8 / 54
出会いと不穏の兆し
行き着いた場所
しおりを挟むケニスとの我慢比べに勝ってルンルン気分で森の奥に進んでいく私と、その負けたことに落ち込み気味のケニスは森の奥へ進んでいく。森の中に入ったことがあると言えど本当に手前あたりまで。奥までは行ったことない。だから楽しみだったりする。
「おーくになにある~?」
「魔獣の巣かもしれません」
「どんなまじゅう?」
「聞いたところによると、白い毛並みの四足歩行の獣だとか」
白い毛並みの四足歩行の獣、ね。ぜひ会ってみたいという好奇心が湧いてくる。というのも、もふもふが好きだからというのが大きいかな。前世でも好きでよく猫カフェとか犬カフェとか行ってたくらいだし。
まあ、正直なところ獣使いのスキルも使ってみたいというのが本音かな。
「ちょっときになるね」
「気になる!? 否定はできませんけど怖くないですか!?」
「ちょっと?」
「ちょっと!?」
ギャイギャイと騒ぐケニス。これ以上騒ぐと目的の魔獣に会えないんじゃないかなって少し心配になる。
確かにちょっと怖いけど、子供の好奇心は伊達じゃない。ここ5年で自分の精神が体に引き込まれることが多い。まあ、私自身の人格は保たれてるから問題ないけど。
「だいじょーぶ!こわくなーい!」
「えええ~」
確証はないけど大丈夫な感じがする。きっとスキルのことも関係してるのかもだけど、これも直感が働いてるんじゃないかな。
渋るケニスを後ろにつかせて奥へズンズンと進んでいく。奥に進んでいくにつれてドキドキが止まらない。このドキドキは好奇心から来ているものだと思う。だって顔が熱いもの。
きっと、これから先に必要な存在と出会えるのかもしれない。そんな予感がするんだ。
「シ、シェリル様、引き返しません?」
「まだ!」
ここまできて何をいうんだ。まだまだ先を見ていないし、まだ奥をちょっとも見ていない。
この好奇心を押さえ込むのは肉体に精神が引きずられている今の私には難しく、何がなんでも叶えたいという思いが強い。大人のままだったら好奇心よりも恐怖心が勝つだろう。
今はこの好奇心を楽しみたい。そんな気持ちも湧いている。
「こ、こんな奥まで俺きたことないんだけど!?」
「だいじょーぶだいじょーぶ」
焦りからか恐怖心からかわからないけど、素の口調に戻っちゃってる。正直そっちの口調の方が好きかも。というか硬っ苦しいのは苦手だから、この探検が終わったら提案してみようかな。
そう思っていると、少し開けた場所に出た。そこにはいろいろな草花が咲いていてとってもきれいなところだった。
「……きれい」
「こんな綺麗なところだったんだ……。知らなかった」
私の言葉に頷くケニスだが、まだ口調が砕けた状態のままだった。ケニス自身が驚いていることもあるし、しばらく指摘しないでおこう。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
女神様、もっと早く祝福が欲しかった。
しゃーりん
ファンタジー
アルーサル王国には、女神様からの祝福を授かる者がいる。…ごくたまに。
今回、授かったのは6歳の王女であり、血縁の判定ができる魔力だった。
女神様は国に役立つ魔力を授けてくれる。ということは、血縁が乱れてるってことか?
一人の倫理観が異常な男によって、国中の貴族が混乱するお話です。ご注意下さい。
悪役令嬢の独壇場
あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。
彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。
自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。
正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。
ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。
そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。
あら?これは、何かがおかしいですね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる