのないその生き地獄のような快楽に、さすがの俺もぐったりとうなだれていると、窄まり辺りでずっと表面を撫でていたその触手がぬ、と侵入を果たしてきて俺の意識は一気にそこに回る。
 まさか。
 まさかまさかまさか。
 痛みのないその感触に顔を下げて確認したいと思ったのに、再び触手が俺の口を塞いできたせいで、叶わない。

「んぐ、ううう、む、ぁ……っ」

 後孔に侵入した細いそれは、粘液を纏いながら俺の内部をウネウネと蠢いて先へと進んでいる。
 強烈な違和感に涙が滲んで、まさか俺の処女を奪うのがこんな得体の知れない生物だなんて思わなくて置き去りにしてきた仲間を思い浮かべた。
 ……いや、だからといってあいつらに捧げるのも嫌だ。
 俺は豊満で綺麗な女が好きだ!

「うぐぐ、んむ……っ、ぁぁぁ!」

 だが触手相手も嫌だ!
 必死に暴れても謎の体の火照りと、疲労したせいか俺の抵抗は既に弱々しい。
 後孔の触手が内部を濡らし、徐々に中に入り込む細い蔓のようなそれが本数を増やしても、なすすべもなくされるがままだ。
 ずりゅ、ずりゅ、とゆっくり抜き差しされて、俺、なんでこんな目に遭ってんだろうと考えた。
 そもそも魔王を倒しに来たんだよな。
 そう、魔王を……。

「むぐぐぐぐ!!」

 魔王?!
 目と鼻の先にあったはずの白い塔を思い出し、俺は目の前に寝転がったままの男を見つめて叫んだ。

「ン――…ッ!」

 その瞬間、内部を行き来していた触手がある部分を擦り、強烈な快感が襲って訳も分からず吐精した。
 数回目の射精にも関わらず断続的に出るそれを触手がゴクゴクと飲み干すように吸っている。
 まて、しんじゃう……。
 脱力し綻んで緩くなった後孔を広げるように、入り込む蔓の数が増え、そうされながらもずっと抽送はやまない。
 それはまるで快楽でもお前を殺せるのだというような動きだった。あまりの苦しさに悶え続け、息も絶え絶えになり目の前が、真っ暗になる。
 あ、だめ。
 もう、だめ。
 おれ、色事だけは鍛えてなかったから。




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