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第40話 マーゲート伯爵夫人のお茶会
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意外なことに、マーゲート伯爵夫人のお茶会は、とても楽しかった。
私は最初はとても緊張してしまったのだけれど、マーゲート夫人をはじめとしたお客様の皆様はとても自然に接してくれた。
不思議だった。
誰も、私のことを変だと言わなかった。
それどころか、ロビア家の跡取りとして丁重に扱ってくださった。
そうこられれば、私も丁重にならざるを得ない。
その方の趣味のお話をお聞きしたり、お手持ちのステキな扇子の出所や、お庭の花の種類や、当たり障りのない話題でも、相手が上手く話を繋ごうとしてくだされば、こうまで違うのだろうか。
若い男性も多く参加していたので、少しばかり話を聞くことが出来た。マーゲート夫人の息子さんも出席していて、そのお友達が来ているらしい。
「マーク・ロウと申します。マーゲート家の長男です」
マーゲート伯爵夫人の息子は、王宮で働いているのだと言った。イアン殿下の担当だそうだ。
ということは、マーゲート夫人は完全に王太子派だと言うことだ。つまり、伯母もイアン王太子派なのだ。私はちょっとびっくりしたが、カサンドラ夫人はもう失脚している。
彼は、現在、縁談が全面的にストップしていること、王子殿下の結婚さえ決まれば一斉に動き出すだろうなどと言った話を話してくれた。
「殿下のパーティで、縁談が全面的にストップって、皆様、ご迷惑ではございませんこと?」
「シンデレラ・パーティ? いや、逆に、その場で気に入った女性がいたら、おこぼれにあずかろうと思っている」
おかしくなって私は笑った。
「それも考え方ですわね」
「意外に知り合いになる機会が少ないからね。毎年、開いてもらいたいくらいだよ、シンデレラ・パーティ。参加女性は、全員フリーのはずだもの」
知り合いになる機会……私はイアンと出会った時のことを思い出した。
イアンとは、もう二度と会えないかもしれない。そう思うと胸が苦しくなった。
「どうしたの? 顔色が悪いよ?」
「いえ、そんなことは」
ああ、もう、自分が開きたいわ、シンデレラボーイ・パーティ。
もし自分が継承権のある王女様なら、イアンを探すためにパーティを開く。
国中にお触れを出して、五歳年上の黒髪の男性限定で、パーティ参加者を募る。
どこにいてもイアンなら私は探し出せる自信がある。
「そうだわ! もしかすると、イアンもこのパーティに参加するかも」
シンデレラ・パーティは男性も一定の身分以上なら参加可能なのだ。
それはそうだ。だって、女ばかりじゃダンスパーティにならない。先ほどの男性が言っていたように、男性側にも、それから選ばれなかった女性にもメリットがあれば参加者が増える。
独身者に優しいパーティなのだ。
シンデレラ・パーティが、思う程、反発を食らわなかった理由がここにある。
「アンジェリーナ嬢、今日はとても楽しかったわ」
最後に、マーゲート伯爵夫人が言葉をかけてくださった。
「また、ぜひ、お越しになってちょうだいな」
シンデレラ・パーティが終わったら、私はマグリナに帰るつもりだ。だから、「また」はきっとないと思う。だけど、こんなに良くしてくださったマーゲート夫人にそんなすげない返事はできない。
私はにっこり笑って、必ずまたお邪魔させてくださいませと返事した。
私は、自邸に戻ってから、星祭りに参加した時、イアンに買ってもらったリボンを探し出した。
「シンデレラ・パーティ、なんの役にも立たないと思っていたけれど……」
豪華なドレスとは、質も何もかも全くそぐわないつましいリボンだったけど、もし、イアンがこのパーティに参加するなら、これが目印になる。
「参加しているだなんて、考えたくないけどね」
だって、私を好きだって言ってくれたのに。別な女性を探しにパーティに参加しているだなんて思いたくない。
でも、私だって周囲の事情で参加することになっている。
「このリボン、絶対つけよう!」
私には大事な人がいます。
その意味を込めて。バカみたいだけど。
私は最初はとても緊張してしまったのだけれど、マーゲート夫人をはじめとしたお客様の皆様はとても自然に接してくれた。
不思議だった。
誰も、私のことを変だと言わなかった。
それどころか、ロビア家の跡取りとして丁重に扱ってくださった。
そうこられれば、私も丁重にならざるを得ない。
その方の趣味のお話をお聞きしたり、お手持ちのステキな扇子の出所や、お庭の花の種類や、当たり障りのない話題でも、相手が上手く話を繋ごうとしてくだされば、こうまで違うのだろうか。
若い男性も多く参加していたので、少しばかり話を聞くことが出来た。マーゲート夫人の息子さんも出席していて、そのお友達が来ているらしい。
「マーク・ロウと申します。マーゲート家の長男です」
マーゲート伯爵夫人の息子は、王宮で働いているのだと言った。イアン殿下の担当だそうだ。
ということは、マーゲート夫人は完全に王太子派だと言うことだ。つまり、伯母もイアン王太子派なのだ。私はちょっとびっくりしたが、カサンドラ夫人はもう失脚している。
彼は、現在、縁談が全面的にストップしていること、王子殿下の結婚さえ決まれば一斉に動き出すだろうなどと言った話を話してくれた。
「殿下のパーティで、縁談が全面的にストップって、皆様、ご迷惑ではございませんこと?」
「シンデレラ・パーティ? いや、逆に、その場で気に入った女性がいたら、おこぼれにあずかろうと思っている」
おかしくなって私は笑った。
「それも考え方ですわね」
「意外に知り合いになる機会が少ないからね。毎年、開いてもらいたいくらいだよ、シンデレラ・パーティ。参加女性は、全員フリーのはずだもの」
知り合いになる機会……私はイアンと出会った時のことを思い出した。
イアンとは、もう二度と会えないかもしれない。そう思うと胸が苦しくなった。
「どうしたの? 顔色が悪いよ?」
「いえ、そんなことは」
ああ、もう、自分が開きたいわ、シンデレラボーイ・パーティ。
もし自分が継承権のある王女様なら、イアンを探すためにパーティを開く。
国中にお触れを出して、五歳年上の黒髪の男性限定で、パーティ参加者を募る。
どこにいてもイアンなら私は探し出せる自信がある。
「そうだわ! もしかすると、イアンもこのパーティに参加するかも」
シンデレラ・パーティは男性も一定の身分以上なら参加可能なのだ。
それはそうだ。だって、女ばかりじゃダンスパーティにならない。先ほどの男性が言っていたように、男性側にも、それから選ばれなかった女性にもメリットがあれば参加者が増える。
独身者に優しいパーティなのだ。
シンデレラ・パーティが、思う程、反発を食らわなかった理由がここにある。
「アンジェリーナ嬢、今日はとても楽しかったわ」
最後に、マーゲート伯爵夫人が言葉をかけてくださった。
「また、ぜひ、お越しになってちょうだいな」
シンデレラ・パーティが終わったら、私はマグリナに帰るつもりだ。だから、「また」はきっとないと思う。だけど、こんなに良くしてくださったマーゲート夫人にそんなすげない返事はできない。
私はにっこり笑って、必ずまたお邪魔させてくださいませと返事した。
私は、自邸に戻ってから、星祭りに参加した時、イアンに買ってもらったリボンを探し出した。
「シンデレラ・パーティ、なんの役にも立たないと思っていたけれど……」
豪華なドレスとは、質も何もかも全くそぐわないつましいリボンだったけど、もし、イアンがこのパーティに参加するなら、これが目印になる。
「参加しているだなんて、考えたくないけどね」
だって、私を好きだって言ってくれたのに。別な女性を探しにパーティに参加しているだなんて思いたくない。
でも、私だって周囲の事情で参加することになっている。
「このリボン、絶対つけよう!」
私には大事な人がいます。
その意味を込めて。バカみたいだけど。
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